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第503回 「夏の終わりに・・・」

2014年9月26日更新

掛川市国保年金課長 太田 英之

青空にうろこ雲がかかる様子。

処暑もすぎ、朝夕は秋の訪れを肌で感じる。ぎらぎら照りつけていた太陽も、幾分日差しを和らげた。
空を見上げるとうろこ雲。
「もう夏も終わりか。」
そうつぶやいてみる。自他共に認める汗っかき。暑いのが苦手な私にとってうれしいはずなのに、この歳になっても夏が終わるというのは少々感傷的なものである。

若い頃は、季節の中で夏が一番好きだった。野球部に所属し、グラウンドでボールを追い、汗だくになることが気持ちよかった。しかし、歳を重ねるに従って、体の対応力が低下し、暑い中で過ごすことが苦しくなってくる。冷房の中にいることが増えたことも原因だろうが、年々確実に増加していく体脂肪も原因であることは間違いない。いつしか、一番好きだった夏は、一番苦手な季節となってしまった。

早く涼しい秋になってほしい・・・暑さと戦いながらも、この季節で唯一好きなことがある。それは、夏の夕暮れ時の何とも言えない感じである。

空をオレンジ色に染める夕日と、川の水面に夕日が映っている様子。
国安橋からの夕景

子どもの頃、夏の夕暮れ時は、これから楽しいことが待っているという期待に満ちていた。久しぶりに泊まりに来た従兄弟と庭でやる花火、縁側で涼むのんびりとした時間、親公認で夜出かけられる子供会の肝試し。いくつになっても、蚊取り線香のにおいと共に思い出す。
中学生の頃、「夕暮れ時はさびしそう」という曲が流行った。N.S.Pという男3人組がギターを弾きながら歌っていた。

8分音符を2つつないだ音符のイラスト田舎の堤防 夕暮れ時に
ぼんやりベンチに座るのか・・・16分音符を2つつないだ音符のイラスト

 

切ない歌詞とメロディーは、中学生にはちょっと大人の世界だった。部活動の後、どろどろになって自転車で帰る道すがら、国安橋から見える夕暮れ時の川の風景とこの歌を重ねながら、ただわくわくしているだけの子どもではなくなった自分の心が不思議に思えた。

大人になってからは、夏の夕暮れ時にわくわくするのは晩酌のビールくらいになってしまったが、西の空があかね色から暗く沈んでいく時分になると、心の片隅にこんな子どもの頃の思いが顔を出すのかもしれない。何とも言えない懐かしいような気分になる。だから、他の季節ではない、夏の夕暮れが好きなのだろう。
そういえば、妻は「夏になると、なんでかわかんないけど、『となりのトトロ』を観たくなるんだよね。」と言っていた。やはり、私と同じように子どもの頃の何かがそんな気持ちにさせるのだろう。「なんで?」と尋ねてみたいが、それぞれの思いがあるのだから、そっとしておこう。

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