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第628回 ~脳の強化書~

2016年10月18日更新

掛川市高齢者支援課長 久野文義

前回の寸感ホットページは、「脳の活性化」というタイトルで書かせていただきましたが、今回は「脳の強化書」といたしました。これは、医学博士で、株式会社「脳の学校」代表の加藤俊徳先生の著書のタイトルで、15万部以上売れたベストセラーです。
この本の目的は、トレーニングによって脳を鍛えて強くし、理想の自分をつくり出すことであります。
自分の脳を鍛え、つくり変えようとするなら、脳のどの部分を鍛えればいいのか、どうすれば鍛えられるのかということでありますが、まず、脳を鍛えるには、出来るだけ多くの経験を積まなければならないということはご承知のとおりだと思います。
脳にとっての経験とは、神経細胞にどんな情報が届けられたか、どのように栄養を摂取したか、また、環境の変化にどう対応したかなどですが、これらが豊かであればあるほど脳は個性的になるのです。

例えば、上司から始業前の課内清掃を指示されたとします。そこで、あなたが「どうして自分がそんなことをしなきゃいけないんだ。」と思ってしまったら、それは脳を使うときの癖に支配されているということです。これは、特に学校の成績が良かった人に多いようです。学校の成績が良かった人は、その成績に見合った行動を取ろうとします。つまり、自分にふさわしくないと思う作業はやらずに済ませるか、他人に任せようとします。
しかし、課内清掃という作業が脳に新たな経験を与えられるとしたら、「こんなことは自分がやることじゃない。」と決めつけてしまうのは、もったいないことかもしれません。課内清掃が脳を鍛える手段ということではありません。要するに、プライドや先入観が強すぎると、行動の選択肢を狭め、脳を使うチャンスを減らすことになるため、結果として脳の成長を妨げてしまいかねないということです。

皆さんのまわりにも、学校の成績は良かったのに、社会に出たらまったく冴えなくて、仕事の成績も伸び悩んでいるという人はいないでしょうか。このような人は、学生時代に重視されていた「学校脳」の影響をいまだに強く受けていて、学校の勉強の延長線上でしか脳を使えていない可能性があります。ですから、脳を鍛えるときには無用な誓約を外して、できるだけ自由な発想を持つことが大切だということです。
やってもムダだと言わず、何でもまずはやってみることが大切なのかもしれません。

さて、前回の寸感ホットページで、最近、物忘れが多々あると書きました。この物忘れ、記憶力の低下は、脳の海馬(記憶をつかさどる部位)で萎縮のサインが出ている状態ということです。物忘れが激しくなったことに危機感を覚えて、記憶力を高めようとひたすら暗記しようとする人がいますが、これは正しい方法ではありません。萎縮して正常に働かなくなっている海馬に対して、無理に「これを覚えなさい。」と命令を出したところで、あまり効果はないということです。

では、記憶力の低下を感じた場合、どうすれば良いのでしょうか。有効なのは、記憶力ではなく、「思考力」を高めることが良いそうです。思考力が高まると、記憶力を低下させていた海馬の働きも回復し、元の状態に戻ってきますので、記憶力が落ちたと感じている人は、いろんな人とコミュニケーションを図るなどして情報交換の機会を増やし、思考力を強化すれば良いということです。

最後に、脳を効果的に鍛えるための、ポイントを2つ紹介したいと思います。

まず1つ目は、日常の生活を見直すことです。
この見直しは、特にビジネスマンに有効とのことであります。
よく、「仕事が忙しい」と長時間にわたってダラダラと仕事をしている人がいますが、このようなタイプの人には、脳にとって悪い習慣が身についている可能性があるということです。
そもそも1日のうちで、仕事に必要な脳を使うことが許されるのは8から10時間程度、それ以上の時間を仕事に費やしていると、同じ脳を長時間使い続けることになり、その結果、脳が疲弊して作業効率が低下してしまうということです。
何でもそうですが、仕事も程々にということでしょうか。

2つ目は、「したい思考」で発想することです。
自分にとって、やりたいことがあっても、それができないほどやるべきことが多すぎると、やがて何事に対してもやらなければならないと思いながら行動することになり、結果として常にやらされているという感覚に陥ります。このような受身状態を「させられ思考」といいます。
一方、逆の能動的な思考は「したい思考」であります。
「させられ思考」に支配されてしまうと、仕事で上司から指示をされても、聴覚系の脳が受身的になってしまいますし、仕事の資料に嫌々目を通しているうちに、視覚系の脳も受身的になってしまいます。
脳を鍛えるときには、この「させられ思考」を「したい思考」に変えることが大事だということです。

その一環として心掛けたいのが、情報に自主的にアクセスすることであります。
テレビをつけたときに、たまたま放送していた野球中継を見るのと、「野球を見たい。」と思って野球中継を見るのとでは、最初の意識において大きな違いが生まれます。後者こそ「したい思考」の発想であり、望んでいる情報を自分のもとに積極的にたぐり寄せる考え方です。
脳を鍛えるという行為は、明確な意思のもとに行われるものですから、「させられ思考」では効果がないということです。
自分の脳の習慣を見直し、「させられ思考」から「したい思考」に転換すれば、今までの受身的な自分とはまったく違う、何事にも前向きで積極的な自分が誕生すると思いますが、如何でしょうか。

次回は、脳の力がグンとアップする「脳番地」という考え方やその脳番地の具体的なトレーニング方法について触れてみたいと思います。

【参考】

掛川市は、認知症の方が多いと言われております。特に、気になるのは、女性の方が多いということです。
平成28年3月末日現在の掛川市の要支援・介護認定者数は、4,808人で、そのうち、約4,600人の方が認知症と診断されており、男性が1,600人、女性が3,000人という内訳であります。

この認知症予防には、頭を使いながら指先を動かす健康麻雀や囲碁、将棋などが非常に効果的であると言われております。
しかし、これらをやられているのは、殆どが男性で、女性が麻雀をやっているのは、めったに見かけません。

テレビで、100歳を超える元気なおばあちゃんが、麻雀を中心にすえて規則正しい生活を送っている番組をやっておりましたが、女性の皆さんも、是非、健康麻雀を始めてみては如何でしょうか。ルールさえ覚えれば、病みつきになるかもしれません。

ただし、毎回、徹マン(徹夜麻雀)では困りますが。
こちらも、程々にということでしょうか?

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