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第720回 ~ 脳の強化書Part2~

2018年3月30日更新

掛川市健康長寿課長 久野文義

今回は、前回の「脳の強化書」に続き、パート2として、脳の力がグンとアップする「脳番地」という考え方やその脳番地の具体的なトレーニング方法について触れてみたいと思います。
脳には1,000億個を超える神経細胞が存在するのですが、このうち、同じような働きをする細胞同士が集まり、脳細胞集団を構成しています。
また、この細胞集団は、それぞれの働きによって脳内に「基地」を持っています。思考に関わる細胞集団はA地点、記憶に関わる細胞集団はB地点、運動に関わる細胞集団はC地点といった具合です。私たちが何か行動を起こすときには、多くの場合、この脳細胞集団が複数で連携して働いているということであります。
そして、この細胞集団と、その細胞集団がよりどころとしている基地のことを、医学博士で株式会社「脳の学校」代表の加藤俊徳先生は、「脳番地」と名付けております。
分かり易く言えば、場所によって働きが異なる脳を1枚の地図に見立て、その働きごとに「番地」を割り振ったということです。その結果、脳全体を左脳・右脳それぞれ60ずつ、合計120の脳番地に分けることができたということであります。
脳の神経細胞は、他の細胞と同じように年々減っていき、年齢を重ねるごとに老化していきます。しかし、この神経細胞は複数の脳番地をネットワークでつなぎ、そのネットワークは年々成長していくことが分かりました。たとえ老化によって細胞が減っても、脳番地の連携が進めば、神経細胞同士の繋がりが強くなるため、脳の機能は強化されていくということであります。

脳には、全部で120の脳番地が存在するということですが、この120の脳番地を機能別にくくると、以下の8系統に分けられます。

  1. 思考系脳番地:人が何かを考えるときに深く関係する脳番地
  2. 感情系脳番地:喜怒哀楽などの感情を表現する脳番地
  3. 伝達系脳番地:コミュニケーションなど意思疎通を行う脳番地
  4. 理解系脳番地:与えられた情報を理解し将来に役立てる脳番地
  5. 運動系脳番地:体を動かすこと全般に関係する脳番地
  6. 聴覚系脳番地:耳で聞いたことを脳に集積させる脳番地
  7. 視覚系脳番地:目で見たことを脳に集積させる脳番地
  8. 記憶系脳番地:情報を蓄積させ、その情報を使いこなす脳番地

この8系統の中で、他の脳番地に最も大きな影響を与えるのが思考系脳番地と感情系脳番地であります。
特に感情系脳番地は、脳の前頭葉に位置し、かつ海馬を含めた記憶系脳番地のすぐ前にあることから、その人の人柄を決定づける重要な役割を担っています。
前頭葉は、目的や意思に基づいて指示を出す部分なので、感情系脳番地をうまく使いこなせば、深く考えたり、自分にとって必要ないと判断した情報をシャットアウトすることができます。
一方、海馬は人間の記憶に深く関わっているため、喜怒哀楽の感情をあらわにすると、記憶にダイレクトに影響します。「映画を観て感動した。」あるいは「失礼な対応に強い怒りを感じた。」など、感情を大きく揺さぶられた出来事ほど記憶に残るのはそのためだと思います。

それでは、これら8系統の脳番地のうち、他の脳番地に最も大きな影響を与える思考系脳番地と感情系脳番地を強くするトレーニングをいくつか紹介します。
先ずは、脳全体の司令塔である思考系脳番地を強くするトレーニングですが、一つ目は、朝、出かける前に「1日の目標を20文字以内でつくる」ことです。
これは、その日の目標を立てるときには、1日のスケジュールを把握したうえで、どの予定を重視すべきか、そして、その予定をどう進めるかについて思いを巡らせますが、この一連のシミュレーション作業が思考系脳番地を活性化させるということであります。また、20文字という制約が課されると内容を端的に表現するために適切な言葉を選ぼうとします。この言葉の吟味もまた、思考系脳番地を働かせることになるということです。
なお、このトレーニングは、朝行いますので効果を上げるには、きちんと睡眠を取っておくことが必要です。
ただ、朝の忙しい時間帯に、そんな目標を20文字以内で考える暇はないと言う方も多々あろうかと思いますが。

