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第703回 たった一度の人生 楽しんでいますか?

2017年12月15日更新

掛川市健康福祉部参事兼健康統括官 岩附美恵子

今年は、多くの人達とのお別れがありました。若い方もあれば高齢者もあり、人生の長さはいろいろでした。そして、急なお別れもあれば、長い介護期間を経てのお別れもありました。そんなお別れをした人たちの最期もさまざまでした。最期まで、回復を信じリハビリに励んでいた人もあれば、がんの末期で心臓に水が貯まり、「苦しい、苦しい」と言って、最期は「早く死にたい」とまでこぼしていた人もいました。そのような中、Aさんは他の人と違っていたように思います。亡くなる少し前に、これまでの人生を振り返って「楽しかったね。」と家族に話されていたそうです。そして、間もなく亡くなられました。このAさんのことを知って、私も「そんな人生の終わり方をしたい」と思うようになりました。一方、私がこれまで取り組んできたことは正しかったのかも考えるようになりました。

私は、これまで市民の皆さんの健康づくりや病気の早期発見・重症化予防などの健康面からお手伝いをさせていただいてきました。「病気にならないように、悪化しないように」というように「病気」に視点をあてた対応だったように思います。しかし、Aさんのことをお聞きし、人生の最期を見据えて、今の自分が何をすべきかを考え、取り組むことも大事だと思うようになりました。病気にならないために努力することも必要ですが、人生の最期をより良く迎えるための人生も必要じゃないかとも思います。そして、人生を楽しむことが、最期の幸福感に繋がるのかなあと感じます。そこで考えるのは、人生を楽しむためにはどうしたら良いかということです。健康であってこそ、美味しいものを食べたり、旅行に出かけたりと、人生が楽しめます。よく「病気になって、健康のありがたさがわかった」と言う声をお聞きます。病気になると、入院したり、手術を受けたり、注射や服薬が必要になったり、好きなものが食べられなくなったり、自分らしい生活の維持が難しくなります。やはり、人生を楽しく、後悔のない、納得のいく人生を送るには、与えていただいた心や身体を大切にし、今以上に磨きをかけた生活を送ることを大事にして欲しいと思います。そして、皆さんには、楽しみながら健康づくりに取り組んでもらいたいと思います。健康づくりは、「やって楽しい」「またやってみたい」と思うことに取り組めば長続きしますし、これなら自分が取り組めると思えることを選ぶことで、無理なく行えます。

現在、掛川市では健康寿命の延伸を図るため、かけがわ「生涯お達者市民」推進プロジェクトに取り組んでいます。子どもから高齢者まで、生涯にわたり、健康で生きがいをもち、自立して生活が送れるよう、食生活、運動、社会参加の3つを中心に、関係団体と協働し、市民総ぐるみで「生涯お達者市民が大勢いるまち」を目指して取り組んでいます。このプロジェクトでは、昨年「私の健康人生設計ノート」を作成しました。このノートは、「健康設計編」と「エンディング編」の2部構成のユニークな掛川版のエンディングノートです。是非、このノートを活用していただき、ご自分自身の最期を念頭にいれた健康人生設計を立てていただき、健康で楽しく、豊かな生活を送っていただきたいと思います。

私の健康人生設計ノートの表紙と裏表紙を開いて写している

また、このプロジェクトの現状分析から、掛川市は脳梗塞などの脳血管疾患で亡くなる人が多いということがわかりました。脳血管疾患は、生命が助かっても片麻痺や言語障害などの後遺症が残ることの多い病です。回復される方もありますが、要介護生活を送っている方も多いです。そして、脳血管疾患は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が重症化しておこりますので、もともとは生活習慣が起因しています。是非、皆様には食生活や運動・睡眠・休養などの生活習慣を見直し、健康づくりに取り組んで欲しいと思います。その際は、楽しく取り組めると良いですね。プロジェクトでは、運動に取り組む人を増やすために、ウォーキングをすすめています。今年6月には、市と包括連携協定を締結しているユニ・チャーム株式会社と共催による「ソーシャル・ウォーキング講座」を開催し、3歳から82歳までの100名の方が参加していただきました。参加者は、講演会と脳トレウォーキング・スタイルアップコアウォーキングコースに分かれて講習やクイズなどを楽しみながらウォーキングをされていました。ソーシャル・ウォーキングは、買い物や散歩、名所めぐり、見守りウォーキングなど、生活の中で気軽に、楽しく取り組めるものです。人と楽しく交流を持ちながら、身体活動を高めるにはとても良いウォーキングだと思います。是非、挑戦してみてください。

 

そういう私はどうかといいますと、これまで体操やウォーキング、ジョギングなど、健康に良いと思えるようなことにいろいろと挑戦してきましたが、長続きはしませんでした。「健康のためにやらなきゃ」という気持ちが強かったと思います。健康を目的に取り組んでも楽しくなかったです。

ところが最近、私は農作業に目覚め、楽しんでいます。農作業と言っても稲作です。初心者もいいところですが…。初めは「やらなくちゃいけない」という思いで農作業をし、苦痛でたまりませんでしたが、今年になってからは、農作業が仕事を忘れさせてくれるし、日を浴び身体を動かすと、良く眠れ、とても気持ちがいいことだと思うようになりました。ただ、時には田植えで足をとられ転倒して泥まみれになったり、あぜ道でバランスを崩して田んぼに落ちたり、稲刈りで手を切ったり、腰痛が続いたりと大変な思いもしています。しかし、それがまた楽しいです。また、田植えが終わった時や稲刈りをしてお米になった時の達成感は何とも言えません。農作業を健康づくりと言ったら大変失礼かもしれませんが、日頃身体を動かしていない私にとっては、良い健康づくりであり、楽しみでもあります。さらに、農作業は、男女の腕力の差が明らかにわかり、夫には勝てません。また、農作業は従事してきた経験によるところも大きく、母には頭が上がりません。家族の支えなしにはできない仕事で、それも私には大事な時間だと思っています。
今の私には、農作業が心と身体の健康づくりになっています。

コンバインで稲刈りをしている図、稲を踏んだり、うまく回れなかったり、コンバインは難しい。

トタクターを運転している図、トラクターに使われている感じ、まだまだ

男性が草刈機を使っている図、今年は草刈り機デビュー

手ばかり栄養法(野菜)の図、野菜は350ぐらむが目安。緑黄色野菜は両手一杯、その他の野菜は両手2杯。

食生活の面では、血糖値が気になり始めた5年くらい前から、野菜摂取量を増やすために野菜から食べるようにしています。掛川市では摂取量をわかりやすくお伝えするために、手ばかり栄養法をすすめています。市がすすめている野菜の量は、意識しないとなかなか難しいですが、減塩対策も含めて引き続き身体に優しい生活が送れるよう頑張りたいと思います。
たった一度の人生です。私は、自分自身に「楽しんでるかね?」と、常に問いかけていたいなあと思います。そして、自分の生涯を振り返ったときに、「楽しく、幸せな人生だった。」と言えたら素敵だなあと思います。

 

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