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第599回「森の都温泉ならここの湯」其の二

2016年5月6日更新

掛川市都市建設部長 小林隆

一昨年の7月に第487回 「森の都ならここ」と私、昨年の10月には第567回 「森の都温泉ならここの湯」で投稿させて頂いていました。前回の投稿で、「温泉掘削物語」については次の機会でとのお約束でしたので、今回、投稿させて頂きました。

森の中のここならの湯の外観。オレンジ色の壁に灰色の屋根

石で作られたならここの湯の表札

「森の都温泉ならここの湯」の源泉掘削工事は、平成12年10月から、年末年始(12月30日から1月5日)を除いて、翌年の5月までの約8ヶ月を要し、約1500メートルの地下深くまで掘削することにより、見事温泉を汲み上げることに成功いたしました。
温泉の掘削箇所の選定と掘削作業(技術)については、近年の油田開発(掘削)技術が飛躍的に発展したことが、温泉掘削に大きく寄与していることをはじめに申し上げておきます。

掘削箇所の選定については、「ならここの湯」では先ず、「電気探査」により観測をしました。「電気探査」とは、電流により地下深い地質及び、地層を観測することであり、「ならここの湯」での調査は、原泉から数キロメートル西に離れた原谷・原田地区から原泉地区に向かって斜めに電流を流して地下深いところでの温泉の様子を探りました。ここでの温泉とは、湯溜まりでは無く、地下水が多く含まれている地下の亀裂の多い箇所を探す作業でした。この地下の構造及び源泉につきましては、次の機会で説明させて頂きます。
この電気探査により、これまでの地上探査と比較して、温泉湧出の確立が非常に高くなったとのことでした。

続きまして掘削工事です。掘削作業を簡単に言えば、先端に堅い岩盤を掘削する掘削用ドリル(先端に、工業用ダイヤモンドを装着)を取り付けた鋼管を少しずつ地下深くまで掘り進める作業です。「ならここの湯」では、地下約1500メートルまで掘削いたしました。
1本の鋼管が長ければ長い程、一度に深く掘削することが出来て作業が楽なのですが、技術的及び作業効率的な理由から、鋼管の長さは1本あたり約10メートルを使用しました。

掘削作業は、先ずは1本分の約10メートルを掘削し、次にその掘削した鋼管を持ち上げて次の鋼管を繋ぎ、2本目分を掘削するという作業です。掘っては繋ぎ、掘っては繋ぎという単純な作業を繰り返して、約1500をメートルを掘削していきました。
この作業のために高さ約30メートルの櫓(やぐら)を設置しました。最終的には、150本の繋がれた鋼管が約1500のメートルの地下深くまで挿入されたこととなります。
この鋼管の先端約300メートルは切り込みが入ったスリット状の鋼管が取り付けてあり、スリット状の隙間から地下水(温泉)が入り込み、その地下水をポンプで汲み上げる仕組みになっています。鋼管は地下水を集水して汲み上げる鞘(さや)となっているのです。

現在、源泉地では櫓も鋼管も見ることが出来ず、ポンプを制御する施設だけとなっています。
掘削当時、原泉地区の皆様には、悲願である温泉掘削の様子をお知らせするために、「原泉地区温泉推進協議会」の会報として、『原泉温泉だより』を発行させて頂いたり、又、掘削作業に実際使用された先端のドリルを、地区で開催された文化祭の会場に展示するなど、工事の内容と進捗状況をご案内して、大好評を頂きました。

露天風呂ならここの湯につかる女性二人

こうして完成した「ならここの湯」の一番の売りは、何と言っても全く希釈していない、源泉100%の温泉であることです。この温泉は、昼夜休み無く掘削挿入した鋼管を通して、地下約1500メートルからポンプで汲み上げられ、私たちの目の前に現れています。何十年、何百年、或いは何千年も前に地下深くに侵入した地下水(温泉)が、今、この時、ここ原泉のならここの湯船に湧き出ているのです。

「ならここの湯」ご利用の際には、この様なことに思いを巡らせながら、是非、皆様の手に「ならここの湯」をすくい上げて見てください。

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