掛川市立図書館長 村松武
図書館の職員(図書館司書)の1日というと、一般的には「図書館のカウンターに座っていろいろな事務をこなしているのでは?」というイメージが多いようです。確かにカウンター内での業務は多いのですが、職員はその他にも様々な業務をこなしてます。
では、具体的に職員はどんな1日を過ごしているのでしょうか?簡単に図書館職員の仕事をご紹介します。
その前に市立図書館の概要を説明します。
中央図書館
- 平成13年6月1日開館
- 蔵書数 約33.6万点(一般・児童、郷土資料、視聴覚資料等)
- 年間入館者数 約28.9万人(1日平均1,000人)
- 年間貸出点数 約61万点(1日平均2,100点)
- 年間貸出利用者数 約15.5万人(1日平均536人)
- 年間駐車台数 約11.3万台(1日平均400台)
- 職員数 20人(内正規職員8人、非常勤職員12人)
大東図書館
- 平成19年4月1日開館
- 蔵書数 約17.9万点(一般・児童、郷土資料、視聴覚資料等)
- 年間入館者数 約9.4万人(1日平均325人)
- 年間貸出点数 約22万点(1日平均769点)
- 年間貸出利用者数 約4.9万人(1日平均171人)
- 職員数 10人(内正規職員3人、非常勤職員7人)
大須賀図書館
- 平成3年7月20日開館
- 蔵書数 約10.6万点(一般・児童、郷土資料、視聴覚資料等)
- 年間入館者数 2万人(1日平均170人)
- 年間貸出点数 約9.2万点(1日平均320点)
- 年間貸出利用者数 約2万人(1日平均70人)
- 職員数 7人(内正規職員2人、非常勤職員5人)
図書館の仕事
開館準備・館内整理
朝は、閉館中に返却ポストに返された本の返却処理からはじまります。すべての本は、返却処理したあと、棚に戻していきます(排架)。その時に棚の整理をして、本を見やすく探しやすいようにします。月曜日が休館のため、火曜日の朝は返却された本が山のようになっています。新聞の差し替えもします。
ブックポストに返却された図書の返却処理
本の返却(排架)作業
カウンター業務(貸出・返却・予約・レファレンスサービス)
開館準備が整い、午前9時に開館になります。
早速、皆さんおなじみの図書の貸出・返却業務や、図書の整理、さらには利用者の方々の応対に追われます。
「この本はどこにありますか?」、「新しく利用カードを作りたいんだけど」、「返却期限を延長したい」等々の相談を的確かつ迅速に応対していかなければなりません。来館者の対応だけでなく、電話での問い合わせにも対応します。そんな時、どんなに忙しくても、いつも“ニコニコ・ハキハキ”とした対応力が重要になってきます。
カウンター業務
中央図書館では、1日2,100点、年間61万点の貸出を行っています。1冊500グラム前後として、毎日1トン前後の本が移動することになります。返却された図書は次の利用者のために職員が重たい本を持って棚に運んだりしますので、職員は力持ちの人が多いようです。
利用者が調べものや探しもので困っている時に、職員が資料探しや情報提供のお手伝いをします。中央図書館では、1日12件、年間3,400件のレファレンスサービスを行っています。レファレンスサービスの事例で多いものは、1歴史・郷土史について、2市内の地名の由来について、3ある作家の本を探している。等々
選書・受入・装備、相互貸借
話題の本や図書館に必要な本などを購入する場合、利用者から寄せられたリクエストなどを参考に、図書館司書が選書し発注をします。
納入された本を、分類番号(本の住所)などのデータをコンピューターに登録します。分類番号のラベルを貼り、汚れないように1冊ずつ透明シートをかけます。中央図書館では、年間9,400点の本や視聴覚資料の受入をしています。新刊本は新着図書コーナーに展示して皆さんに借りていただくのをお待ちしています。
