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第701回 病院統合は成功したのか? ~全国から注目される中東遠総合医療センター~

更新日: 2017年12月8日
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掛川市健康福祉部付参事
中東遠総合医療センター経営戦略室長 石野 敏也


はじめに

 「中東遠総合医療センター」が、平成25年5月1日の開院以降4年半余が経過しました。
 全国初の統合ということで注目度も高く、厚生労働省や総務省のほか、公共インフラの集約という観点から国土交通省でも統合効果が検証されるなど、医療分野に限らず多方面から研究対象となっています。
 県内外からの視察も多く、北は小樽、南は熊本と全国各地からの公式訪問が60を超え、国外では中国、韓国、モンゴルから言葉の壁を乗り越え見学に来られました。医師、部署レベルでは日常的に視察者が当院を訪問している状況です。

なぜ「中東遠総合医療センター」が注目されるのか?

 4年余が経過した今、多く視察者が真っ先に聞きたいことは、「果たして掛川と袋井の病院統合は本当に成功したのか?」「病院統合は効果があるのか?」といった核心部分です。
 全国の医療関係者をはじめ自治体のトップや議会関係者は、病院の将来に大きな不安を持っています。世界に類を見ない急速な高齢化と国家財政の窮状は、日本の将来の医療体制のあり方、さらには終末期医療をどうすべきかなど、医療制度のみならず医療の本質に踏み込んだ国家レベルでの議論が必要だと考えています。
 病院経営を左右する診療報酬の抑制が段階的に行われつつある中、多くの自治体が将来的に病院を存続させるべきかという難問に直面しているといえます。
 「中東遠総合医療センター」の試みと統合による効果は、今後、日本の医療体制をどう再編していくべきかの方向性を探る羅針盤として注目されているわけです。

統合の効果を検証する

 では、病院統合の成果について、これまでの病院運営を振り返りながら検証してみたいと思います。
 これまで厚生労働省と総務省では、地域医療再生や公立病院改革を進めるため、病院統合を究極の手段と捉え、施策の最右翼に位置づけてきました。しかしながら現実は、あまりにも多くの課題と市民理解という高い壁が存在し、夕張市のように破綻に追い込まれた状態か、よほど首長の肝が据わっていなければ協議の土俵にすら上げられないのが現実です。過去には、銚子市民病院問題の存続に絡むリコール問題や小樽市民病院の建替計画により市政が大混乱するなど、病院問題は直ちに政治問題に発展する、極めて市民の関心が高く、デリケートな課題だと言えます。
 ちなみに、現在までに異なる市の市立病院を統合し、病院を新設した事例は、当院以外に「兵庫県小野市・三木市の北播磨総合医療センター」、「愛知県東海市・知多市の公立西知多総合病院」の2箇所です。同じ県内の県立病院同士の統合や同じ市域内の県立と市立、市立とJA病院などの統合例はありますが、市境を越えての統合・新設例は、まだまだ少ないのが実態です。
 市立病院の統合が進まない原因を当院の例から3つ挙げると、第1に「市民感情」、第2が「費用(負担割合)」、第3が「建設場所」です。それ以外にも、医師を派遣する大学医局との調整や病院職員の意識のずれなど、多くの課題が存在しますが、やはり統合を決定する際の最も大きな課題は、先に挙げた3点だと考えます。当院は、幸いにして市長、議会の揺るがない決意と市民理解、さらには医療関係者の懸命な努力により、無事、開院に漕ぎ着けたわけですが、そのハードルは極めて高かったというのが率直な感想です。
 統合前後の約10年間の記憶は言い尽くせないものがありますが、今回は統合経過ではなく、その先の「統合の効果」について検証してみたいと思います。
 「統合の効果」を測定するポイントを、次の3つに絞ってみました。いずれも病院運営や医療の質を測る上で最重視しなければならない項目です。
 1 診療体制(医師数)
 2 医療の質(救急医療)
 3 病院経営(収支)

