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第390回 「中東遠総合医療センター」建設地等のグランド整備

2012年10月5日更新

掛川市管財課長 小林 隆

「中東遠総合医療センター」とは、来春5月1日に開院予定の掛川市と袋井市が統合して建設される新病院のことであります。では、「グランド整備」とは、建築敷地の造成工事のことを言います。
私は縁あって平成21年度より多くの関係者の方々のお力添えによりまして、この新病院の「グランド整備」である造成工事を担当させていただきました。この造成工事とは単に土工事だけではなく、開発区域の用地買収と工事施工に必要な許認可事務、そして工事の発注と現場の管理・監督であります。
今回は、この中でも皆様が分かりやすい土工事について、ご案内させていただきます。
この開発地は、新病院の建設だけでなく掛川市が積極的に推進している企業誘致のための敷地造成も合わせて行いました。
先ずは造成工事箇所ですが、以前、多くの方がプレー(私も下手ですがプレーを少々しました。)をしたことがあると思われます「菖蒲ヶ池ゴルフ場」の跡地とその東側の農業用ため池(菖蒲ヶ谷池)を含む周辺の民有地です。開発面積は、約37ha(約370,000平方メートル)、約112,100坪であり、良く面積比較される東京ドーム(46,755平方メートル)の約8個分に相当いたします。
開発区域内の現況は、山あり谷ありの18ホールのゴルフ場と大きな農業用ため池と周辺の山林(丘陵地)でした。
この造成事業の請負建設業者は、大手ゼネコンの鹿島建設株式会社と掛川市内の建設業者の川島組のJV(特定建設工事共同企業体)です。又、工事を担当した私と同僚の職員(平松)はこの様な大規模な工事を担当することは初めてであり、大変良い経験(勉強)をさせていただいたと思っております。
造成工事の主な内容は、雨水対策としての洪水調整池の築造と土地利用計画に合わせた大規模な土工事でありました。中でも、盛土工事はため池等への盛土となり、底に沈殿した沼の処理と高く盛り上げる作業がこの工事の主たる作業であり、限られた期間に如何に安定した盛土を施工するかがこの工事の最大の目的で、生命線でありました。
ここで、造成工事の施工方法と合わせて最新の土木技術を紹介させていただきます。
先ずは、盛土するための良質な盛土基盤面の確保です。この盛土基盤面とは、盛土の底となる地盤のことで、池沼の除去と軟弱地盤の改良です。しかし、実際の池沼の除去は非常に難しく、掘削機械の作業スペースを確保することから大変な作業となりました。そこで、軟弱地盤の改良工事と合わせて広範囲に浅層中層混合処理工法として「パワーブレンダー工法」を採用しました。この工法を簡単に言えば、沼地又は軟弱層にセメントを混ぜて現場の土を固めてしまうものであります。作業の様子は、皆さんご存じのパワーショベル(バックホウ)の先端に土を掻き混ぜる装置を付けて、近くに配置したセメントが入っているサイロからセメントと水をホースによりパワーショベルの先端まで圧送し、セメントと水を土の中に送り込んでかき混ぜて固める工法です。この工法のメリットは、沼等を廃土せずに短期間(時間)で作業が完了することです。この工法は当該事業の工期短縮に大きく貢献いたしました。

重機でパワーブレンダー工法を行っている様子
パワーブレンダー工法(沼地の撹拌作業)

緑色のパワーショベルの写真
パワーショベル(バックホウ)全景

 

次は盛土の準備が出来ましたので、丘陵地を掘削してその土を盛土箇所まで運搬する作業です。この作業で使用した建設機械は、パワーショベル(バックホウ)、ブルドーザー、モータースクレーパーとダンプトラックでした。これらの重機は全てが超大型でした。
先ずは掘削機のパワーショベルです。この重機の呼び方(規格)は先端に装着している掘削する部分(バケット)の大きさ(容量)で表します。一般的な工事現場では大きなもので「0.7立方メートル」が使用されています。内の現場では「5立方メートル」と言い、具体的には一度に約1.7メートルの立方体を掘削できる大きさ(容量)で、一般的な掘削機の約6倍以上のものでした。(私はこのバックホウを「マンモス」と呼んでいました。)

緑色のブルドーザーの写真
ブルドーザ全景

緑色のモータースクレーパーの写真
モータースクレーパー全景

 

