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第494回 「お地蔵様と閻魔様」

2014年8月8日更新

掛川市健康福祉部付 理事 中山 富夫

今年も先月7月16日に町内にある「十王堂」の年に一度の御開帳が行われました。

町名の由来となっている「十王堂」には、お地蔵さまと呼ばれる「子安延命地蔵菩薩」を中心に右側に「閻魔大王」、左側に「弘法大師」の像が安置されています。本尊である「子安延命地蔵」は安産と子育ての守本尊として広く近郷近在に知られていて、毎年この御開帳には近隣から多くの方が参拝に訪れ、今回も善男善女で賑わいました。

御開帳の日7月16日という日は、十王信仰で十人の王の中心的存在である閻魔様にゆかりのある日で、昔より閻魔賽日(地獄の釜の蓋が開いて鬼も亡者も休む日)として、寺院で十王図や地獄絵図を拝んだり、閻魔堂に参拝する「十王詣」の日とされていることからこの日に行われてきたものと思われます。

この十王詣での「十王」とは、冥土において亡者の罪を裁き、悪を懲らしめ、善を勧める十人の王のことをいい、十王信仰では、人は誰でも、死後に生前の罪業をこの十人の王に七日毎に順番に裁かれ、その罪の大小により天上行き、地獄行きを決められるとされています。そのため、生前に日頃からこの十王さまの供養をし、徳を積んでおくことにより、この審判を受ける時にその罪を軽減してもらうことができるものと考えられて信仰され、全国に広まったといわれています。(全国各地に十王の地名が点在している。)

ということで、今年も御開帳の日には、日頃の自分自身を反省するとともに、家族・子ども達のこと、また今後生まれ育っていく地域の子ども達こともお祈りし、手を合わせてきたところであります。

因みに、十王信仰で登場する十人の王とは

十王信仰の十人の王と各王が審判を下す日
十王名審判担当日本地仏(本来の姿)
秦広(しんこう)王初七日(7日)不動明王
初江(しょこう)王二七日(14日)不動明王
宋帝(そうてい)王三七日(21日)文殊菩薩
五官(ごかん)王四七日(28日)普賢菩薩
閻魔(えんま)王五七日(35日)地蔵菩薩
変成(へんせい)王六七日(42日)弥勒菩薩
泰山(たいざん)王七七日(49日)薬師如来
平等(びょうどう)王百ヶ日観世音菩薩
都市(とし)王一周忌勢至菩薩
五道転輪(ごどうてんりん)王三回忌阿弥陀如来

とされており、この十人の王は、本来柔和な菩薩様ですが、冥土では亡者を裁く役目も果たすことなっているようであります。このうち、最もよく知られる閻魔王は、地蔵菩薩の化身として考えられており、お地蔵様は、あの恐ろしい形相の厳しい閻魔様の顔と人々を救い導く、優しく慈悲深い顔の二面を持っていることとなっています。

この350年以上も前に開かれた、地域のシンボルである「十王堂」は、ずっと町内会で管理、お祀りをおこなってきており、日常の各個人でのお参りのほか、地蔵菩薩の縁日である毎月24日には、各組持ち回りで清掃、供花、お念仏をあげるなど、お祀りを続けてきています。また、先述の御開帳も同様に当番の組が主体で行われてきています。
毎年この時期に思うのは、こうした町内の歴史や風習、慣わしを次の世代にしっかりと伝えていかなくてはならないということであります。このことをつなげていけば、今後もきっと、お地蔵様と十人の王の力によって、この地域を守ってくださるのではないでしょうか。

最後に「菩薩院十王堂由来」にある地蔵の十徳

女人泰産・身根具足・衆病疾除・寿命長延・聡明智慧・財宝盈益・衆人愛敬・穀物成熟・神明加護・証大菩提
御利益がありますように。

十王堂の社全体
十王堂

扉が開き提灯と竹で飾られた御開帳の時の十王堂
御開帳時のお堂

 

(注)参考・引用:十王ものがたり「いつか来た道」(平成11年10月:十王区発刊)

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