掛川市南部行政事務局長兼大東支所長 石川 安宏
この地上では175万種もの生きものが、お互いにバランスをとりながら生態系をつくりあげ、その生態系を根底で支えているのが植物と言われています。
今年もフキノトウの新芽より春の息吹に触れ、以降、筍、タラの芽、フキ、わらび等、植物の恵みとして旬な山菜を堪能させていただきました。
植物の恵みは、言うまでもなく園芸として偉大な癒やし効果をもたらしてくれています。六十の手習いならぬ、五十の手習いとして、興味のままにかじり始めた草花いじり。若き頃は、年寄りが行うものと決めつけていた園芸に、知らず知らず自らが関わっていたようです。
などと言っても、勝手気ままに楽しんでいるだけのまさに自分流。単に水やりや花がら摘みなどでも、向き合っている時間は心地よく、愛情を注いだ分だけ、満足度や癒やされ度に返ってくるような気がします。
草花いじりの応用編として挑戦してみたのが挿し木。植物の新たな命を宿す楽しみであります。ウォーキング途上の道端で摘んだり、花好きの仲間から分けていただいた四季折々の草花を、適当に挿し木にしてみるのです。活着率はさまざまですが、忘れた頃に根が生え、命が宿っているときの感動は格別。
アジサイ、プリエッタ、サンパチェンス、バラなど、寒い冬を枯らさずに越させながら、ひと回りずつ大きくなっていく株の成長過程を見守る喜びです。この春はタラの芽にも挑戦。何年か後の、新芽の天ぷらを楽しみにしています。
また、タネからの成長も別の楽しみです。前年に野菜の収穫物や花から採ったタネを翌年蒔きした際の発芽や、こぼれ種が生えてくる、当地で俗に言う「ふっせ」による発芽など、こちらは植物の命を代々繋ぐ楽しさでしょうか。
数年前の紅葉時期、京都と会津の鶴ヶ城公園で拾ってきたモミジのタネをいたずらに蒔いたところ、ひと冬越して発芽。あいにく剪定の技術が無いために枝振りは何ともお粗末ですが、思い出深い大切な鉢植えや地植えとなりました。
現在は、夏の清涼感を求めて、水耕栽培ならぬコップ栽培に挑戦。水中で根を生やし、こちらも新たな命が宿るのを待っているところですが、昨年は里芋や大根、人参、じゃがいもなど、野菜の調理くずもしっかりと息を吹き返し、観賞用として葉を付けました。
食の恵み、癒やしの恵みのみならず、グリーンカーテンによるエコの恵みや、津波対策として植栽による安心・安全の恵みなど、植物は無限の恵み効果を秘めています。
すぐそこまで近づいてきた還暦の足音。どっぷり年寄りの仲間入りをしていく現実を真摯に受け止め、これからも植物を良きパートナーとして、各種の恵みを享受したいと思います。