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第461回 「美しい水の守り神」である鎮守の杜を訪ねて

2014年1月17日更新

掛川市水道部長 竹原 照彦

掛川市の上水道事業では、総配水量の約9割を大井川水系からの受水で賄っています。平成25年は、5月以降の少雨影響から大井川水系では、6月14日から9月17日までのうち、60日間節水対策が行われ、台風18号に伴う降雨により、上流部の水源状況が回復し解除されました。近年の異常気象の影響で、大井川広域水道(用水供給事業)による通水以来26年間で、13回渇水があり取水制限を経験しています。こんな折、リニア中央新幹線トンネルが大井川の水源である南アルプスの地下水脈に影響を与え、河川流量減少が危惧されています。
そこで、先輩職員から伝え聞く奈良県宇陀市にある美しい水の守り神として広く崇敬されてきた「宇太水分神社(うだみくまりじんじゃ)」を水道部の親睦旅行先として参詣しました。

奈良県宇陀市にある宇太水分神社。朱塗りの瑞垣と5棟の本殿。3棟は国宝に、2棟は国の重要文化財に指定されている
朱塗り瑞垣(みずがき)と国宝3棟・重文2棟の5棟本殿

宇太水分神社は、大和四水分神社(みくまりじんしゃ)の一つとして古くから信仰されています。宮司さんの説明によると、創立は第10代崇神(すじん)天皇の時代で、昭和29年、国宝に指定された本殿3棟が並び、第一殿の棟木(むなぎ)に鎌倉末期元応2年(1320年)の墨書(すみがき)があり、他の2棟も同時期の建立と推定されるとのことであります。3棟ともいずれも一間社隅木入春日造(いっけんしゃすみきいりかすがつくり)の先駆けとされ、建立年代の明らかなものとしては最古のもので、外部の朱塗り部分には極彩色が施され、壁板にも花鳥風月が描かれています。また、摂社(せっしゃ)である春日神社本殿と宗像(むなかた)神社本殿は室町期の建造で国の重要文化財に指定されています。平成15年の社殿塗り替えの際に、わずかに残された色彩をもとに本殿保存修理されたそうです。拝殿前で職員一同、神職によるお祓いを受け、今後の水道事業の発展を祈願して参りました。

宇太水分神社の本殿前面。朱塗り部分には極彩色が施されている
極彩色の本殿前面

なぜ、この神社にこだわって行ったのかでありますが、掛川市十九首水源地跡公園隣に「水神宮(お水神さん)」があるためです。御神体である水分(みくまり)の神は、水の分配を司る神であり、「くまり」は「配り(くばり)」の意で、水源地や水路の分水点などに祀られております。また、水にかかわる神ということで祈雨の対象ともされています。

掛川市、十九首水源地跡公園の隣にある水神宮
水神宮

水神宮例祭で水神宮にお詣りする男性
水神宮例祭

 

ここでは、毎年4月上旬に、水道事業管理者を始め、市議会議員、水道事業関係者等多数参列のもと、水道事業の発展を振り返り、先人の功績に感謝するともに、今後の安定給水と工事の安全を願い「水道感謝のつどい」を開催し、水道組合による水神宮例祭が挙行されています。
今日ほど水に対して関心が高まっているときはなく、中国の格言「飲水思源(いんすいしげん)(水を飲むときには、常に水源地のことを思い感謝する)」を片時も忘れないようにし、今年は、未来永劫の水資源確保が重要であることを改めて認識する年になりそうであります。

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