次はブルドーザーです。このブルドーザーは掘削と土を押す(押土)機能を持っていることから造成工事には大変重要な機械です。一般的な現場では「11トン級」が大型機械として使われていますが、内の現場では「60トン級」でした。ブルドーザーの前に装着されている鉄板(配土板)は、とにかく分厚くて大きい、高さは私の背丈以上ありました。そして後方には鉄の爪が3本ついており、硬い地山を削ってほぐす仕掛けになっています。今回現場ではモータースクレーパーと言う重機をセットで使用しました。これは、大工さんが使うカンナの刃を腹の下に付けた大きな箱の様なもので、この箱を引っ張って土を削って運ぶものです。具体的には、起伏のある地形での掘削と近距離の運搬に能力を発揮した重機でありました。内の現場ではこのモータースクレーパーが掘削土でお腹(箱)が一杯でスピードが出ない時などには、ブルドーザーが「頑張れ!頑張れ!」と言わんばかりに後ろから後押しする作業があり、この光景は非常に迫力がありました。

掘削と運土作業をするブルドーザーとモータースクレーパー
ブルドーザーとモータースクレーパー(掘削と運土作業)

掘削と運搬作業をするバックホウとダンプトラック
バックホウとダンプトラック(掘削と運搬作業)

 

次は、ダンプトラックです。現場内で遠距離への土砂運搬にはやはり威力を発揮しました。運搬車は大型ダンプトラックを使用しました。このダンプトラップは実に大きい、通常公道で走行しているダンプトラックの規格が11トンです。内の現場ではその運搬量が約5台分に相当する運搬車を使用しました。一度に運べる運搬数量は約25立方メートルです。その量を形にすれば、約3メートル×3メートル×3メートルの立方体となります。この超大型ダンプトラックの総重量は45トンで日本製(コマツ)でなぜか左ハンドル、6段変速のオートマチック車、運転室はエアアコン完備、タイヤは前輪がシングルで後輪がダブル合わせて6輪、高さが1.4メートルで幅が0.6メートルでした。先頃では静岡空港や第二東名高速道路の建設現場で使用されておりました。見た目が非常に大型で扱いが難しいと思われますが、運転はすごく簡単で静岡空港の現場では20歳前半の女性が運転をされていた様です。気になる燃費は、1リッター約400メートルとのことでした。

転圧作業をする振動ローラーの様子
振動ローラー(転圧作業)

振動ローラーを操作する作業員
振動ローラー(内部のGPS装置)

 

次に締め固め作業では、最新技術が取り入れられました。最新技術とは、GPS(人工衛星を利用して自分が地球上のどこにいるのか正確に割り出すシステム)による作業管理であります。この締め固め作業とは大型ダンプトラック等で運搬された土砂をブルドーザーで敷き均しその上を転圧機械(振動ローラー)が移動して転圧するものであります。この移動(転圧)回数をGPSシステムで管理するものです。具体的には、転圧機械にGPS装置を搭載して転圧機械の移動の軌跡をデータ管理する仕組みです。作業の範囲と転圧回数を適正に管理することが出来ました。
以上が盛土作業の一連の工程であり、最新の技術と超大型機械により短期間で適正な盛土工事が出来ました。
この土工事ですが、切土と盛土の作業で合わせて約80万立方メートルの土を動かしました。この80万立方メートルの量を表現しますと、掛川市役所の地下から6階までの建物全体の容積が約65,000立方メートルですので約12杯分となります。
最後に、この度の工事施工に際し、お礼申し上げたいことが2つあります。
一つ目は、この事業に必要な用地として、貴重な土地を提供して頂きました土地所有者の方々に先ずもってお礼申し上げたいと思います。
二つ目は県立東高等学校をはじめとする現場に隣接される周辺の方々であります。現場の冬場は強風の西風が多く、風下の方々には現場で巻き上げられた砂ぼこりが飛散して、周辺の住宅の方々には大変なご迷惑をお掛けしました。何と、南寄りの風の時には東名高速道路を越えて東名高速道路北側の住宅地にまで飛散することがありました。
この様に多くの皆様のご協力によりましてこの造成工事が進められましたことに心より感謝申し上げます。本当に有難うございました。
現在、来春の5月1日の新病院(中東遠総合医療センター)の開院を目指して工事関係者一丸となって多くの工事が進められております。現場では、今後も引き続き安全第一をモットーに工期内に完成出来る様に頑張ります。
今後、新病院が開院され、開発地に行かれる際には、今回の造成工事の様子を思い出して頂き、大地を踏み締めて頂ければ幸いと存じます。
有難うございました。

ダンプトラックに乗っている男性四人
ダンプトラック(左から鹿島川島JVの加地さん、筆者の小林、鹿島川島JVの信定さん、同僚の平松)

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