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第368回 海岸防災林の機能と再生について

2012年5月18日更新

掛川市会計管理者 山下 茂

植樹のために集まった参加者がグラウンドで開会式を行うようす
開会式の様子

3月3日、海岸防災林の再生のため、約450人の参加者による植樹が浜野地区で行われ、地元自治会や企業等大勢の市民のボランティア活動に感激しました。又、当日には、植樹の目的に理解のある企業4社からは植樹用の苗木の寄贈の申し出があり、目録書の贈呈式も行われました。
松枯れによって裸山の状態になってしまった丘陵地1ヘクタールに、広葉樹の苗木3,000本が植えられました。参加者のなかには子どもさん連れのお父さんや、お母さんもみえられ、ウバメガシやタブノキ、スダジイなどを一本一本丁寧に植えていただきました。今年で6回目となる海岸防災林での植樹ですが、将来、参加していただいた子どもさんたちが大人になる頃には、きっとりっぱな広葉樹林に育っていくものと思います。

 

スコップを使い苗木を植えていく参加者ら
海岸防災林 再生ボランティア 参加者の皆さま

苗木を丁寧に植えていく再生ボランティアの家族ら
海岸防災林 再生ボランティア 参加者の皆さま

 

遠州灘沿岸に広がる海岸防災林はクロマツ林を中心に構成され、海岸浸食の防止や海からの強風、飛砂、潮の害から、市民の暮らしや畑地、農作物などを守る大切な役割があります。特に昨年発生した東日本大震災による津波の被害は想像を絶するものでしたが、海岸線の森林が津波のエネルギーを軽減する効果が見られたとのことです。2011年度の森林・林業白書のなかでも、国は海岸防災林が津波の威力を軽減したとして多重防御の一つに位置付けて、林の幅を広げるなど機能強化を図るとしています。白書では太平洋岸で1,718ヘクタールの海岸防災林が被災したが、津波の勢いを弱めたり船などの漂流物を止めたりし、陸地側の被害を減らしたことを記載しています。

皆で手分けをして、次々と苗木を受けていくようす
海岸防災林 再生ボランティア 参加者の皆さま

昭和40年代から海岸の松林は急速にマツクイムシの被害により、多くの松林が枯れ果てて、防災林としての役割が低下していました。そこで松枯れ対策として、マツクイムシに抵抗性のある松の苗や広葉樹の苗を植栽することによる樹種の転換という取組を行っているところです。広葉樹の根は地中に深く入り、材にも粘りがあることから広葉樹の方が津波に対して強いという考えもあり、これからの海岸防災林のあり方として広がるものと考えられます。
海岸防災林は長い歴史とともに先人たちに育てられ、守り続けられてきた貴重な郷土の財産であります。今後も自治会や、市民、事業所等多くの皆様の温かい支援と協働の力によって、将来にわたる安全なまちづくりと海岸林の育成を通じた環境意識の醸成を後世に繋げていきたい。

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