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第645回 吉行淳之介文学館について

2017年1月24日更新

掛川市立図書館長 奥野寿夫

市内上垂木のねむの木村に芥川賞作家吉行淳之介の文学館があります。
掛川市内唯一の文学館です。一度訪れてみてはいかがでしょうか。

着物を着て、横を向いた姿で上半身を撮った吉行淳之介の白黒写真。

吉行淳之介は1924(大正13)年岡山市に生まれ、2歳の時に東京に移住しました。
1942(昭和17)年、18歳で旧制静岡高校文科丙類(仏文)に入学しましたが、翌年結核により休学。1945(昭和20)年には、東京帝国大学文学部英文科に入学しています。
1954(昭和29)年に『驟雨』で第31回芥川賞を受賞し、その後も多くの文学作品を発表しました。阿川弘之、安岡章太郎など同世代の作家とともに「第三の新人」と呼ばれています。
1978(昭和53)年に刊行された『夕暮れまで』は「夕暮れ族」という流行語を生み出し、映画化もされました。
芥川賞など数多くの文学賞の選考委員も務め、小説だけでなく多くの随筆や対談などを残しましたが、気管支喘息など多くの病気がついてまわりました。彼は病気を「飼い慣らす」と言っています。
1994(平成6)年7月、肝臓癌により70歳で亡くなりました。
その生き方に惹かれる人は多く、2007(平成19)年には雑誌『サライ』3月15日号が「ダンディズムを貫き通した『機微の人』」として吉行淳之介を特集しています。同年に出版された『宮城まり子が選ぶ吉行淳之介短編集』には、彼の代表的な短編とともに、パートナーだったまり子さんの言葉も添えられています。

 

吉行淳之介文学館をほぼ正面から撮った写真。入り口にはポスターが貼ってあり、また入り口付近には緑の植木がある。

吉行淳之介文学館は、まり子さんが彼の死から5年後の1999(平成11)年5月、掛川市上垂木のねむの木村に開館しました。
文学館は、周囲を山に囲まれ、前には桜木池があり、桜や梅、けやきなども植えられた静かな環境の中にあります。

文学館の設計は京都伝統建築技術協会理事長の中村昌生氏。
建物は木造一部RC造ですが、瓦葺き屋根と漆喰仕上げで統一されています。その景観は山合のたたずまいにもなじみ、落ち着いた中にもしゃれた雰囲気を感じさせます。

玄関を入ると正面に中庭があり、建物はこの中庭を囲む形となっていて、館内の雰囲気も安らぎを感じさせます。中庭のしだれ桜の開花や紅葉により四季を感じることができます。
展示室には、彼の著書や手書きの原稿、手紙、写真などが展示され、著書を読むこともできます。展示物にはまり子さんのコメントが添えられています。愛用の品も展示されています。

淳之介は一筆置くとまり子さんに「お茶をいただきたいな」と言ったそうです。
そんな想い出からまりこさんは茶室のある文学館をつくりたいと考え、文学館には裏千家15代家元千宗室命名の茶室「和心庵」が併設されています。茶室では、ねむの木の子どもたちがお点前をしてくれます(有料)。立礼席のある展示室からは文学館の南側の風景をながめることができます。
桜木池のほとりには、森の喫茶室「MARIKO(まりこ)」があります。

吉行淳之介文学館

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料金目安

一般・大学生:600円(20名以上の団体の場合500円)
小・中・高生:250円(20名以上の団体の場合200円)
注 「ねむの木美術館」とセットで買うとお得です。

住所

郵便番号 436-0221 掛川市上垂木あかしや通り1丁目1番地 (掛川市上垂木3190-2)

アクセス

掛川駅北口からバスで22から23分。桜木線6の「ねむの木美術館前行」に乗車して、「吉行淳之介文学館前」下車。
アクセスマップは下記を参照

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駐車場

無料。敷地内にあります。大型車可

電話番号

0537-26-3923

営業時間

午前10時から午後5時【入館は午後4時30分まで】

定休日

年末はお休み。元日の午後のみ開館の場合があります。

写真は吉行淳之介文学館提供。作成にあたり、「ねむの木学園」園長の宮城まり子さんに貴重なお話を伺うことができました。ありがとうございました。

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