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第595回 公共施設はしっかり管理して、賢く長く丁寧に使う

2016年4月8日更新

掛川市理事兼総務部長 釜下 道治

掛川市には、小中学校や集会施設、スポーツ施設など、様々な公共施設がありますが、これらの施設は昭和50年代に整備された施設が多く、建築後30年を超えて老朽化が進み、近い将来、同時期に大規模な改修や建て替えが集中することが見込まれ、加えて、これらの施設を現状のまま維持するためには、多額の維持管理費用も必要になります。一方で、少子高齢化社会の進展に伴う社会保障関係費の増大や、市税収入の伸び悩みが見込まれる中、こうした施設等の更新や維持管理に充てる財源を充分に確保することは難しい状況となっています。
このような状況は、全国のほとんどの自治体が同様に抱える問題となっており、各市町において、それぞれのまちの公共施設等の全体を把握したうえで、長期的な視点に立って、総合的かつ計画的な管理を行うための基本的な方針づくり(「公共施設等総合管理計画」の策定)が進められています。

掛川市の同計画策定にあたって、市が保有する建物系の公共施設として、延床面積200平方メートル以上の建物を含む施設を対象としたところ、全体の総施設数は212施設、総面積は369,154平方メートルとなりました。一部事務組合が所有する施設(中東遠総合医療センター、環境資源ギャラリーなど)及びインフラ施設(公園、上下水道施設など)は除きます。
これを施設の用途別に12分類して内訳を見ると、学校教育施設が164,343平方メートルで全体の44.5%を占めて最も多く、次いで、住宅施設が37,675平方メートルで10.2%、スポーツ・レクリエーション施設が34,612平方メートルで9.4%を占めています。また、対象となった施設を建築年別に面積で整理すると、昭和39年(1964年)までに建設された施設が4.8%、昭和40年代が11.4%、昭和50年代が31.2%を占め、築後30年を超える施設が全体の49.1%となっています。
また、これらの建物系の公共施設について、既存のままの数や規模で維持する場合において必要となる将来の維持更新(修繕・改修・建て替え)費用を、標準的な改修・建て替え周期と単価にて算出したところ、将来10年間では313億円(1年平均31.3億円)、将来20年間では651億円(1年平均32.6億円)、将来30年間では1,158億円(1年平均38.6億円)、将来50年間では1,933億円(1年平均38.7億円)の費用がかかることになると推計されています。
さらに、建物以外のインフラ(道路、橋梁、上下水道)について、耐用年数を迎える整備量に更新単価を乗じて費用を算出すると、将来50年間において3,191億円(1年平均63.8億円)の費用が必要になると推計されています。

分類区分ごとの建物系公共施設面積と将来更新費用の推計

分類区分ごとの建物系公共施設面積と将来更新費用の推計一覧表
区分 施設数 面積(平方メートル) 割合 将来更新費用の推計(億円)
10年間 20年間 30年間 50年間 割合(50年)
庁舎施設 4 22,739.0 6.2% 39.7 44.4 55.9 133.0 6.9%
集会施設 33 27,577.7 7.5% 10.9 36.6 97.6 143.7 7.4%
社会教育・文化施設 14 16,985.1 4.6% 8.0 23.6 42.4 77.5 4.0%
スポーツ・レクリエーション施設 18 34,611.6 9.4% 17.9 55.6 86.4 165.9 8.6%
学校・教育施設 3 164,342.6 44.5% 146.6 331.0 579.9 908.0 47.0%
子育て支援施設 38 17,124.2 4.6% 9.3 26.8 61.7 91.8 4.7%
保健・医療・福祉施設 21 20,582.5 5.6% 30.9 42.2 71.8 119.7 6.2%
住宅施設 15 37,675.1 10.2% 21.6 49.8 105.8 165.4 8.5%
商業・産業施設 14 11,052.9 3.0% 11.3 16.0 28.4 52.7 2.7%
消防施設 3 2,320.3 0.6% 3.0 10.1 10.8 20.5 1.1%
環境・衛生施設 4 7,363.0 2.0% 4.6 5.4 6.5 19.3 1.0%
その他施設 5 6,780.0 1.8% 9.1 9.7 11.2 35.9 1.9%
合計 212 369,154.0 100.0% 312.9 651.2 1.158.4 1.933.4 100.0%

将来の更新費用の試算において、掛川市では、現在保有する公共施設等(建物系の公共施設+インフラ)について、削減等の対策を何もせず、既存の施設数や規模のまま維持していく場合、1年あたり102.5億円の費用が必要で、このうち、経費を自らの収入で賄う上水道や下水道等の事業会計に関する分32.5億円を除いても、「更新費用は年70億円が必要」となりますが、一方で、近年の建設等に充てた事業費の状況をもとに、新規事業への取り組みや今後の社会保障関係費等の増加などを考慮すると、既存施設の維持更新費用に充てることのできる「財源は年40億円程度」と見込まれますので、今後、保有する公共施設の全てをそのまま維持更新することは、財源確保の観点から不可能であり、対象とする公共施設総面積の縮減を図ることなどの対応が避けられません。

掛川市の公共施設等総合管理計画の策定においては、こうした状況を踏まえ、「施設の安全・安心を確保するとともに、施設によるサービスを最適かつ持続可能なものとすること」を目的に、「1.保有総量の適正化」と「2.長寿命化と安全確保」、「3.運営管理の適正化」の3つを今後の公共施設等管理の基本的な考え方としています。

  1. 保有総量の適正化としては
    1. 施設の設置目的や利用実態を踏まえて施設や行政サービスの必要性について検討することや
    2. 施設の統廃合や機能の集約、複合化により保有総量の圧縮を図ること
    3. 市民ニーズに応じた行政サービスが提供できるように施設機能の見直しと適正配置を講じること
    4. 近隣自治体との相互利用など広域連携の可能性を検討することとします。
  2. 長寿命化と安全確保としては
    1. 予防保全(故障前に、必要な改修・修繕を計画的に実施すること)による長寿命化を図ることや
    2. 施設の点検による安全確保と災害拠点施設における耐震化を図ることとします。
  3. 運営管理の適正化としては
    1. 光熱水費や委託費等の維持管理費の縮減に努めるとともに受益者負担の適正化、未利用施設の処分・貸し付け等による財源の確保を検討することや
    2. 施設の利用者や地域、市民との協働による運営管理など新しい仕組みを検討することとします。

公共施設等は単に必要に応じて作り足すのではなく、しっかり管理して「賢く長く丁寧に使う」を基本的な考え方として、計画的に効率よく整備や維持管理を行い、寿命を延ばしたり、利活用の促進や統廃合を進めることで将来の負担軽減を図り、都市経営上の「資産」としての運用(マネジメント)をさらに確実に推進していくことが求められます。
既に、南部体育館“しーすぽ”として再編された旧大東体育館と旧大須賀体育館における事例のほか、学校給食調理場のセンター化、市営住宅や橋梁の長寿命化計画等、個別の公共施設ごとに取り組まれてきているところでもありますが、今後、分野区分ごと個別に、また、特に老朽化等の課題により対策が急がれる施設分野においては早急に、新たな施設管理(運営)計画を検討し、策定・実践していく必要があります。
公共施設等の総合管理計画に基づいた新たな個別計画の策定は、それぞれの公共施設のあり方を検討することになることから、これを利用される市民の皆さんのご理解とご意見が反映されたものとすることが必須の要件となります。
掛川市の公共施設等の状況をよく知っていただき、ご理解いただくとともに、より適正な規模と内容による最適なサービスが持続できる施設づくりとなりますようご協力をお願いいたします。

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