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第694回 掛川市の観光交流について

2017年11月3日更新

掛川市観光交流課参事 鈴木 勉

最近の観光状況についてご説明いたします。

先ずは、日本全体の訪日外国人の状況です。
昨年2016年の訪日外国人は2400万人を越えましたが、2400万人の内訳は、アジア全体から2043万人が訪れました。そのうち中国からは637万人・韓国からは509万人・台湾からは416万人で合計1562万人と訪日外国人全体の65%、アジア全体の76%を占めていますが、この中で静岡県に来訪した外国人の方は170万人くらい(7%)と推計されております。

訪問先は殆どが東京や大阪などの大都市圏に集中し地方へは僅かな人数しか来ていません。掛川市には合計で3万8千人位しか来ていないのが実状です。
170万人の内訳は中国からは113万5千人・台湾からは14万7千人・韓国からは4万5千人が訪れました。静岡県は中国人観光客に特化していると言って良いでしょう。
只、中国人の海外への旅行者数は1億2千万人以上と言われていますので、まだまだ中国からの増加が見込まれています。

次に、訪日外国人の消費傾向に関することです。
資料によると日本の定住人口1人当たりの年間消費額は約125万円と推計されています。そして訪日外国人旅行者が旅行中に消費する金額は1人当たり約15万円~16万円と推測していますが、この金額は訪日外国人旅行者8名分に等しく、国内宿泊旅行者25名分及び国内日帰り旅行者80名分に等しい数字です。
(注)定住人口1人=(イコール)訪日外国人8人=(イコール)国内旅行者25人=(イコール)日帰り旅行者80人
昨年の訪日外国人消費額は、15万円~16万円×(掛ける)2400万人=(イコール)約3.75兆円となります。
そして、目標とされる4000万人の消費総額は約6兆円と推計されます。
なお、近隣諸外国から訪日する方の渡航旅費が比較的安いため、現在は中低所得者でも訪日が可能になっています。滞在期間は短期となり既に中国人の爆買いと言われていた行動は収束しています。
そのため、消費額も以前に比べて低くなり、上記の平均値を下げる結果になっています。

一方、欧米・オセアニア等から訪日する方は元々渡航費用が高額になるため、比較的高所得者が多く、高額を使って来日しますので滞在も長期にわたり、国内消費額も必然的に高くなります。
特に2019年に開催するラグビーワールドカップは、試合と試合の間隔が1週間くらい空きますので、試合観戦者は会場周辺の都市に数日間滞在します。

それでは、外国人が日本を訪れる目的は何でしょうか。

  1. 日本食を食べること
  2. ショッピング
  3. 日本の自然・景勝地観光
  4. 繁華街の街歩き
  5. 温泉入浴

が調査によるベスト5でした。

日本はインターネット環境が整っていないなどと言われますが、掛川では一早く掛川フリーWI-FI(ワイファイ)を設置し既に稼働しています。
PRサイトは多言語対応されておりますが、更に充実させて2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの訪日外国人需要を見据えた「おもてなし」として掛川市の情報を提供していきます。そしてSNSを通じて利用者による掛川市内の情報発信が行われるという効果が期待できます。

さて、日本を訪れる外国人をおもてなしするときに、外国人の文化や特徴を知っていると驚きもなくなりますし、より効果的に応対が出来ます。
一番分かりやすいのが食事の習慣ですので少し紹介いたします。

例えば中国人の方は、食事の際に食べ残すくらいの大量の食事を出すのがもてなす側の礼儀とされています。客はテーブルを汚すことが食事を作ってくれた方へ感謝の気持ちを表す行為であり、全て食べ尽くしてしまったら相手に失礼になります。逆にインドの方は食べ残しは重大なマナー違反となります。
また、大声で話す人が多いですが、広い大陸の生活では遠くの人への声かけや情報伝達に、小さな声では伝わらないという地域的な状況があるのでしょう。
台湾人の方の中には、牛肉を食べない方やベジタリアンが割と多く居ます。農作業で牛を使う機会が多かったための名残りであると言われています。
韓国人の方は、食事にキムチが必ず必要なので、大量のキムチを用意していないとおもてなしにかけることになりかねません。
以前、日本の韓国レストランで食事をした韓国人が、キムチのおかわりをして追加料金を請求され憤慨したことを思い出しました。韓国人にとってキムチは無料食べ放題の食材なのです。
更に、イスラム教の方は、ハラルと言われる許可された食材でなければ口に出来ない習慣があります。イスラム教徒(ムスリム)が世界で18億人いると言われていますので、今後はそのことにも注意が必要になってきます。
この他にも様々な習慣の違いがありますが日本だってあります。世界の殆どの国では、食器を手に持って食べないとか音を立ててスープを飲んではいけないと言う共通のマナーがありますが、日本では食器を手に持って食べますし、おそばやラーメンの汁を音を立ててすすっていますので、日本が特別なのです。自分たちの価値観だけで訪日外国人を見てはいけないことを知っていただきたいのです。

