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第682回 今年のお茶の海外戦略

2017年9月1日更新

掛川市環境経済部長 大石良治

昨年、この寸感に「国際交流とお茶の海外戦略」について、姉妹都市を中心した取組みを掲載させていただきました。
本年度は、「お茶の振興計画」が1年前倒しで改訂され、4月からスタートしました。この中で海外戦略についての目標を『海外輸出に対応する茶の流通』とし、具体的施策として「海外に向けた掛川茶の情報発信・ブランディング」と「輸出量の拡大に向けた商流の確立」と定め、具体的な取組みとして本年6月に米国で開催されましたWorld Tea Expo 2017への参加事業を行いました。
今回、このWorld Tea Expo 2017に当市のお茶振興課職員2人とJA掛川市から2人が出向きPR活動や商談などを行ってきましたので内容をお知らせしたいと思います。

まず、出展期間は、6月13日(火曜日)から15日(木曜日)の3日間、会場はラスベガスコンベンションセンターで行われました。総床面積は東京ドーム23個分の広さがあり、北館、南館から成り、今回は北館のメイン展示場でのイベント開催でありました。来場者は、世界中のバイヤーが主な参加者であり、展示期間3日間に延べ約2万人とバイヤー対象のTea Expoとしては世界最大規模であります。

ラスベガスコンベンションセンターの建物外観
ラスベガスコンベンションセンター

ワールドティーエキスポの会場の様子

 

今回の目的は、1つ目にWorld Tea Expo 2017での掛川茶のPR(深蒸し、世界農業遺産)、2つ目に米国人のお茶に関する消費傾向や味の好みなどの調査、3つ目に掛川市への招聘を予定するインフルエンサーとの顔合わせ(Victoria Bisogno氏)、4つ目に世界最大のコーヒーとお茶の業界専門誌「STIR」への特集記事を本年2月号と3月号に掲載をしていただいた、UK Tea Academyを開設したジョン・ペティグリュー氏に市内の茶商関係者への海外バイヤーからの問合せが増えていることなどをお伝えすることでありました。

それでは、この目的の中で主に「World Tea Expo2017掛川茶PRブース出展の状況や出展での参加者からの感想などについて報告された内容を中心にお知らせします。

今回設けたブースでは、市が市場調査をJA掛川市は、具体的な商談も含めた出展活動を行いました。また、日系企業からは、伊藤園・象印など、お茶だけなく容器、広告会社もブース出展し、世界のTea関連業界全てが対象であったようです。

今回の展示イベントは取扱商品を求めるバイヤーが主な対象で、どのような特徴があれば売りやすいのか、何が米国人の購買意欲を刺激するのかなど、販売側の視点からヒントを得る貴重な機会であったようです。世界農業遺産のPRの他、健康効能に関する説明を進めるやいなや聞く耳を変えるバイヤーが多数散見され、露店(例:GreenteaHP)でも栄養関連の広告を前面に押し出す傾向からも、米国人にとっていかに“Healthy”のインパクトが効果的との報告でありました。これは昨年、訪問した姉妹都市ユージン市やサンフランシスコでの反応と全く同じものでありました。

しかし、市場に出回る“Greentea”と称された商品はどれも本来の日本の緑茶とは程遠い甘い味で、誤った緑茶文化が蔓延している状況にあり、本物の味や緑茶の魅力を浸透させるにはそれなりの時間を要するとの感想でありました。米国人にとって馴染みのある味に近づけてしまうのが一番の近道ではあるようですが、この場合は生産者の利益を念頭に検討していくことが必要であり、スペシャルティーとしての認知度を向上させていくための効果的な情報発信を継続していくことが不可欠です。当初からの目的である「高品質緑茶」の販売戦略を生産者との話し合いを慎重に進め、一歩一歩着実に前に進めていかなければならないとあらためてこの報告から感じたところです。

また、米国をはじめ、世界で求められる有機(Organic)の間口が少ない掛川深蒸し茶であるため、今回の現地における反応や今後の取引状況などを生産側の課題(抹茶・有機茶の生産拡大、残留農薬など)解決に向け、各方面への情報共有、展開を促していく必要性についても、今回参加した職員自ら有機栽培に取り組んでおられる茶業組合、新たに取り組もうとしている生産者に直接お伝えしてまいりたいと思います。

掛川市の出展ブースに何種類かのお茶の葉が置かれている
当市の出展ブース

掛川市の出展ブースにお茶の葉と説明が書かれたパネルが置かれている

 

男性に資料を見せながら説明している様子
市場調査や茶草場農法の説明のようす

女性2人が説明を受けている様子

 

結びに

昨年も記載しましたが平成26年から国が進めています、「日本再興戦略」において、農業を新たな”成長エンジン”と位置づけ『攻めの農林水産業』として、規制緩和による農業経営の大規模化や機械化による効率化で国際競争力を強化し、輸出額の増加を目標に掲げていることからも明らかであります。

国内における「強い農業」では差別化された農産物の優位性を最大限に進め、また、海外では平成25年12月にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」が国際的な評価を得ることとなったため、この点も常に頭に描きながら、掛川の特産であるお茶においては、「世界農業遺産静岡の茶草場農法」をうまく活用するとともに、その他の農産物についても今後、国内外の姉妹都市を始め、関係する各自治体や各種団体と地産地消や互産互消を進めて行きたいと思います。

ただし、経済交流には、シビアなビジネス交渉やそれぞれの国の情勢や国際社会の動向に常に注視することが必要です。この点について考慮しながら、我々行政が可能なところ、組合・民間関係者や生産者の方々が担うところをしっかり見極め、「オール掛川」で経済交流を進めてまいりたいと思います。関係者の皆様、ご支援ご協力をお願いいたします。

追加で、

「掛川茶多言語PR用ウェブサイト公開についてお知らせします。」
掛川茶の多言語PR用ウェブサイトを一般公開しました。
下記のURLから5カ国(日本語・英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語)で発信していますのでご覧ください。

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