利用者が求める本が所蔵されていない場合には、他の公共図書館に依頼します。 県内外の図書館からご協力いただき図書館相互で資料の貸借を行なっています。中央図書館では、年間1,400冊の受入・貸出を行っています。
資料の傷みなどがあった場合、専門のテープやのりなどを使って修理を行ないます。
特集コーナー 徳川家康公顕彰記念
新着図書コーナー
保存書庫へ移す、除籍
古くなった本や貸出の少ない本は、保存書庫に移し保存します。中央図書館の保存書庫には、古くなった本や貸出の少ない本の他、郷土資料や貴重な資料など13万点が保存されています。
使用できなくなった本は登録のデータを取り消し(除籍)します。除籍された本は、最後にはみなさんにリユース本として提供します。中央図書館では年間5,300点の資料の除籍をしています。
保存書庫
除籍本の古本市
図書館講座等の催し物、館内掲示
図書館では、夏休みの子ども向けの企画や、春の子ども読書週間、秋の読書週間の図書館フェスティバルでのイベント、文学鑑賞講座などの図書館講座を年間を通して行なっています。そのためのPR活動としてポスターやチラシ作成などを行ない、利用者の方に楽しんでいただけるよう工夫しています。
また、特集コーナーは、職員が手作りの季節感あふれるものから、旬の話題と魅力あるものになるよう心がけています。
ステンドグラス美術館開館ミニ特集コーナー 中央図書館
季節に合わせた掲示 中央図書館
図書館ボランティア養成講座 本の装丁の実習 中央図書館
古文書講座 大須賀図書館
移動図書館、家庭文庫・団体貸出
身近で等しく図書館サービスが受けられるように、中央図書館「おおぞら号」、大東図書館「コスモス号」の2台の移動図書館車を運行しています。移動図書館車には、児童書を中心に約3,000冊の本が搭載されています。月に1回程度、2台の図書館車で小学校など市内37カ所のサービスステーションを巡回しています。また、家庭文庫や学童保育所などへの団体貸出も行っています。市内52カ所へ貸出を行っています。
移動図書館車巡回 497冊の貸出・返却がありました。
桜木小学校
団体貸出 児童交流館へ配達
子どもの読書活動、子育て支援
図書館の仕事の中で、本の閲覧・貸出のほかに重要なものとして、読書活動の推進があります。特に子どもの時からの読書習慣が大切なことから、市立図書館では子どもの読書活動に力を入れています。
乳幼児期から多くの絵本や様々な本と出会い、読書習慣を身につけることが大切です。市立図書館では保健予防課と連携して、おなかの赤ちゃんへの読み聞かせを行う「おなかの赤ちゃんとはじめての絵本」、6ヶ月児相談時に保護者の方に、絵本・読み聞かせの大切さを伝え0歳児向けブックリストと絵本をプレゼントする「こんにちは絵本」など、幼い時から読書活動につながるいろいろな事業を行っています。
図書館のおはなしの部屋では、図書館ボランティアや図書館職員による幼児とその保護者を対象に絵本の読み聞かせを定期的に行なっています。昨年の11月からは、絵本の読み聞かせの後、子ども希望部の子育てコンシェルジュに出張してもらい、絵本の読み聞かせの後、手遊びや子育て相談を行っています。毎回大勢の親子に参加いただいています。
小中学校へは、あるテーマにそって、何冊かのさまざまなジャンルの本を紹介するブックトークや幼稚園や保育園へは読み聞かせなどの出前講座にも出かけています。
中央図書館では年間95回、3館で261回の読み聞かせを行っています。
子育てコンシェルジュによる手遊び・育児相談 中央図書館
職員による読み聞かせ中央図書館
ブックトーク 原田小
ブックトーク 掛川第一小
ゆったり、のんびりと仕事をしているイメージの図書館職員ですが、このように利用者の方々の目に映らない部分でも様々な業務をこなしています。図書館職員は大忙しのうちに、図書館の閉館時間を迎えます。閉館後は、明日の開館に向けた準備やブックトークの準備、新刊本の受入など日中にできなかった業務に取り掛かります。
おまけ 館内整理日に何をしているのか?
