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第626回 自分の命を自分で助ける救助法

2016年9月30日更新

掛川市南消防署長 土屋明宏

暑い夏も終わり各町内では、掛川祭りのお囃子の練習が聞こえ秋の訪れが感じてきました。
さて、遠州灘を管轄に持つ南署管内での、水難事故防止強化月間期間中(7月1日から8月31日)の水難事故による死者はゼロでした。しかし、全国的には、毎日のように痛ましい水の事故のニースが流れていました。
ここで、水に落ちたときの自分の命を自分で助ける救助法を一つ紹介します。
それは、「ういてまて」(旧着衣泳)です。昔から衣服を着たままの状態で、溺水により亡くなる方の事故の多くは、魚釣りや魚採り中が多かったそうです。このため、魚釣り中に落水してしまっても何とか浮いていられる方法がないかと考えたのが始まりという説があります。
現在の水難事故も、遊泳中の次ぎに魚釣り中の事故が多くなっているそうです。この内、7、8割はライフジャケットを着用してないと言われています。
このため、ライフジャケット等を着用していない着衣状態で落水してしまっても、何とか浮いていられるようにするための方法が「ういてまて」です。
「ういてまて」とは、万が一の事故の時に命をつなぐ最終手段です。
その方法として、背浮きがあります。背浮きをする利点は、呼吸が楽にできること、周囲の状況が確認しやすいこと、楽に浮けることから体力を温存できることです。

着衣泳のポイントについての説明画像

背浮きの姿勢は

  • 仰向けの状態であごを上げ鼻と口を水面から出す。
  • 仰向けで手足の力を抜いて広げる。
    (人は重い足から沈みますので、手を上げることのより重心が頭の方へ移動し浮きやすくなります。)
  • 呼吸は、胸が大きく膨らませるように意識する。
  • 靴も同様に浮力となりますので脱がないで下さい。
  • ポイントは(空を見て)(お腹を出して)です。

 

着衣泳のポイントは

  • あごを上げて鼻と口を水面から出す。
  • 「助けて」など大声を出さない。
    (肺の空気が抜けて体が沈んでしまう。)
  • 泳がずに「ただ浮いている」こと。発布スチロールや木材などにつかまるものを探す
  • 腕を振り上げない。(代わりに顔や体が沈んでしまう。)
  • あおむけで手足の力を抜いて広げる。
  • 靴を履いていると自然に足が浮く。

「ういてまて」で特に重要とされている技術は「背浮き」です。
水着のみの状態で背浮きができるのは、小学校5年生で約2割の児童であり、これに浮く運動靴を履いて背浮きをすると約8割の児童ができるというデーターもあり、運動靴を履いていれば、物理的にほぼ全員が背浮きができることになりますが、あくまでも、データーによる物で、できる人できない人各個人差はあるかと思いますが、共通して言える事は落ち着いて助けを待つことです。

浮いて助けを待つ事により、早期の救助及び救命率が上がります。
そこで、皆さんは掛川市消防本部(中央署・南署)に水難救助隊があるのをご存じですか?
合併後東西10キロメートルの渡る遠州灘を管轄に持ち、また、農業用のため池、菊川(一級河川)などが有りこれまでにもたびたび水難事故が発生しこうした状況の中、水難救助体制の整備が急務となり、平成17年以降整備を進め水難救助隊が発足しました。
水難救助隊は、潜水士や小型船舶の資格等を持ち、県消防学校での水難救助科程を終了した隊員13名で編成され、また、正規隊員を目指し訓練を重ねている隊員4名がいます。

水難救助隊の装備

水難救助活動が常に安全、確実、迅速に行えるようにいろいろな装備を整備しています。万が一に備え救助用ボートがトレーラーに搭載され、いつでも牽引し、出動できるように待機しています。

6人乗り救助用ゴムボートの画像

この救助用ゴムボートは、6人乗りで、15馬力の船外機を取付、溺者救出や潜水士を水上からサポートします。
南署にも同じ救助用ボート8人乗り、船外機は25馬力、が配備されています。

これは個人装備になります。

水中に沈んでしまった要救助者の救出のためのスエットスーツや、空気呼吸器を装着した画像

水難救助の際に装着するスエットスーツや、潜水機材一式を写した画像

これに空気呼吸器を装着することにより、水中に沈んでしまった要救助者の救出に向かいます。
また、水難救助隊では、今年発足したシーバード掛川(水上バイクを活用した民間水難救助団体)及び掛川警察署との官民合同水難救助訓練を7月19日に行い、人命救助最優先とした安全・確実・迅速な活動を目的とし、相互の連携強化を図ることができました。今後も、水難事故死者ゼロを目指し訓練に励んでいきます。

水上バイクを使って消防署水難救助隊による救助訓練の様子1

水上バイクを使って消防署水難救助隊による救助訓練の様子2

機動力に優れた水上バイクによる救助方法です。

消防署水難救助隊による救助訓練で水中からの要救助者を救出している様子
消防署水難救助隊による水中から要救助者の救出

消防署水難救助隊による救助訓練で要救助者を救助ボートへ引き揚げている様子
要救助者を救助ボートへ引き揚げ

 

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