 平成29年4月の常勤医師数(研修医含む)は、開院前年の平成24年度の80人体制と比べ42人も増加しています。この数字の持つ意味は、病院関係者ならお解りいただけると思いますが、中規模病院が成り立つくらいの驚くべき数字であり、統合の効果絶大といわざるを得ません。統合を機に名古屋大学、浜松医科大学をはじめとする大学医局の強力なご支援を得ることができたことのほか、研修病院としての魅力が大幅に向上したこと。また、当院の診療実績が高く評価され、県内出身医師のUターン先として認識されたことなど、明らかな「統合効果」が表れたものと受け止めています。
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 また、職員数は全体で1,000人を超え、雇用の場と150億を超える収益を上げる事業所としての存在感も日々大きなものになっています。

 次に、医療の質について検証してみます。
 元浜松医科大学の寺尾学長が、掛川市生涯学習センターでのシンポジウムで「医療の質は、救急の質と言っても過言ではない。急性心筋梗塞60分以内、脳卒中については90分以内に治療可能な体制があるかどうか。そこが都会と地方の差。つまり医療の質の差と言える。」と述べています。
 ここでは、医療の質を救急医療と読み替えて、統合がどのような変化をもたらしたかについて検証します。
 旧両病院には救急科は存在せず、休日・夜間の日当直は2人の医師(内科系・外科系)が担当していました。当然、救急が混み合う時はマンパワー不足で救急要請を断らざるを得ず、結果、磐田や菊川、場合によっては浜松に搬送されるケースがありました。しかしながら現在、日当直医は研修医を含めた7~8名体制とし、24時間365日、原則「断らない救急」を実践しています。平成28年8月には救命救急センターの指定も受け、現在も一刻を争う急性心筋梗塞や脳卒中など中東遠全域からの搬送患者に迅速に対応しています。
 救急搬送患者の受け入れ数は県内3番目に多く、緊急を要する命に日々向き合っています。市民の安全・安心な暮らしにどれほど大きな影響をもたらしたかは言うまでもなく、まさに、お金には代えられない「統合効果」だと言えます。
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 最後に、病院の経営状態を表す収支について検証します。
 統合により、病院の経営は患者数の伸びと密度の高い診療による単価向上により、医業収益は着実に向上しています。平成28年度収支は若干の赤字ではありましたが、概ね収支均衡となりました。統合によるスケールメリットと中東遠圏域における適切な機能分担が大きく寄与したものと言えます。この他にも、医師をはじめとするスタッフの充実と開業医からの紹介患者の増加も収益増の要因ではありますが、戦略的な経営と地道な支出削減も見逃せません。
 ベッド一床当たり、職員一人当たりの収益率は県内でもトップクラスと、効率的な運営を実現し、200億円を超える初期投資が影響する開院直後の厳しい状況下としては、十分な「統合効果」が表れています。
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統合は本当に効果があるのか?

 話を戻しますが、視察される方が聞きたい核心部分、「病院統合は成功したのか?」「効果はあるのか?」の答えです。
 既にお察しのことと思われますが、現時点では「病院統合は想定以上の大きな効果をもたらし、間違いなく成功である。」と言えるのではないでしょうか。
 全国初の先駆けプロジェクトとして明確な効果を示せたことは、少々、大袈裟ですが、今後、日本における地域医療と病院のあり方に大きな一石を投じたものと考えています。
 ただし、この成果は市民の皆様、近隣病院、地元医師会をはじめとする多くの皆様の絶大なるご理解とご協力の賜です。引き続き、宮地企業長兼院長を先頭に、職員一丸となって地域医療に貢献し、さらなる成果につなげていけるよう取り組んでいくことが使命だと考えます。

おわりに

 これまで開院後の病院運営における成果を強調してきましたが、この度のプロジェクトで成し遂げられた最も大きな成果は、やはり、市民への安全・安心な医療提供体制が確保できたことに尽きると思います。紹介状をお持ちくださいとか、待ち時間が長いなど、まだまだ多くのご不便をお掛けしていることと思いますが、万が一の緊急時に適切な医療が受けられる環境は、本当に貴重だとの声が多く寄せられています。
 医師をはじめ看護師、また、玄関のボランティアさんから清掃に至るすべてのスタッフが、精一杯、皆様と向き合っています。
 掛川市、袋井市の市民皆様が、今後も中東遠総合医療センターを温かく育んでいくことが、とても大切な事だと思います。引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。



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