総合トップ記事第535回 掛川市の水道料金は?

第535回 掛川市の水道料金は?

2015年4月17日更新

掛川市水道部長 榛葉 孝男

掛川市上水道の歴史

掛川区域は昔から水に困り、「水のない掛川には嫁をやるな」などと言われるほど水で苦労した地域でした。大正8年、十九(じゆうく)首(しよ)に水源を求め、大正10年に一般家庭に給水が開始されました。県下では熱海市に次ぐ2番目の水道事業でありました。また、十九首水源地跡公園隣に「水神宮(お水神さん)」がります。御神体である水分(みくまり)の神は、水の分配を司る神であり、「くまり」は「配り(くばり)」の意で、水源地や水路の分水点などに祀(まつ)られております。ここでは、毎年4月上旬に、水道事業管理者を始め、水道事業関係者等多数参列のもと、水道事業の発展を振り返り、先人の功績に感謝するともに、今後の安定給水と工事の安全を願い「水道感謝のつどい」を開催し、水道組合による水神宮例祭が挙行されています。

大東区域も自己水源には恵まれず相当苦労しました。昭和32年に地域ごとに水源を求め簡易水道事業が発足しました。その後、昭和51年に大東町水道事業を創設しました。

大須賀区域は豊富な地下水に恵まれ、県内では最後の上水道事業認可地区でもありました。昭和63年には大須賀町上水道事業を創設しました。

掛川市は、古来から水で大変な苦労をしてきましたが、昭和52年に1級河川である大井川に水源を求め、静岡県と志太・榛原・小笠地域の4市10町による大井川広域水道事業が開始され、昭和63年4月に供給が開始されました。(大須賀町は平成3年からの開始)

平成14年3月の長島ダム完成とともに、市内で使用される水道水の約9割を「大井川広域水道企業団」から供給を受けることとなりました。

水神宮

水神宮にて、地鎮祭の様子。祭壇にはお供え物が祀られている。

水神宮にて、地鎮祭の様子。お供え物を前に、祈願する男性。

大井川広域水道企業団 水の流れ

浄水場にくる水は、大井川の上流にある長島ダムからきています。長島ダムに貯められた水は、中部電力の発電管を通りながら、最後の川口発電所の放水庭で放流されます。放流された水を浄水場に取り込みます。浄水場できれいになった水はトンネルや道路の下に埋められた送水管(配水管)で各市のタンク(配水池)に送られ、さらに市民の皆さまや企業の皆さまに送られています。

大井川(水質)

大井川は糸魚川静岡構造線に沿って流れる河川であり、源流域の山岳地帯は崩落が激しく大量の土砂が大井川に流れ込み、上流部は常に白濁水となっています。

長島ダム(貯水施設)概要

長島ダムは、洪水調節・不特定利水(河川維持放流機能)・上水道供給・農業用水供給・工業用水供給のために建設された多目的ダムで、大井川の上流、榛原郡本川根町地先(現川根本町)に建設(平成14年完成)されました。
水道では、最大1日辺り501,120立方メートル(最大5.8立方メートル毎秒)の水の取水が可能です。

長島ダムが放流されている写真

大井川広域水道企業団施設概要 取水施設

島田市川口地内にある中部電力株式会社川口発電所の放流庭地点に、農林水産省との共有施設として取水庭を設置し取水しています。通常は、発電放流水を取水口から伊久美川サイフォンで渡河し、分水槽を経由し相賀(おおか)浄水場に導水しています。(発電放流水が停止した場合には、予備取水口が設置されています。)

大井川広域水道企業団施設の取水口の場所と予備取水口を記した写真

大井川広域水道企業団施設概要 導水施設

川口取水口から取水された水は、相賀浄水場内にあるポンプ棟に口径1,500ミリメートルの鋳鉄管により自然流下で送られてきます。

大井川広域水道企業団施設概要 浄水場 浄水処理工程

浄水場は、水道水を作る工場で、1年365日、一日も休みなく、水道の水か作られています。

浄水場にきた水は表流水のため、濁り(泥やゴミ)があります。「着水井」で濁りを調べ薬品の量を定めると共に、危険物質が入っていないか薬品により検査します。「薬品混和池」では凝固剤を入れ、水の汚れを大きなフロック(かたまり)にするため、フラッシュミキサーで急速にかき混ぜます。そして「フロック形成池」で小さな泥などが、くっつき合い、さらに大きな泥のかたまり(フロック)になるようフロキュレータでゆっくりかき混ぜます。そして「沈でん池」では、大きく成長したフロックをゆっくり時間をかけて沈め、きれいな「うわ水」を作ります。そして「ろか池」では砂利(厚さ約20センチメートル)と砂(厚さ約60センチメートル)の層で水をこし、きれいな水にして塩素消毒をした後、浄水池にため、水質基準通りの水道水か検査して、各市の配水池へ送ります。このように大井川の水は多くの工程を経て飲料水となります。

