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第566回「お茶で一服、よもやま話」

2015年10月2日更新

掛川市環境経済部参与兼お茶振興課長 石山雅久

これまで日本人の生活に欠かせない飲料がお茶であった。食事時に飲み、喉が渇いて飲み、お客さんが来ればお茶を出す。私たちの生活になくてはならない物であった。ところが、最近はコーヒー・紅茶はじめ多様な飲料が氾濫していることや急須で淹れる煩わしさなどから、お茶消費量の減少に歯止めがかからない。お茶離れからお茶の淹れ方を知らないどころかペットボトルのお茶を緑茶と思い込んでいる若者もいるご時世となってしまった。茶の消費が減少し、茶業界は大変な状況である。掛川市の特産品であるお茶が、各種茶品評会で上位入賞して良質茶を生産し続けても価格低下は止まらず、生産者にとって厳しい状態となっている。そこで、改めてお茶への関心が高まることを期待して、お茶の間の話題になるような「お茶のよもやま話」を記述することとした。

湯呑に入った温かいお茶と急須が描かれた画像

お茶の歴史

平安時代、最澄や空海などが、唐へ留学した際中国から茶を持ち帰ったのが始まりと言われています。その後、鎌倉時代に臨済宗を伝えた禅僧としても知られている栄西禅師が、「喫茶養生記」を著して、「茶なるものは、末代養生の仙薬、人倫延齢の妙術なり」と喫茶の効能を説いたことから広まったと言われています。

静岡県の茶は、聖一国師が1241年に中国から種子をもたらし、出生地に近い足久保に蒔いたのが始まりと伝えられています。これは本山茶のもととされています。その後、明治維新には徳川藩士や川越人足等による大規模な牧之原開拓など、日本一の大茶産地となる基盤が作られました。

掛川茶の始まりは、旧掛川市和田岡村高田の永住寺改築(1572年から1592年)のおり、檀徒数名が京都方面の寺院を視察した際、茶の種子を持ち帰り和田岡村吉岡原に蒔いたのが掛川茶の始まりと言われています。

掛川城主の山内一豊が中山峠の久延寺で徳川家康をお茶でもてなしたとする場面があるように、この頃には茶文化の広がりは当地にも波及していることがわかります。当時のお茶は武将と庶民間では違っていて晴れの場面と日常生活で、抹茶と番茶の類のものが使い分けられていたと推測できます。その後1738年京都宇治の永谷宗円翁が現在の煎茶製法を編み出し、この技術が広く伝わって掛川市でも後発ながら、江戸時代後期には茶産地として形成されました。(ところで、永谷宗円の末裔が掛川市お茶振興課に在籍していることはみなさんご存じだろうか?県職員との人事交流で昨年度から掛川茶の振興に尽力していただいています。)

茶のことわざと言葉

  • 朝茶に別れるな朝茶の習慣はやめるなの意。
    朝茶を災難避けや幸運と結びつけている例は多い。茶と健康の関係は経験的に知られていた。
  • 朝茶は三里行っても飲め
    朝茶も飲まずに急いで出掛けなければならない時でも、途中で必ず飲めの意。
  • 鬼も十八 番茶も出花
    誰でも一生に一度は美しい時期があることのたとえ
  • 茶殻も肥やしになる
    人が捨てるようなものでもどこか取り柄があるものだの意。
  • へそが茶を沸かす
    おかしくてたまらないことのたとえ。
  • 宵越しの茶は飲むな
    茶はいれたてでうまいうちに飲めの意。
  • 茶碗を箸で叩くと貧乏神がくる
    食事の時、茶碗を叩くのは行儀の悪いこと。しつけのための戒めである。
  • お茶をにごす
    茶の湯で、きちんとお茶を点てることのできない未熟な人が、茶碗の湯を濁した程度で終わることから、能力や技術の劣る者が表面を取り繕うだけのいい加減なやり方で、その場をしのぐことをいう。
  • お茶を一服
    ひと休みする。
  • お茶にする
    ひと休みする、はぐらかして、まじめな受け答えをしない。人をちゃかす意味がある。
  • 余り茶に福あり
    人の取り残した物に思わぬ利益があること。先を争うのはいけないという意にもいう。
  • 茶々をいれる
    文句をつける。邪魔をする。故障を言い立てて妨害すること。
    茶々はさまたげ・邪魔の意で、人が話しているのを冷やかして邪魔をする。

(成語林・飲食事辞典・故事ことわざ辞典・風俗辞典・決まり文句語源辞典・ちょっと古風な日本語辞典より)

普段よく使われているお茶に関わる言葉は他にも「お茶の子さいさい」「無茶苦茶、目茶苦茶」「日常茶飯事」等々数多くあり、昔から私たちの生活とお茶は密接に結びついていることが分かるのではないでしょうか。また、お茶の健康関連の言葉も多く、成分分析などできてない大昔から病気との関連と緑茶の効能を経験的に分かっていたのではないでしょうか。

  • 八十八夜のお茶を飲むと病気をしない
  • お茶は百薬の長
  • お茶を飲むと長生きする
  • 朝飲む茶は健康に良い
  • 朝茶は七里帰っても飲め
  • 朝茶は福が増す
  • 朝茶は質を置いても飲め
  • 朝茶はその日の難のがれ
  • 宵越しのお茶は飲まない

お茶の効能は下記に記述のとおり、多様であり、茶殻の活用もできるので、改めてお茶の魅力を再確認して、これまで以上に毎日の生活に取り入れていただきたいと思います。
「まずは隗より始めよ」のごとく産地である掛川市民がこれまで以上にお茶に親しんでいただきたいと思います。

お茶の機能性

お茶は機能性総合飲料と言われるほど様々な機能性を有しております。

  • 緑茶カテキンによる 発がん作用抑制効果
  • γ-アミノ酸酪酸が 動脈硬化予防・脳卒中予防・血圧降下
  • ポリサッカロイド効果による 血糖値降下作用
  • 茶カテキンの殺菌力による 食中毒予防
  • カテキン類やフッ素による 虫歯予防・口臭抑制
  • ビタミンEを上回る効果 老化防止
  • ビタミンCが豊富 美容と健康

古くなったお茶の利用法

  • 茶風呂
    ガーゼなどの袋に茶葉を入れ浸すと体が温まり、肌のつやも良くなる
  • 冷蔵庫の臭い消し
    紙か布袋に入れて冷蔵庫内に置くと吸湿性も高く臭い消しになる
    (容器やタンス・トイレの臭い消しにもなります)
  • 植木鉢の肥料
    茶殻のもっとも手近な利用法で、植木の根元に散布すれば栄養分として分解吸収される

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