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第679回 使えるおじさん、使えないおじさん

2017年8月18日更新

掛川市生涯学習協働推進課長 都築良樹

今年も私の課に新人職員が配置された。仕事への意欲が高く勉強熱心な上にもともと備えている能力が高いので、既にかなり活躍してくれている。昨年度の新人職員もそうだった。
最初の面接で「職業人としてなりたい自分をデザインすることで、積むべきキャリアがわかるよ」などと偉そうな指導をしたが、その必要は無かった。

こんなに実力の高い若者たちの上に立ち管理職として職務を全うするには、いろいろ考えたほうがいいな。

掛川市役所庁舎内の写真。天井まで吹き抜けの構造でガラス張りの構造は、非常に開放感のある造りとなっている

私が就職した約30年前は、世の中バブルの最中。「人材」を「人財」などと言い換え、組織が研修などで個人の能力を開発し、その見返りとして「組織のために24時間戦えますか?」というのが当たり前だった。
しかし今は違う。自ら自分を磨き能力を開発し、職業人としての自分の価値を最大限に高め、限られた時間と資源の中で組織への貢献度を最大化することが求められている。そのことを新人職員はしっかり分かっている。分かっちゃいないのは、私たちおじさん世代かも。

どうして新人職員は分かっているのか考えてみる。やはり生まれ育った時代が違うからだと思う。新人職員達を含め今の若い世代は、バブル崩壊後の「失われた20年」の間に生まれ育ってきた。厳しい社会経済情勢下だから、いろんなことを期待しても満足には叶わない。親も大変だからあまり迷惑をかけられない。だから何事も自分で努力して進んでいかなくてはならないことを、自身の成長過程で十分に分かっているのだ
私たちはというと、高度成長の余韻とバブルに浮かれて、知らぬ間に社会の変化に取り残されてしまった世代。親の年収はある程度あり、親のすねをかじって何でも望むものは手に入った。つまり、ぬくぬくと育ってきたのだ。この育った環境の違いが私たちと若い世代との違いであり、社会観、人間観そして自らを律する姿勢の違いを生んでいるのだ。

以前、日経ビジネスでこんな記事を読んだ。「環境の変化に気づかず危機意識が薄い世代、君たちはゆでガエルだ」、「必死でもがく姿を若い人にみせろ」、「未来への捨て石になれ」と。
これは時代が変わっていることに気づかない世代への警鐘だ。

今、国の債務残高の対GDP比は約240パーセント、資産の2倍以上の借金がある。さらに2050年にはお年寄りを支える若者の割合はほぼ1対1。何が問題って、これからの若い世代は自分の暮らしとともに医療や年金を支えるため1人で2人分の生活費をかせぐようなもので、加えて多額の借金を返していかなくちゃいけないってこと。

 

掛川市役所の道路標識とガラス張りの市役所本庁舎の写真。屋上にはドーム状の屋根が見える。

こんな時代を乗り越えるためにはパラダイムの転換が必要だが、人は年齢を重ねると保守化する。これまでと違うことはやりたくない。改革、規制緩和に及び腰だ。
でも、私たちは年齢を重ねて確実に培ってきたものがある。それは豊富な経験、知識、技術だ。この貴重な財産にイノベーションマインドが加われば無敵なはず。

前例に固執したり、自分から分かろうとしなかったり、自分をよく見せることばかり考えているおじさんは、すぐに仕事ができないことがバレて長くは持たない。
自分の主義主張が絶対で、人の話を聞かないおじさんはうざいだけ、使えない。

私たちおじさん世代が「使えるおじさん」として管理職を全うするためには、イノベーションマインドを持って必死でもがきながら経験、知識、技術を駆使する以外なさそうだ。

 

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