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第583回 南アルプスとリニア中央新幹線 その2

2016年1月15日更新

掛川市都市政策課長 林和範

一昨年は、リニア中央新幹線の残土捨て場として、「問題あり」といわれた扇沢を確認してきたところですが、昨年に入ってJR東海は燕沢に集約したいとの方向性を発表しました。このため、今回はその燕沢というところをこの目で確認することにしました。

燕沢という残土捨て場候補地は、南アルプスの登山基地である椹島と二軒小屋のほぼ中間地点にあり、候補地は燕沢そのものではなく、大井川と燕沢の合流地点付近の大井川の河原で、左岸側に付けられた道路と川の間に挟まれた南北に長い土地が候補地となっています。東の山から流れ落ちる燕沢より南側は、南北300メートル、東西100メートルほどの土地で「つばくろ散策道」の看板があり、以前リニアとは関係なく散策したことがありましたが、その時の印象は特に残っていません。残土を置く予定の平地は。道路よりかなり下がったところにあるため、かなりの量の土が入りそうです。国土地理院の地図では、川が河原の東側の道路に近いところを流れているので、川筋が右岸側に変わり以前の川底が平地になったのだと思います。ただ、燕沢自体が崩壊地を抱えており(写真1)、地図には橋が記載されていますが、沢から大井川へ流れ出している土砂(写真2)により、橋は埋まってしまったようでした。これだけ土砂の流出量があると、わざわざリニアの残土を捨てなくても、いずれは流れ出す土砂で埋まってしまうのではないかと思われました。また、燕沢よりも北側は、南側よりさらに広くて南北500メートル以上はありそうです。ただ、道路との高低差が南側より少ないので、ここに残土を置くとなるとかなり高く積まなくてはなりません。新聞では、50メートルと書かれていましたが、それだけの盛り土をした場合、果たして自然環境や景観の問題が起きないのかという素朴な疑問を持ちました。大井川には、燕沢だけではなく少し上流の上千枚沢をはじめ、燕沢下流の沢、対岸の沢など崩壊地を抱えた沢が多く、土砂の流出は大変な量になると考えられます。そこにリニアのトンネルから出た土砂量を上乗せすると、どのような結果になるのか想像がつきません。


沢山の土砂の周りに森林が植わっている写真
写真1:稜線のすぐ下が崩壊地


沢山の土砂が高く積まれている写真
写真2:沢から大井川へ流れ出している土砂

 

今回は、ちょうど紅葉のはじまりに訪れたため、山に登らなくても美しい南アルプスを楽しむことが出来ました(写真3)が、この自然をいつまでも残してもらいたいし、絶対に残さなくてはいけないものだと思いました。


青空と紅葉が緑から段々、黄色や赤へと移り変り始めている写真
写真3:西俣の紅葉

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