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第423回 これからは協働と支え合いで 坂下高田組の取り組み

2013年5月17日更新

掛川市企画政策部長 中山 雅夫

1 常会(じょうかい)で養うもの

私の住まいは、掛川市の北部桜木地区にある。桜木といっても広く、その中でも北部のねむの木村がある上垂木坂下という集落(小区)が私の住まうところである。坂下小区には約60世帯があり、6つの組で構成されている。
私は、その中の高田組(12世帯)に所属している。私の組では昔から毎月1回の常会を欠かさない。常会は12世帯の代表者による寄合(会合)である。常会では、積立金の集金や市や区からのお知らせ、依頼事項の伝達などを1時間半程度かけて行う。会場は、12世帯持ち回りで各家で行う方法をとっている。
毎月開くというのは若干の負担感はあるが、それにも増して、全世帯の人が集まり顔を付き合わせ、「安否確認」をすることに大きなプラス面がある。当然安否確認だけではない。組のお楽しみ行事を考えたり、その時々の時事放談などをする中で、組の構成員全員の考え方や人となりが把握される。その時間の積み重ねが組の力の源である。これが組の構成員の絆づくりに結びつく。

2 道普請(みちぶしん)と溝さらい

少し話しが逸れるが、私の記憶では昭和40年代まで集落の中を東西に貫通する県道(現在の焼津・森線)は未舗装であったと思う。砂利道で雨が降ると水たまりができる道であった。そうしたデコボコを直すために、集落の人全員で道普請(道直し)という作業を行っていた。実は私も道普請を手伝った(たぶんじゃました程度)記憶がある。集落ではそうした出役は当然のこととしていた感がある。
現在は、立派なアスファルト舗装になって県道の道普請は無くなった。しかし、私の住む村部ではそうした部落総出で行う出役的な仕事の名残りはまだある。例えば田植え前の3月下旬には溝さらい(田んぼに水を引く関係者で用水路を清掃する作業)が今でも昔ながらに行われている。また、道普請に近い作業として、市から生コンクリートの支給を受け、未舗装の集落道を地元関係者で舗装する作業も行われている。

溝さらい前の排水路の写真で、用水の両脇は草が生えている
溝さらい前(排水路)

溝さらい後の排水路の写真
溝さらい後(排水路)

 

3 高田組の取り組み

そのような中、昨年の常会でこのような話しが持ち上がった。毎年、道路補修などについて自治会内で3本の事業を市へ依頼できる仕組み(いわゆる地区要望制度)があるが、その候補を選び出す話になり、組内の該当する箇所について話し合った。その際、田んぼの排水路の浚渫(しゅんせつ)を依頼したらどうかということになった。桜木地区の多くの田んぼは県営圃場整備事業により基盤整備ができており道路などは補修箇所はあまりないが、排水路の浚渫はまだ一度もやったことがなく30年間くらいの土砂がたまっている状態である。この排水路の土砂除去を要望事項に入れてもらったらどうか、ということで組内はまとまった。

4 これからは自立と協働精神で

しかし、その後正式に地区要望として小区の要望事項になったものの、この溝さらいについては、市へ要望しなくても組の皆んなでやればできるのではないか、ということになり結局要望事項は地元処理という扱いにして取り下げた。
そして、溝さらいの当日早朝、組の皆んなはスコップや鋤簾(じょれん)などを手ごとに持って集合した。しかし前日降った雨の影響もあり、土砂の除去は意外と難航した。延長100メートルほどの排水路に土砂が30~40センチ程も積もっており、手作業だけでは大変だと判断し、作業途中で組内の土木や庭師の事業をやっている方からユンボ2台をお借りして進めた。その結果、作業はグッと進捗を見せた。最終的にはこの日だけでは処理しきれず、さらにもう半日かかったが、自力で浚渫作業を完了させた。土砂は2トンダンプに7~8杯程度出たが、土堤にはりつけたり組内の個人の敷地内で処理した。

溝のアップ写真で、両脇には草が生え、溝には泥がある
溝さらい前

溝さらいの様子の写真で、男性たちが溝の泥をすくっていて脇にはトラックが止まっている
溝さらい

 

溝さらいの様子の写真で、溝の土砂をすくう人たちの奥に、ユンボ2台とトラック1台が写っている
溝さらい

溝さらいの写真で、長靴を履いた男性たちが手にスコップを持ち溝の土砂をすくっている
溝さらい

 

5 さらなる絆づくりに向けて

これにより、地域の課題も地元の総力でかなりのことは処理できるという自信が持てた。これも日ごろ常会で養われたコミュニティ力があったればこそだと思っている。感想として、この作業により組内の絆は確実に強まり、地域に対する見方も少し変わってきた感じがする。組の皆さんも同じ感覚を持たれたと思う。地域を愛するというと少し大げさだが、自分の地域なんだという感じと、地域への愛着が少し深まった感じがする。今回の作業で4月から施行された自治基本条例の考えの中心となっている協働精神の実践が少しはできた気がする。

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