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第609回 掛川市における今後の土木行政

2016年7月1日更新

掛川市水道部長 山下甫

今後の掛川市の土木行政を考えるに当たり、将来の掛川市の在り方を考える必要がある。全国的な人口減少、高齢化社会の到来や南海トラフに起因する大規模地震については避けられないこととした場合、掛川市の現状から将来を想定し、そのために何が必要かの考察をしていきたい。

人口減少を食い止め、地震による被害を最小限に抑えるために、「希望が見えるまち・誰もが住みたくなるまち掛川」を目指し地域創生総合戦略の中で各種施策が上げられている。

まず人口減少対策として、福祉教育施策に重点を置くことは大切なことではあるが、それと併せて産業基盤の強化も必要である。企業誘致や観光客誘客を図り経済を活性化することにより、掛川市を他の地方都市と差別化する必要がある。そのための方策としては、地の利を活かすこと、強みを活かすことが近道だと考える。

掛川の強みは交通の利便性にある。新幹線を使えば、東京に行くには2時間、大阪に行くにも2時間、名古屋に行くには1時間。車で行くにもそんなに変わらない。さらに交通の利便性を活かすには、新幹線掛川駅、東名高速道路掛川インターチェンジ、新東名高速道路森掛川インターチェンジ、これらを有機的に結び、その上で静岡空港や御前崎港とのアクセスを強化することによって、周辺市町を含めたメリットを生み出したい。

このためにも、既存の東西交通体系(JR東海道新幹線、JR東海道本線、新東名高速道路、東名高速道路、国道一号線、国道150号線)を活かすために南北の幹線道路やそれを補完する道路の整備を進めたい。

次に定住人口を増やすには、安全安心な居住空間の確保が必要であり、前述の大地震や津波対策と併せ異常気象による大雨対策を進めたい。

地震対策としては被災時の緊急輸送路や避難路の確保が必要であり、被災時に通行を阻害するのは、周辺建物の倒壊や車輌の放置によるものも当然あるが、道路行政的に対応しておかなければならないのは、道路の法面の崩壊や橋梁損傷による通行不能の発生である。

市内市道延長1586キロメートル、市道橋梁1266基と言う全数の対応ができればいいが、とてもこれだけの数量をこなすことはできない。やはり路線の重要度、施設の危険度により、優先順位を決めのり面保護や耐震補強を行い、被災時の輸送路や避難路の確保を図りたい。

また、津波対策としては総延長約10のキロメートル海岸線の海岸防災林整備による防潮堤の築堤が必要となる。また、遠州灘に流入する河川の堤防嵩上げや、水門の整備も考えなくてはならない。

大雨対策としては河川整備や、浸水対策が必要となる。市管理の主要河川約300河川、約400キロメートルの河川整備はたやすくは無い。さらに今まで河川整備に当たり想定した降雨量を超える大雨が、異常気象により頻繁に発生するようになってきた。また、土地利用の変更により、従前あった貯留能力の減少が被災エリアの拡大につながっている。

さらに大雨による洪水被害や浸水被害に併せ、土砂災害の発生が全国的に発生している。市内にも土砂災害危険個所が1426個所あり、急傾斜地崩壊防止対策、地滑り防止対策や土石流防止対策が必要であり、これらの対策は地震時の被害軽減をも図ることにもつながる。

これまで、掛川市の利点を活かす土木行政と安全安心な居住空間を確保するための土木行政について考えてきたが、もう一つ将来の掛川市を考えたときに問題となることがある。

昭和40年代以前に作られた道路構造物の老朽化である。特に市内橋梁1266橋の内、90%以上は昭和55年以前に作られており、老朽化や耐震性が問題となっている。この老朽化対策や耐震対策を進めないと、地震時の緊急輸送路や避難路の確保ができない。

また、舗装の老朽化による路面の傷みが激しく、日常生活の安全性・利便性のためにも、舗装改良の必要性が今後益々増大すると思われる。

これまで述べてきたこと以外に、日々の安全性・利便性確保のために、道路河川の維持管理は必要となっており、行政だけで対応できない状況になっている。将来の掛川市を考えたとき、今のうちから計画的な土木施設の整備・改良さらには更新の必要があり、維持管理の方策を含めた将来の土木行政の在り方を、協働・継続をキーワードに今一度見直す時期にあると思う。

新幹線が手前に向かって走ってくる画像
JR東海道新幹線(高御所)
リニア中央新幹線が開通後、「こだま」の増便は?

海岸防災林整備事業で整備されて平らになっている防潮堤の画像
海岸防災林整備事業(沖之須)
協働により整備が始まった防潮堤

 

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