ここで少し話を変えます。国は訪日外国人ばかりに目を向けていますが、日本人の国内旅行の方が圧倒的に多い事も紹介いたします。

日本国内の2016年度実績ですが、
国内旅行客の宿泊客数は3億2,566万人、日帰り客は3億1,542万人でした。
静岡県では、毎年観光交流客数という統計を取っておりますが、宿泊客と観光レクリエーション客に分けて集計しています。

2016年度は、
静岡県全体の、
宿泊客数は1,943万人。
観光レクリエーション客数は1億3,351万人。
中東遠全体の、
宿泊客数は116万人。
観光レクリエーション客数は1,519万人。
掛川市全体の、
宿泊客数は55万人。
観光レクリエーション客数は317万人。でした。

静岡県が2015年度に首都圏在住で20歳以上の方の意識調査を行いました。2060名から回答をいただき「あなたが移住してみたいと思う地域を選んだ理由な何ですか?」という問いに、65.3%の人が「観光に行ったことがあり気に入っているから」という回答でした。

また、「移住に興味を持った理由は何ですか?」という問いには、

  1. 自然に触れたい
  2. のんびりしたい
  3. Uターンのため

という順番でした。

更に、観光庁が実施したアンケートでは、観光客が旅に求めるコンテンツとして、

  1. 温泉
  2. 自然
  3. グルメ
  4. 歴史
  5. テーマパーク

の順になっていますが、 この5つの中で掛川にはいくつあるのでしょうか。

更に、静岡県西部地区にお越しになる方は、静岡県内及び中京圏からの方が圧倒的に多く、交通手段は自家用車で日帰りが多いという結果でした。
首都圏からJRで来られ宿泊される方は、僅かな人数しか有りませんでした。
しかし、この地域の特徴として特筆すべきことは、旅行先としての満足度が高く、4回以上訪問するリピーター客が多く、是非もう一度来たいと思う方が66%もあったということです。

以上の調査データから、自然に恵まれている掛川は、これらの特性を活かした誘客施策を行い、交流人口を増やし、少なくとも県外からの移住定住者を呼び込み増やしていく必要があります。

現在、市ではシティプロモーション課が中心となり掛川市を内外にPRしていますが、観光交流課では観光客誘致施策として次のことを展開しています。

一つめは掛川三城ものがたりのPRです。
掛川市内には掛川城・高天神城・横須賀城の3つのお城があることは御承知のことと思いますが、いずれも今流行の戦国時代の戦いの舞台です。
今年はNHK大河ドラマの「おんな城主直虎」でも取り上げられましたので、これを機会に戦国時代ファンを中心にPRしているところです。
首都圏や中京圏の旅行会社やメディアにPR用DVDを手渡し説明しています。今後、お城マニアのツアーが訪れてくれることを期待しています。
PR用DVDは市役所ホームページの動画サイトから御覧いただけますので、まだ御覧いただいていない方は是非一度御覧ください。

二つめは農業体験ツアーの取り組みです。
掛川の特長である景色の良い広いお茶畑での茶摘み体験ツアーです。
中国をはじめとする訪日外国人の旅行形態が、団体旅行から小グループ旅行に変わってきています。特に最近は家族連れや個人旅行が主流になっています。
中国の方にとって日本の川の水が透明であったり、山の木々が緑であったりすることが彼らにはとても珍しい景色なのです。中国の川は茶色に濁っており、山は赤茶けた土色が殆どなのです。
こんな青々とした茶畑で新茶を自分で摘み取り、それを天ぷらにして食べたらどんなに喜ぶことでしょう。
更に、団体ツアーの受け入れは今までは生産者の協力がなかなか得られず、旬の時期の茶摘み体験が出来ませんでしたが、先頃ある農家さんの了解が得られて可能になりました。
今後は団体客のお茶摘み体験ツアーが多く訪れることでしょう。

三つめはディストネーションキャンペーンの対応です。
県・市・町などの地方自治体、観光協会、JR6社、旅行会社、協賛団体・会社等が協力して開催地をPRし、全国からの誘客を図り地域を活性化する取り組みが行われています。
2018年がプレキャンペーンで2019年が本番、2020年がアフターキャンペーンと三年間続く大型キャンペーンです。季節は4月~6月の静岡県のお茶シーズンと一致していますので好機ととらえ掛川を全国にPRしていきたいと考えています。