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掛川市の希少野生動植物の現状

2025年1月9日更新

1 はじめに

 掛川市では、令和3年度から令和5年度までの3年間をかけて、市内の希少野生動植物分布状況調査を行いました。その結果を受けて、掛川市の希少野生動植物の現状などをまとめました。
 これを周知することにより、市民や事業者の環境や生物多様性への関心を高め、生物多様性に配慮した社会を目指していきます。

2 調査概要

名称:令和3~5年度自然環境調査事業 掛川市希少野生動植物分布状況調査
調査期間:令和3年度~令和5年度
調査対象地:掛川市全域
調査対象種:環境省レッドリスト2020・静岡県レッドリスト2020における「絶滅危惧ⅠA類」「絶滅危惧ⅠB類」「絶滅危惧Ⅱ類」のカテゴリーに該当する種(絶滅危惧種)、掛川市自然環境の保全に関する条例により指定された種、その他調査が必要と考えられる種

3 確認した希少野生動植物数

分 類

確認種類数

絶滅危惧種数

確認地点数が増加した種数

確認地点数が減少した種数

植 物

44

25

8

7

鳥 類

28

19

10

淡水魚類

8

6

2

3

両生類

7

1

0

2

菌 類

1

1

爬虫類

1

0

哺乳類

5

0

昆虫類

5

0

0

2

陸淡水産貝類

1

1

合計

100

53

15

24

  

4 増減が大きい個体

(1)地点数・個体数が大きく減少した種(地点数)

キキョウ(11→4)

キキョウ.png

 

サシバ(12→4)

サシバ.png

 

オオタカ(10→2)

オオタカ.png

 

ホトケドジョウ(12→5)

ホトケドジョウ.png

 

メダカ(48→32)

メダカ.png

 

二ホンアカガエル(17→7)

ニホンアカガエル.png

 

トノサマガエル(53→12)

トノサマガエル.png

 

カケガワフキバッタ(5→3)

カケガワフキバッタ.png

(2) 地点数・個体数が増加した種(地点数)

 

トラノオスズカケ(4→33)

トラノオスズカケ.png

 

クマガイソウ(4→29)

クマガイソウ.png

 

ナギラン(2→18)

ナギラン.png

 

ハルザキヤツシロラン(1→12)

ハルザキヤツシロラン.png

 

サンショウクイ(4→21)

サンショウクイ.png

 

コシアカツバメ(2→18)

コシアカツバメ.png

 

キンラン(8→23)

キンラン.png

5 確認種数の増減の原因

開発行為による耕地・緑地の減少

  住宅や工場、道路などの開発行為による森林伐採により、森林に生息する動植物への悪影響が認められました。また、水田の圃場整備や河川改修、海岸への防潮堤建設等により、水田や塩生湿地に生息する動植物が減少しました。

開発行為による森林伐採.png

開発行為による森林伐採
 

圃場整備.png

圃場整備

外来生物の増加、生息域の拡大

特定外来生物のヌートリア、ガビチョウ、オオクチバス、ブルーギル、条件付特定外来生物のミシシッピーアカミミガメなどの外来種の生息域拡大により、一部在来種の確認数が減少しました。

オオクチバス.png

オオクチバス

ミシシッピーアカミミガメ.png

ミシシッピーアカミミガメ

ブルーギル.png

ブルーギル

ガビチョウ.png

ガビチョウ

管理不足や耕作放棄地の増加による里地里山の荒廃

農業人口の減少や高齢化に伴う耕作放棄に伴う水路の崩壊や、草刈りが行われない茶草場の増加により、一部動植物の生息地が大きく減少しました。

耕作・管理放棄による変化(水田)

耕作放棄地2007.png

2007年 

 

耕作放棄地2021.png

2021

 

茶草場の管理放棄による遷移の進行

茶草場2013.png

2013

 

茶草場2024.png

2024年

森林の人工林化と手入れ不足の森林の増加による水源涵養機能・土砂災害防止機能の低下

面積当たりの植栽密度が高い人工林において、間伐などの管理が適切にされていないため林床に光が入らず、生物多様性がさらに低下し、一部植物の生息地が減少しました。

このような林は、土砂災害防止機能も低いため、土砂崩れやそれに伴う河川への土砂流出により河川の石の間に生息する生物の生息場所も減少しました。

一方、手入れがされず枝葉が堆積した暗い森の平坦地では、ハルザキヤツシロランなどの腐朽菌と共生する菌従属性植物の生育地が増加しました。

    林床植物のないスギ林.png

林床植物のないスギ林

土砂崩れ.png

 土砂崩れ

土砂が堆積したアカザ生息地.png

土砂が堆積したアカザ生息地

野外レクリエーションの変化とその影響

近年の野外レジャー人口の増加に伴い、猛禽類が繁殖期に利用する営巣域に人が立ち入ることが多くなりました。その結果、クマタカやサシバの繁殖が確認できる営巣地が減少したと考えられます。ハイキング.png 

ハイキングとトレラン人口の増加

野生動物の増加による影響

近年、掛川市で生息域と個体数が著しく増加しているイノシシや二ホンジカによる、生育地の掘り起こしや食害によりクマガイソウやシュスランの生息地が減少しました。

食害目.png

食害前

 

食害後.png

食害後

6 掛川市の生物多様性を守るために

(1)生物多様性とは

生物多様性は単に生き物がたくさんいるということではなく、様々な環境の中に様々な生き物がいて、それらがつながり、バランスが保たれていることで、私たちのいのちや暮らしが支えられていることをいいます。

 

生態系1.png        生態系2.png

 

(2)生物多様性を守るには

 掛川市における生物多様性を守るためには、自然環境の適切な管理に加え、市民ひとりひとりが生物多様性に関する高い意識を持つことが重要です。生物多様性とは何かを理解し、掛川市の自然環境に関する現状を知ることが、生物多様性を守る第一歩となります。
 実際に、バードウォッチング、自然観察会などをとおして自然とふれあうことが、生物多様性をより深く理解するきっかけとなります。いま一度、身の回りの自然環境に目を向け、生物多様性を守るために私たちにできることを考えてみましょう。

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