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第402回 我々は、この恐るべき津波をどう乗り超えたら良いのか

2012年12月25日更新

100年後の推計人口から見えてくるもの1

掛川市農林課長 鈴木 久裕

東日本大震災から早くも2年が過ぎようとしています。
巨大津波が都市や農村を飲み込んでいく様はリアルタイムで報道され、私たちは震え上がったものでした。
「東海地震」「東南海地震」、あるいは「三連動地震」いつ巨大地震が起きても不思議ではないとされる私たちの地域では、津波対策が最も差し迫った課題として取り組まれています。
ところで、いま私が書こうとしているのは、地震による津波の話ではありません。
まず、こちらの動画をご覧ください。

2060年男女別将来推計人口(万人)のグラフ(男性のグラフは中央から左に横に伸びる棒グラフで表されています。女性のグラフは中央から右に横に伸びる棒グラフで表されています。)

下から上に押し寄せる、津波のように見えたでしょう?
これは、国立社会保障・人口問題研究所が、過去の国勢調査や推計人口、そして日本の将来推計人口から作成した「人口ピラミッド」の推移を示したものです。
さて、国内の人口についてよく言われるのは、1.総人口は現在ピークを過ぎて減少局面に入った、2.少子化が進んでいる、3.高齢者の比率が高まっている、といったところでしょうか。
これらのことは、先ほどの人口ピラミッド変化の動画では少しわかりにくいので、公表されている数字をまとめて、表とグラフにしてみました。

我が国の人口推移と将来推計の表

掛川市の将来推計人口の表

我が国の人口推移と将来推計のグラフ(0歳から19歳は青色でひし形のマークがついた線 20歳から64歳は赤色で資格のマークがついた線 65歳から74歳は黄緑色で三角のマークがついた線 75歳以上は紫色のばつ印がついた線 総数は水色の米印がついた線で表されています。)

表1は、国勢調査の結果と将来推計人口を併せて、1920年(大正9年)から2110年まで、190年間の人口推移を、0~19歳、20~64歳、65~74歳、75歳以上の4区分して示したものです。また図1は、それを年齢区分ごとにグラフにしたものです。
見てのとおり、国勢調査の上では、直近の2010年が過去最多の人口を記録しました。しかし、5年後からは徐々に減少していくことが読み取れます。そして出生率・死亡率とも現在と同程度で推移すると仮定すれば、約100年後には、日本の人口は、現在の3分の1以下、4200万人程度まで減少すると予測されています。
参考までに、表2に掛川市の2035年までの推計人口を示しました。2010年と比較して、6千人余、5.3%の減少が予測されています。この期間に、国全体では12.5%の人口減少が進行すると予測されていますので、それよりは緩やかな減少です。ただ、今後の施策にもよりますが、超長期的には、国と同様の動きになるかもしれません。

出生数、合計特殊出生率の推移表

次に、少子化の進行についてですが、表3として、日本人の合計特殊出生率(一人の女性が一生に生む子供の数)の推移を示しました。これを見ると、戦後間もない1947年には4.54でしたが、どんどん減って、2003年、2004年には1.29と最低を記録しています。その後少しだけ持ち直して、2010年は1.39でした。単純に言って、2.0超が続けば将来の人口は増加基調、2.0なら人口横ばい、2.0未満で減少となります。当然のことながら、このままでは人口は減少し続けます。
少子化傾向を象徴する出来事では、1989年合計特殊出生率が、1966年(丙午(ひのえうま))の1.58(丙午生まれの女性は気性が激しく夫の命を縮めるという迷信から、この年は出産が急減しました。)よりも小さくなり、「1.57ショック」として大騒ぎになったことを記憶されている方も多いと思います。そのときから、出生率の低下が問題視されるようになりました。しかし、実は年少人口の減少問題は、それより15年も前、1974年の2.05を最後に、2.0以下になったときから始まっていたといえるのですが、1.57ショックまで、余り話題になりませんでした。
出生率低下の原因は、男女が結婚しなくなったことと、夫婦がたくさん子どもをつくらなくなったことと、両方にあるといわれています。
さて、1975年から少子化が進行していたのに、なぜその後においても、そしてつい最近まで人口は増え続けていたのでしょう?それは、日本人長寿命化が並行していたからと考えられます。
昔は、今ほど医療や保健制度が充実していませんでしたし、栄養が十分でない状況もあったかもしれません。ですから、子どもはたくさんいましたが、年齢とともに段々と亡くなっていき、長生きする人は少数でした。(そうしたことから、1920年の日本の人口分布は、まさに「ピラミッド型」を示していました。)
しかし現在では、日本では生まれて来た人は、みなさん長寿です。(表4のとおり、85歳以上まで生きる人は、90年前に比べて、約50倍に増えました。)オギャアと生まれた多くの方が80歳過ぎまで生き、それぞれの人生を追求できる、素晴らしい時代が来たのです。しかし、それは表5のように、思いのほか最近になってからのことなのです。織田信長は「人間五十年、下天のうちを比ぶれば、云々」と謡い舞って出陣したと言われますが、1947年の男性の平均寿命は50.06歳だったのです。この60年のうちに男女ともに平均寿命が30年も伸びたのですから、ものすごい長寿命化が進んだものです。
ということで、かなり深刻な少子化が進んでいたにもかかわらず、それを上回って高齢者人口が増えていったので、総人口は増加したことから、見かけ上、人口問題が顕在化しなかったのだと言えるでしょう。
こうして、現在、高齢者比率は年々高まっていますし、この比率の上昇は現在も進行中です(図2)。(ちなみに、昨年平均寿命が減少したのは、地震による不慮の事故をはじめ、肺炎、自殺死亡率の変化等によるものだそうです。)高齢者人口はあと30年ほどは増え続け、そこからまず前期高齢者が減少に転じ、50年ほど経つと後期高齢者人口も減少となります。そして、前期高齢者(65歳~74歳)が総人口に占める割合が14%前後、後期高齢者の割合が27%程度となって安定的に推移するようになることが、表から読み取れます。
ただし100年たって、人口の年齢構成比率は安定しますが、人口減少傾向は止まっていません。これは大きな問題です。

少し長くなってしまいました。今回はここまでとし、牽強付会的にまとめておきましょう。

1.高齢化問題は、今後50年続きます。しかしその後は安定することが見えています。それをきちんと見据えれば、様々な対策ができます。アイデア次第でビジネスチャンスも生まれます。
2.少子化・人口減少問題は、時間が解決してくれるものではありません。それどころか国家・民族の存亡を左右します。国として日本人として、目指すべき将来像(目標)、政策(戦略)、施策(作戦)の早急な確立が必要です。

85歳以上人口の推移表

平均寿命の年次推移表

総人口に占める年代別構成比(%)のグラフ

次の順番が回ってきたときには、今日のまとめについての対策私案を、無責任に書き放題してみたいと思っています。
なお参考に、国土交通大臣の諮問機関である国土審議会政策部会長期展望委員会というところがありまして、少子、高齢化等が人口、社会、経済、国土基盤、環境、エネルギー、産業等の分野においてどのような影響を及ぼすのかを長期展望するために、現状のまま推移した場合について、2050年までの国土の姿を描き出そうとしています。その「国土の長期展望」中間とりまとめが発表されています(平成23年2月21日)のでご一読を。

また、時間のある方には、藻谷浩介氏(日本総合研究所調査部主席研究員)の著書『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』(角川oneテーマ21) [新書] をお勧めします。
では。

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