二つ目は、「身近な人の長所を3つ挙げる」ことです。
このトレーニングは、相手の人となりについて深く考えられるだけでなく、相手の評価を見直すことで、自分の思考を転換できるという特徴があります。
日頃、人と接していて、イライラしてしまうことは避けられません。しかし、思考転換の技術さえ身につけておけば、感情に流されてしまう事態を最小限に抑えることができます。また、このトレーニングでは「3」という数字が重要なポイントになっています。あらかじめ、数字が決められていると、普段印象が悪い人に対しては、無理にでも3つの長所を探そうとします。例えば「あの人は失言が多いことで嫌われているけど、仕事は最後まで責任を持ってやるし、服装に清潔感がある。それに映画の話題になると話が弾むよね。」という具合に。
このように、無理に探し出そうとする試みが、思考力を鍛えることにつながるということです。
ただ、あまり好きではない人の長所を3つ探すのは、相当難しいと思います…嫌なところは沢山思いつくんですがね。

その他にも、「ゲームでわざと負ける」ことや「自分の意見に対する反論を考えてみる」ことなどのトレーニングも思考系脳番地を強くするとのことであります。

次に、感情系脳番地を強くするトレーニングですが、一つ目は、「大好きなものを10日間断つ」ことであります。
このトレーニングのポイントは、誘惑に打ち勝つことだけでなく、感情系脳番地にちょっとした負荷を与えることです。すなわち、それまで無条件に得られていた楽しい感情を少しだけ制御することに意味があるということです。
喫煙や飲酒の習慣がない人は、コーヒーや甘いものなど依存性のある嗜好品を断つことでも同様の効果が得られるということであります。コーヒーも甘いものも過度に摂取すると健康面に悪影響を及ぼしますから、止めること自体は、体にとっていいことかもしれません。
ただし、毎日の疲れを癒やし、かつ至福のひとときである晩酌を10日間も断つことは、逆に過度のストレスが溜まるのではないかと私は思いますが?
と言うことで、こちらは程ほどに実行しましょう。

二つ目は、「植物に話しかけてみる」ことです。
植物に話しかけることは感情系脳番地を大いに刺激してくれるということであります。なぜなら、話しかけること自体が、感情表現になっているからです。
また、このトレーニングには、もうひとつ自分の気持ちが穏やかになるという効果もあります。
例えば、仕事が終わって帰宅した直後は、脳が興奮し感情が高ぶっている状態です。この状態で植物に語りかけると、興奮していた脳がクールダウンされるということであります。
ちなみに、話しかける対象は、犬や猫などのペットや水槽の熱帯魚でも構いません。言葉が通じないという前提は植物も動物も変わりませんが、動物は何らかの反応を返してくれるので、植物よりも以心伝心のコミュニケーションが取りやすいと思います。
ただし、家族などの人が見ている前で、植物や動物に過度に話しかけることは、今後、家族のあなたへの接し方が変わる可能性もありますので、十分留意していただきたいと思います。
その他にも、「出かける前に何があっても怒らないと唱える」ことや「ほめノートをつくる」ことなどのトレーニングも感情系脳番地を強くするとのことであります。

次回、機会がありましたら、勝負に強い脳をつくることや残りの脳番地の具体的なトレーニング方法などについて触れてみたいと思います。

参考

100歳を超える元気なおばあちゃんから学ぶ健康長寿7つの秘訣

〈脳〉

  1. 麻雀などのゲームを行うこと。
  2. 社交的な生活を送ること。

〈血管〉

  1. 外出はまめに毎日すること。
  2. 身体を清潔に保つこと。

〈腸内フローラ〉

  1. 様々な食材を食べること。
  2. よく噛んで食べること。
  3. 毎日規則正しい生活を送ること。

超健康長寿者103歳のおばあちゃんのアドバイス

食べ物もあるかもしれないけど、趣味を持って1日1日を楽しく過ごすと長生きできる。だから、何か趣味を持ってください。お金のかからない趣味を。
とのことです。さすがに、説得力がありますね。
そして、毎日、掛川茶を飲むことをプラスしていただければ完璧だと思います!

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