総合トップ記事第560回 「スタイリッシュなだけじゃない「掛川市役所本庁舎」」

第560回 「スタイリッシュなだけじゃない「掛川市役所本庁舎」」

2015年9月1日更新

掛川市監査委員事務局長 松浦美代子

私の友人に建築士がいます。いただく年賀状には、前の年に訪問した国内外の名だたる建築物の写真が、掲載されています。「どんだけ好きなんだ」って感じですが・・・仕事をこれほど愛しているとは、羨ましくもあります。

前置きはさておき、本題に入ります。皆さんは掛川市役所本庁舎のことをどれくらいご存じですか?

敷地面積38,000.01平方メートル、小さな森の中にあり四季の移ろいを彩で感じることのできる庁舎は、旧庁舎の老朽化に伴い平成8年に建設・移転されました。建築面積4,767.72平方メートル、延床面積16,135.58平方メートル、SRCおよび一部S造です。地上6階・地下1階建て、壁一面のガラス張りとドーム状の議場が外観の大きな特徴です。

内部は掛川名産の茶(茶畑)をイメージした階段状となっており、段状のテラスでは、市民と職員、職員同士の打合わせが行われています。吹き抜けの構造・ガラス張りの壁面と相まって、市民に開かれた明るい庁舎です。

回廊は、鉄骨による繊細な格子構造で、自然の景観を遮ることなく、光・風を取り入れることのできるエコロジカルな空間となっています。

議場は民主的会議にふさわしい円形に席が配置され、市民・議員と行政が身近にあることを意識して造られました。

自慢(建築関係受賞歴は最下段に列記)を書き立てた感がありますが、強度的な面では、アトリウム部分は鉄骨造りで、張弦梁と水平ブレースの屋根面で水平力を負担させる設計となっており、鉄骨部の温度や地震による変位は、三カ所に分散したエキスパンションで吸収する構造となっています。

専門的なことは、皆目わからない私ですが、安心・安全に十分配慮された建物であると確信して、日々勤務しております。

掛川市が目指す日本一のひとつに「教育・文化日本一」があります。市民が本物の音楽に触れる機会を増やそうと、1階ピアノコーナーでは、掛川市出身の実力派演奏者を迎え、定期的にお昼のミニコンサートを開催しています。

また、アトリウム・段状のテラスを使い、書画の展示を始め各種の行事が催されます。全国お茶まつり開催時には、野点を模したお茶会会場として、多数の流派の方々がお茶を点て、来訪者をもてなしてくださいました。市民合唱団による第九が、庁舎内を神聖な雰囲気に包み込んだこともあります。

掛川市役所本庁舎で行われるお茶会やミニコンサートの様子をうつした2枚の写真

ムダな空間と揶揄する人もいます。そんな方も覗いてみたくなるような、魅力的な文化体験の場を、市民、企業、行政の協働でたくさん創出できたら、他市にはない大きな空間は、今以上に誇れるものとなるでしょう。

秋の深まりとともに、庁舎の周りの木々は赤や黄に色づき始めます。今後益々、市民が多く集う庁舎の利活用が進むことを期待し、また、スタッフとしてその場で皆様と楽しみを共有できることを願ってペンを置きます。

受賞歴

公益社団法人日本建築家協会 2000年 環境建築賞
公共建築賞 建設大臣表彰(行政施設部門)2000年
一般社団法人日本建築学会 1998年 作品選奨
一般社団法人日本建設業連合会 1997年 BCS賞

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