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第610回 「自助、共助・互助、公助」

2016年7月8日更新

掛川市健康福祉部長 深谷 富彦

まちづくりや防災等で自助、共助・互助、公助という言葉を使う。
簡単にいえば
自助 自分で自分を助けること
共助・互助 家族、企業や地域コミュニティで共に助けあうこと
公助 行政による救助・支援のこと

特に防災面では、行政でいくら声掛けしてもやはり、限度はあり、「自分の命は自分で守る」を徹底させないといけない。災害は社会全体に影響を及ぼすことから、その影響を受ける個人や企業、地域や行政のそれぞれの役割を明確にし、お互いに補完し合う必要がある。

大規模な災害がおこると、「国や市が何とかしてくれる」と期待されがちであるが、公助にも限界がある。もちろん、自助にも、共助・互助にも限界はある。防災対策・災害対応では、まず自らがその生命や財産を守り、そこから大きな団体や組織により共助・公助に期待される役割を担っていくことになるのが基本だと思う。

これと同じことが地域福祉や健康づくりにもいえる。自助、共助・互助、公助を地域福祉や健康づくりにたとえてみると、
自助 自らの健康は自ら築く
共助・互助 介護保険などの社会保障サービス、住民組織のボランティア
公助 生活保護や虐待防止法などのセーフティネット

自助は、自分の力で住み慣れた地域で暮らすために、介護予防に取り組んだり、健康維持のために検診を受けたり、病気の恐れがある時には受診に行ったりして、自分で生活の課題を解決することである。

共助・互助は、家族、友人、クラブ活動仲間など、個人的に関係性を持つ人同士が助け合い、それぞれが抱える生活課題を、お互いに解決し合ったり、それらの活動を発展させ地域やNPOなどによるボランティア活動をしたり、制度化された相互扶助である社会保険制度、医療や年金、介護保険などといえる。

そして、公助は、自助、互助・共助でも支えることが出来ない問題に対して、最終的に対応する制度として生活困窮に対する生活保護や、虐待問題に対する虐待防止法などがセーフティネットとして担うこととなる。

自助、互助・共助、公助は、いずれも大切なことであるが、優先順位をつけるとすればやはり、防災と同様、最優先は「自助」であると思う。

健康で自分らしく暮らしていきたいという気持ちと、実際に健康管理を行い、自立して生活を送ることができるように、自分自身を大切にして尊厳を持ちながら生活を行うという心構えと行動が最も大切であり、中心はやはり「自助」となる。

そして「自助」を支えるのは「共助・互助」であるが、「自助」はあくまで自分だけの力となるので、防災と同様どうしても限界がある。

年をとって身体が思うように動かなくなっていく高齢期にはサポートが必要であり、時によっては、自身がサポートする側に回ることにもなり、役割を持ち続けられる人同士が支える「互助・共助」の社会が必要となる。

互助」で支え合うときに、支えてもらう側よりも、支える側の力のバランスが高いときは良いが、支えてもらう側の負担が増えすぎると、支える側がまいってしまい、「互助」の関係性が壊れてしまい、その場合には、やはり、第三者の介入が必要となる。

そこで、必要な時には自身の「権利」として利用ができる「共助」が登場し、「自助」を支え、「互助」の負担を減らし、バランスを整えることとなる。これがある意味、介護保険制度となるではないかと思う。

自助、共助・互助」で支えあっていても、どうしても解決が出来ない課題には、最終的に「公助」がセーフティネットとして対応する。貧困や家族関係の悪さや虐待などは第三者が介入しづらく、また、対応方法も難しい問題については、生命に危険を及ぼす恐れがあるため、公的な判断のもと支援を行う必要がある。

地域医療や介護でいわれる「地域包括ケアシステム(注)」は自助・互助・共助・公助の協働・コラボレーションであり、2025年に目指している「地域包括ケアシステムの構築」は、自助、共助・互助、公助が必要で、それぞれが深く関連しているといえる。

また、自助、共助・互助、公助は、それぞれが関係し合うことで、最大限の効果を発揮する。つまり、それぞれが独立するわけではなく、コラボレーションして働き合う関係性が必要となる。

自助、共助・互助、公助という考え方と、それぞれが関係性を持つ事の必要性を理解して、まずは、自分のことは自分で、一人一人行政には頼らない生活になれば、役所の仕事は減り、職員も少なくてすみ、行革も進む。

そして、なにより医療費、介護費といった社会保障費も少なくてすむ。これで老後の年金がしっかり確保されれば万々歳だ。健康で、生きがいをもって働き、できる限り「公」に頼ることにならないよう、できる限り長く税金を納めたいものだ。

地域包括ケアシステムとは
地域住民が住み慣れた地域で安心して尊厳あるその人らしい生活を継続することができるように、医療や介護などの公的サービスのみならず、地域活動やボランティアによるサービスなど多様な社会資本を本人が活用できるような地域の支援体制を構築することをいう。

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