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第642回 国際交流とお茶の海外戦略

2017年1月10日更新

掛川市環境経済部長 大石良治

平成28年5月から6月にイタリアペーザロ市との姉妹都市締結のため、国際交流の担当である生涯学習協働推進課長としてイタリアを訪問しました。昨年は、イタリアと日本の国交150年の記念すべき年であり、両国内の各地で様々なイベントも行われました。この様な年に姉妹都市締結が行われたことの意義深さまた、この橋渡し役を快くお引き受けいただきました当市出身のテノール歌手榛葉昌寛氏のお力に改めて感謝申し上げます。

調印式が行われた9月20日までの間、ペーザロ市とのビジネススタイルの違い、イタリアの法律で公務員もサマーバカンスを1ヶ月連続で取得する義務、イタリア語の翻訳などさまざまな対応に生涯学習協働推進課の職員全員が一丸となって進めてくれました。途中、ペーザロ市のリッチ市長の来日が危ぶまれましたが、無事来掛され調印式を含む一連の事業を行うことができました。

これまでを振り返りますと、訪問から調印までにご協力いただきました経済界(商工会議所・商工会・観光協会)の皆様をはじめ、諸事業に携わっていただきました関係団体、関係者の皆様に改めてお礼を申し上げたいと思います。

従来の海外姉妹都市は、人的交流を前面に出した協定内容でしたが、今回の調印については、経済交流を最優先した調定内容でありました。

今年度は、この調印式までが自分の守備範囲と思っておりましたが、11月に人事異動が行われ、自分が経済交流を直接関連する部署に異動、この様な流れの中で実感した、二つの姉妹都市(アメリカ西海岸にあるユージン市とイタリアのペーザロ市)への「お茶の海外戦略」について、その一部をお伝えしたいと思います。

調印式の垂れ幕や国旗、金屏風の前で、正装の人たちが整列し、記念写真を撮っている様子。
9月20日に市役所にて行われた調印式

経済交流の一歩目

外国でのビジネスなどの交渉事の舞台は、ホームではなく完全アウェイです。日本とは環境が全然違います。時差ぼけで頭が回転しない、移動などの手配に時間が取られたり、食事が合わない、言葉がうまく通じないなど、いろんな支障が出て集中できないなど、完全に地の利は相手にあります。その点、掛川市が目指した経済交流は姉妹都市であるペーザロ市・ユージン市から始めたことは、信頼関係という何にも代えがたいものであるとともに、大変有意義なものでありました。
それでは、二つの姉妹都市への訪問の取組をお伝えします。

イタリア ペーザロ市 注 この訪問は担当部署から報告内容

店内で机を囲んで、7人の男女が話し合いをしている様子。
レストランのシェフでステファン氏との対談

ペーザロ市では、国際的に評価の高いレストランのシェフでステファン氏をペーザロ市副市長のダニエーレ・ヴィミニ氏の紹介で訪問しました。
最高級の料理に最高級の掛川茶の素材活用を提案したところ、シェフから掛川茶の高い評価をいただき、翌日からポルチーノ(キノコ)やペコリーノ(チーズ)と掛川茶の組み合わせによる料理提供が開始されるようになりました。
ステファン氏は、調理師学校で若い世代の育成にも尽力されており今後、若手シェフの育成に掛川市へのシェフ派遣などについても意見交換し、実現に向け進めていく約束がなされました。

店内で、6人の男女が並び、カメラに向かって笑顔を向けている様子。真ん中の女性が掛川茶をアピールする箱のようなものを持っている。
日本料理店ケンタロウ店内にて

次に、掛川茶マイスターが淹れるおいしい掛川茶が飲める店、海外第1号店として、ペーザロ市内にある日本料理店「ケンタロウ」を訪問し認定しました。
今後、本物の掛川茶が飲める店として、呈茶はもとよりパンフレット配布など実施し、平常時はペーザロ市民への普及を行うとともに、世界中から音楽愛好家が集まる夏のロッシーニオペラ時期には、世界の人々へ掛川茶を発信することとなりました。

アメリカ ユージン市

なんと言ってもユージン市は39年にわたって姉妹都市交流を進めてきたため、人的つながりは大変強く、ユージン市内のティ関係会社や小売店でも、「OH SISTER CITY KAKEGAWA!」から会話が始まることに安心感と信頼関係の強さを感じたものであります。

姉妹都市委員会ネプラー会長夫妻を中心に情報をいただき、ユージン市には1,000人弱の日本人、日系人まで含めれば2,000人が住んでおり、お茶に対する関心、興味が高いため、今後の日本人の集まり、日系人の集まりでは、「掛川茶」のPRへの協力も快諾いただきました。

机を挟んで、6人が食事をしながら、打ち合わせをしている写真。
市民委員会ネプラー会長夫妻、高橋事務局長との打ち合わせ

また、毎年2月に「アジアンセレブレイション」というイベントがユージン市で開催され、約2万人の来場者があるそうです。イベントでは、アジアの文化が紹介され、姉妹都市委員会からも例年出展しているため、今後はここで掛川茶を紹介し、お茶の淹れ方のデモンストレーションなどを行えば来場者の関心を惹くはずであり、是非協力したいとのお言葉もいただきました。また、地元商工会会頭からは、昨年松井市長ユージン訪問の際に、経済交流についての協力要請もあり、全面的に協力したいとの力強い言葉に安堵しました。

机を囲んで座り、お茶を飲みながら、男性のプレゼンテーションを聞く人たちの写真。
Mountain Rose Herbs社訪問 呈茶

Mountain Rose Herbsという市内にあるハーブやお茶、アロマなどを取り扱う会社を訪問。自社工場でパッケージングを行い、自社ブランドで卸売り、小売り、通販を行い、日本の抹茶、煎茶はすでに扱っているとのことでありましたが、社長からは深蒸し茶のことは知らなかったことを伺いました。掛川茶を飲んだ感想は、「ベリーグッド、ユニーク、スペシャル」と高評価であり、サンプルと見積もりの提出依頼もありました。
この社長さんは、40才前後の方で、小学生のときに担任の先生から姉妹都市である掛川市のお友達に手紙を書きなさいと言われ、手紙の交換を懐かしそうに語ってくれた姿が印象深い場面でした。

結びに

約1年半に渡り手掛けてきました、国際交流の職務が、現在の部署でも引き続き行われ、姉妹都市との間に着実に経済関係交流へと結びつこうとしていることを実感しています。

この流れは、平成26年から国が進めています、「日本再興戦略」において、農業を新たな”成長エンジン”と位置づけ『攻めの農林水産業』として、規制緩和による農業経営の大規模化や機械化による効率化で国際競争力を強化し、輸出額の増加を目標に掲げていることからも明らかであります。

国内における「強い農業」では差別化された農産物の優位性を最大限に進め、また、海外では平成25年12月にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」が国際的な評価を得ることとなったため、この点も常に頭に描きながら、掛川の特産であるお茶においては、「世界農業遺産 静岡の茶草場農法」をうまく活用するとともに、その他の農産物についても今後、国内外の姉妹都市を始め、関係する各自治体や各種団体と地産地消や互産互消を進めて行きたいと思います。

ただし、経済交流には、シビアなビジネス交渉やそれぞれの国の情勢や国際社会の動向に常に注視することが必要です。この点について考慮しながら、組合・民間関係者や生産者の方々が担うところと、我々行政が可能なところをしっかり見極め、「オール掛川」で経済交流を進めて参りたいと思います。関係者の皆様、ご支援ご協力をお願いいたします。