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第418回 生涯学習でいい地域を作ろう

2013年4月12日更新

掛川市会計管理者 水野 雅文

生涯学習都市宣言はブランドであり財産

平成24年2月6日の掛川商工会議所青年部が招きました佐賀県武雄市の樋渡市長の講演をお聴きしました。樋渡市長は、日本で初めて市のホームページをフェイスブックにしたり、市立図書館の指定管理者にツタヤを選ぶなど有名な方であります。講演の中で、一番最初に行うことが話題になる、価値があるとの趣旨のことを話されました。そして掛川市が日本で最初に生涯学習都市宣言をした都市であることを知っておられました。
このことは何か日本で最初に行うと、その種の話になれば必ずその都市の名前が出るということでしょう。この度、掛川市は自治基本条例を制定しましたが、常にこの条例の先頭を切った北海道ニセコ町が枕詞のように紹介されます。私たち職員が視察者に対し、「掛川市は生涯学習宣言都市です。」と大手を振って言えるのは、昭和54年に日本で最初に生涯学習都市宣言をしたという財産を持っているからです。

掛川市の生涯学習の特徴

榛村元市長からは、人づくり即生涯学習、まちづくり即生涯学習とよく聞きました。生涯学習は一生涯学び続けるということですが、特徴は「地域学(掛川学事始)」でした。まず我がまちを知ろう、我が地域を知ろう。そして新お国自慢づくりをしよう。志と施策をもって体系的にまちづくりをしよう。地域と両親は尊敬に値する地域と両親になろう。ということで個人の学習がまちづくりに結合したのです。それから市民が満場総立ち的に協力し合い18項目のテーマとプロジェクトを推進したのでした。
振り返れば40年ほど前は、はっきり言って静岡、浜松の谷間であって見劣りのする都市でした。多くの人たちが頑張っていただいたおかげで、また高度成長期をうまくとらえ、今日の掛川市を築きました。新幹線駅しかり、東名インターチェンジしかり、天守閣しかり、エコポリスしかりであります。生涯学習まちづくりによって、花が開いたと思います。

国の生涯学習のとらえ方

平成18年に、教育基本法が改正され、その第3条に生涯学習の理念が規定されました。「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。」との文言は、生涯学習の成果を地域参画・社会貢献につなげていくとした掛川市の取組(昭和54年から始めた)がいかに先進的であったかと思えるのです。
文部科学省第6期中央教育審議会教育振興計画部会では、産業空洞化、生産年齢人口減少など深刻な危機的な状況ととらえて、「自立・協働・創造に向けた一人一人の主体的な学び」が今まさに我が国に求められているとしています。この「自立・協働・創造」が目指すべき生涯学習社会(注を参照)であると打ち出しました。(平成24年8月24日) また、同審議会生涯学習分科会では実践的学習機会によって、地域住民が他の地域住民や関係者・関係団体との交流やつながりを持つことになるので、社会関係資本(信頼・互酬性の規範性(お互い様と言われるもの)・ネットワークが醸成されていくと述べております。

掛川市民全員の生涯学習の更なる深化を目指す

掛川市では、以前から生涯学習を推進してきたので、おなじみの言葉になってはきたものの、新鮮みに欠けるようになりました。しかし、上記のとおり、今、文部科学省でも改めて生涯学習の価値を再認識する動きがでてきました。そして東日本大震災を経験し、「絆」が本当に大切だと身にしみましたが、この「絆」は「社会関係資本」を強くするものが、生涯学習にあるのだということです。
中学校区学園化構想は、地域の教育力を学校に、地域の子どもたちは地域で育てるとして、平成25年度から全中学校区で展開されます。みんなで地域を学び、考える、また、地域行事に参加する取組は、まさに生涯学習であります。生涯学習の新鮮なスタイルの取組として中学校区学園化構想が推進されればと思います。
中学校区学園化構想の推進に限らず、掛川市が全国に誇る生涯学習宣言都市のブランド、価値を今後も維持するためにも、多くの市民のなお一層の自発的な一生涯の学びの深化を期待することを止みません。

注:教育振興計画部会の第2期教育振興計画について(審議経過報告)では、「今後も進展が予想される少子高齢化を踏まえれば、一人一人が生涯にわたって能動的に学び続け、必要とする様々な力を養い、その成果を社会に生かしていくことが可能な生涯学習社会を目指していくことが必要である。これこそが、我が国が直面する危機を回避させるものである。」としております。
ここで言っている生涯学習社会とは次のことです。

  1. 自立・・・一人一人が多様な個性・能力を伸ばし、充実した人生を主体的に切り開いていくことのできる生涯学習社会
  2. 協働・・・個人や社会の多様性を尊重し、それぞれの強みを活かして、ともに支え合い、高め合い、社会に参加することのできる生涯学習社会
  3. 創造・・・自立・協働を通じて更なる新たな価値を創造していくことのできる生涯学習社会