茶草場農法とは?
茶草場農法とは、茶園周辺で刈り取ったススキやササなどを、茶畑に有機肥料として投入する農法です。
この投入する草を刈り取る採草地を「茶草場」と言います。
かつては日本各地で見られたこの農法ですが、時代の変化にともない、現在では静岡県など、ごく一部のみで続けられています。
刈り干ししている茶草(かっぽし)
茶草を投入した茶畑
茶草場農法の流れ
1.草を刈る
2.乾燥させる
3.細断する
4.茶畑の畝に敷く
茶草場農法で「高品質なお茶づくり」
茶草場農法を実践することで、以下の効果が得られます。
①土壌の保湿・保温
②雑草の抑制
③大雨時の流出防止
④敷いた茶草が、分解されやがて堆肥になる
これらが良い土をつくり、高品質なお茶をつくります。
茶草場農法が「貴重な生物を守る」
茶草場には、絶滅危惧種や固定種を含めた、300種以上の動植物が生息しています。
茶草場は茶農家が方々が茶生産のために管理しているため、河川などの草地とは違い、年1回、晩秋~冬にかけて草を刈り、運び出します。
①人の手が入ることで、草地が藪や森になることなく維持される
②植物が種を落とした後である秋冬に刈ることで、来春にまた芽を出すことができる
③草を刈り、運びだすことで、生存競争の弱い背丈の低い植物にまで日光が当たる
茶農家の方々が草地を管理することで、草地でしか生きることができない動植物が守られているのです。
カケガワフキバッタ(固有種)
フジタイゲキ(絶滅危惧種)
キキョウ(絶滅危惧種)
カワラナデシコ(絶滅危惧種)
かつて日本では、草を肥料や屋根として活用していましたが、生活の変化により使われなくなり、約100年前に国土の13%を占めていた草地は今や1%未満となっています。
そのような中、草地を維持している「静岡の茶草場農法」は次世代に残すべき貴重な農法です。
世界に注目される茶草場農法
茶草場農法は、良いお茶をつくりたいという茶農家の方々の努力により、本来ならば自然を破壊し得る経済活動(農業)と生物多様性が同じ方向を向いて両立させており、それが世界的にも希少な事例として評価を受け、2015年に世界農業遺産に認定されました。
また、SDGsの「陸の豊かさを守ろう」を初めとした17の目標の達成に大きく貢献しています。
SDGsに通ずる伝統的な知恵や技術が息づいた、よりよい未来を創造する農業モデルの1つとして注目され、茶草場農法を学ぶため、国内外から多くの方が掛川市を訪れています。