毎月、最終金曜日(大須賀図書館は木曜日)に館内整理日として図書館を休館しています。この館内整理日には、書架や保存書庫にある資料の整理のほか、1ヶ月の統計類の打出し、機器のメンテナンス、朝の打ち合わせの時間ではできないようなじっくりと時間をかけた打ち合わせや、利用者のみなさんに適切なレファレンスをするための勉強会などをしています。
また、1年に1回程度、長い休みをいただいて行う特別館内整理(蔵書点検)では、次のような作業をしています。 本がなくなっていないか、また本のデーターに誤りがないか、すべての本を1冊1冊、携帯端末機(ポット)に通して確認する作業を行います。昔は台帳と読み合わせていたそうです。中央図書館では、1階の開架書庫と保存書庫の資料33万冊すべての点検を職員総出で行い、1週間かかります。蔵書点検の結果、1年間で約1,500冊の本が行方不明になっていることが判明します。
ちなみに、この蔵書点検は、曝書(ばくしょ)とも呼ばれています。曝書とは、書物を日に曝(さら)すこと、つまり虫干しのことで、昔は本を害虫やカビから守るために1冊1冊開いて日に曝し風を通したそうです。
市立図書館トピックス
最後に市立図書館の最近のトピックスを紹介します。
2014年5月 朗読奉仕団体「サークル声」が緑綬褒章受章
1978年にサークル設立以来37年間、市立中央図書館を拠点に視覚障害者向けに広報かけがわの音訳を行っています。
松井市長に受賞を報告
声の広報録音風景
2014年8月「伊藤嵐牛とその仲間たち」特別展
江戸時代末期に活躍した郷土の俳人・伊藤嵐牛の資料紹介 大東図書館
2014年10月18日 世界のバリアフリー絵本展
世界各国のバリアフリー絵本を展示 中央図書館
「2014年10月26日 中央図書館入館者数400万人達成
400万人目の利用者のみなさん
2014年11月1日 図書館フェスティバル2014 こどもとしょかんまつり
図書館長とつくろう
こすもすの会パネルシアター
こどもビブリオバトル
よみきかせ会ひまわりの絵本のよみかせ
2015年1月「ふくBOOKろ」「校長先生のお薦め本」貸出
市長や図書館職員のお薦め本を福袋にして貸出、
校長先生のお薦め本も合わせて貸出
中央・大東・大須賀図書館
2015年1月27日 音訳講習会
声に出しながら発音の基礎技術を習得する参加者
中央図書館
2015年4月 二宮金次郎像建立
榛村純一氏銅像建立発起人会から銅像の寄贈
地元の方に毎朝銅像を磨いていただいています。中央図書館
2015年4月 全国の一本桜を写真で紹介
全国各地で撮影された一本桜の美しさに見入る来場者
大須賀図書館
2015年4月18日 子どもの読書週間イベント
オープニングイベント
三浦康子さんの読み聞かせと伊藤恵三さんの
尺八伴奏によるコラボレーション
中央図書館
光君のあっとおどろく手品教室
地元の人材を活用した図書館講座 大須賀図書館
高校生による読み聞かせ
掛川西高生による絵本の読み聞かせ 中央図書館
2015年5月 二宮尊徳特別展示会
新たに発見された資料を見学する親子連れ 中央図書館
2015年5月10日 遠州横須賀藩藩主西尾家文書寄贈
松井市長に目録を渡す西尾忠愛さん 東京都千代田区で
寄贈された西尾家文書の説明 定例記者会見
2015年6月1日 絵本の交換「わくわく文庫」スタート
家庭に眠っている絵本や児童書を回収して
プレゼント・交換する「わくわく文庫」が始まりました。
NPO法人WAKUWAKU西郷主催
2015年6月13日 虹色コンサート
地元の音楽家によるミニコンサートと絵本の読み聞かせを
合わせ、年4回開催しています。
大東図書館
2015年6月19日 静岡県教育委員会移動教育委員会
木苗教育長はじめ教育委員の皆様に中央図書館を見学していただきました。