相賀(おおか)浄水場は、焼津市・藤枝市・島田市・牧之原市・菊川市・御前崎市・掛川市の7市、計画給水人口約60,000人、計画最大給水量1日辺り160,700立方メートルを供給できる施設です。
(掛川市の計画最大給水量は1日辺り56,900立方メートルです。)

大井川広域水道企業団施設の浄水場の高空写真

大井川広域水道企業団施設の浄水処理工程図

大井川広域水道企業団施設概要 送水施設

相賀浄水場で作られた水道水は、口径1,500ミリメートルの鋳鉄管で送水しており、大井川を渡る手前で分岐し、左右岸へ送水しています。左岸へは、口径1,000ミリメートルから150ミリメートルの鋳鉄管により、延長約38キロメートルを自然流下で、3市が管理する配水池へ送水しています。右岸へは、大井川を口径1,100ミリメートルの鋳鉄管(伏超し工法)より渡り、右岸増圧ポンプ場から右岸第1調整池を経て、口径1,000ミリメートルから100ミリメートルの鋳鉄管により延長約143キロメートルを自然流下で掛川市、菊川市、牧之原市、御前崎市が管理する配水池へ送られています。(掛川市には、7箇所の配水池へ送られています。)

大井川広域水道企業団施設概要 右岸増圧ポンプ場

右岸の掛川市、菊川市、牧之原市、御前崎市への送水は、大井川の標高が75.5メートルと低く、牧之原台地の標高が190.5メートルと高いという地形的制約から、右岸増圧ポンプ場が必要となり、揚程125メートルのポンプ5台(1,200立方メートル毎時
が計4台、600立方メートル毎時が計1台)により、右岸牧之原台地にある第一調整池に揚水しています。その後、自然流下にて調整池に送られています。
(揚程=ポンプが水を汲み上げられる高さ。)

大井川広域水道企業団施設の右岸増圧ポンプ場、No1からNo5まで書かれた送水ポンプが並んでいる

大井川広域水道企業団施設概要 調整池

調整池は、水道水を一時貯えて、送水量を調整する機能と、浄水場が停電等により浄水する機能が停止した場合でも、安定した水の供給を確保するために、浄水場と市の受水施設(配水池)の中間に設置されています。右岸には、右岸第1調整池:7,000立方メートル、右岸第2調整池:4,000立方メートル、右岸第3調整池:3,000立方メートル設置され、この調整池より自然流下で4市が管理する配水池へ送られています。

大井川広域水道企業団施設の調整池の外観

掛川市水道施設概要 配水池

配水池は、水道水の配水量を調整するために、一時蓄えておく池です。1日の中でも、昼と夜で使用量は違います。(昼の方が、夜より多くの水が使われます。)また、季節によっても、使われる水の量は違います。それぞれに適した量の水を確保します。また、地震などの災害が起きたとき、緊急用水を確保します。

大井川広域水道企業団が管理する送水管路より、掛川市が管理する配水池(逆川第1,2配水池:14,000立方メートル、遊家配水池:3,600立方メートル、北部配水池:3,000立方メートル、西部配水池:3,000立方メートル、東部配水池:6,000立方メートル、東大谷第1配水池:1,000立方メートル、大須賀配水池:2,000立方メートル)へ送られています。

逆川第1・第2配水池

掛川市水道施設の逆川第1・第2配水池の外観

掛川市水道施設概要 配水管

掛川市では、常に安定した給水サービスを提供するために、配水池と配管ネットワークの充実(災害時の安定給水のため、各配水拠点間に連絡管を設置し、水の相互運用を図り、一系統の管路が破損した場合に、他系統の管路に切替えることで通水機能を確保するもの)を目指しています。また、掛川市は給水区域が広いため、市内の道路に埋設されている配水管の総延長は、約1,000キロメートルとなります。これらの施設や配水管の維持・管理は、1年365日、昼夜を問わず行っております。

掛川市の水道料金は?

このように水道水は、大井川広域水道企業団、掛川市上水道など、多くの水道施設を通して市民の皆さま、企業の皆さまに供給しております。
水道料金は、水源の状況、水道施設の整備費や維持管理費などの経営の条件の違いによって市町ごとに差が発生します。掛川市は自己水源が不足しているため、水道事業費用に占める受水費(大井川広域水道企業団からの水道水の購入費)の割合が大きく総配水量の約90%が企業団からの水で、受水費(年間約13億円)は、水道事業費用の約48%を占めております。また、掛川区域は、水道の創設が大正9年と県内で熱海市に次いで古く、老朽化した水道施設の修繕、水道管の布設替えなどに大きな費用を要します。市内の道路に埋設されている配水管の総延長は、約1,000キロメートル。これは新幹線で掛川駅から福岡県の博多駅までの距離に相当し、投資効率が悪くなっていることなどで、掛川市の水道料金は、静岡県平均及び、全国平均に比べて高めになっております。

このページと
関連性の高いページ