世界農業遺産とは?
世界農業遺産とは、国際連合の食糧農業機関(FAO)が始めた登録制度です。
当初は、発展途上国の農業を紹介し、地域を発展させるための制度として発効されました。現在は、世界の重要な農業システムを後世へと残すための登録制度となっています。
【認定数】世界22ヶ国62地域、国内11地域(令和2年6月現在)
平成25年5月29日から石川県七尾市で開催された「世界農業遺産(GIAHS)国際会議」において、「静岡の茶草場農法」が、「阿蘇の草原の維持と持続的農業」、「クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環」と共に、FAO(国際連合食糧農業機関)に正式に認定されました。(認定日:平成25年5月30日)
日本では、既に認定されていた「トキと共生する佐渡の里山」と「能登の里山里海」に次いで3番目となる世界農業遺産となります。
「静岡の茶草場」は、世界的にも貴重な事例です!
茶草場農法とは、茶園周辺で刈り取ったススキやササなどを、茶畑に有機肥料として投入する農法です。この投入する草を刈り取る採草地を、茶草場と言います。かつては、日本各地で見られたこの茶草場農法ですが、生産方法の変化や時代の変化にともなって、現在では、静岡県など、ごく一部だけで続けられています。その中でも、静岡県のお茶農家は、この農法を行うことでお茶の品質が向上すると信じて、伝統的に行ってきました。
そして、この伝統的に継続されてきた茶草場農法が、茶草場を貴重な生物(キキョウ等の植物や、羽のないバッタ「カケガワフキバッタ」等の動物)が住む特別な場所と変えていったのです。
良いお茶を作ろうとする農家の営み・努力と生物多様性の確保が両立しているこの地域は、世界的にも非常に珍しい事例です。
そこで、現在、茶草場の存在が確認されている掛川市、菊川市、島田市、牧之原市、川根本町の5市町で協力して世界農業遺産「静岡の茶草場農法」推進協議会をつくり、登録を目指して活動をしてきました。
世界農業遺産(GIAHS)国際会議では、より良いお茶の生産をするために、当地域で伝承され取り組まれ続けてきた茶草場農法により、茶農家が茶園周辺の半自然草地、すなわち茶草場の草を刈り取り管理することで、生物多様性保全が守られるという、生物多様性保全と持続的な自然と共生する農業生産活動の面で評価を頂きました。
静岡の茶草場を守り続けてきた茶農家の皆様の長年の取り組みが実を結んだものと考えています。
しかし、世界農業遺産の登録は、ゴールではなく、新たなスタートです。私たちは、この認定を誇りに思うとともに、受け継いできたこの農法の価値を認識し、今後は、策定した「静岡の茶草場農法」GIAHSアクションプランに基づき、より一層の持続可能な農業生産活動と、生物多様性保全への取り組みを推進していきます。
茶草場の風景
茶園の法面にある茶草場
茶園周辺の茶草場
刈り干ししている茶草
茶草を投入した茶畑
茶草場で見られる動植物の一例
カケガワフキバッタ
フジタイゲキ
茶草場データ
市町 | 茶草場面積 | 代表的集落名 |
---|---|---|
掛川市 | 約242ヘクタール | 東山、大野 |
菊川市 | 約83ヘクタール | 倉沢、富田 |
島田市 | 約38ヘクタール | 神谷城、大代 |
牧之原市 | 約15ヘクタール | 東萩間 |
川根本町 | 約1ヘクタール | 久保尾 |
計 | 約379ヘクタール |
(令和2年2月 現在)
(茶草場面積は、県農林技術研究所の調査済み面積)
世界農業遺産環境関連条例・規則
「私たちは、等しく健全で豊かな環境の恵みを享受する権利を有するが、同時に豊かな環境を譲り、育てながら未来へと引き継ぐ責務を負っているとともに、人は自然界の一構成員に過ぎないという謙虚な姿勢で現状を直視し、持続可能であるとともに豊かな自然を大切にする社会を創造すべく、具体的に行動しなければならない。」
(掛川市環境基本条例抜粋)
- 掛川市 環境基本条例 第8編 第7章(平成17年12月22日制定)
- 掛川市 良好な生活環境の確保に関する条例 第8編 第7章(平成17年12月22日制定)
- 掛川市 自然環境の保全に関する条例 第8編 第7章(平成18年7月4日制定)
- 掛川市 自然環境の保全に関する条例 施行規則 第8編 第7章(平成18年9月29日制定)
世界農業遺産認定までの環境に関する取組
- 平成19年4月9日 指定希少野生動植物種の指定(15種 植物7種、鳥類5種、魚種1種、昆虫1種、は虫類1種)
- 平成20年1月25日 指定希少野生動植物東山保護地区協定書締結(東山区・地権者・掛川市)
世界農業遺産「静岡の茶草場農法」推進協議会の概要
1 趣旨
静岡県内では秋冬期に茶園周辺のススキやササなどの草を刈り茶畑に敷く、伝統的な農法が続いており、採草地では、多様な動植物の生存が確認されています。特に掛川市東山地域は、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)において世界の研究者から高い評価を受けました。
これを受けて掛川市及び周辺の4市1町は、銘茶の産地であり、かつ採草地「茶草場」を活用した伝統農法を守り続けていることから、世界農業遺産の認定を目指して、推進協議会を設立し、諸活動を進めてまいりました。
2 認定までの経過
平成24年10月11日 4市1町による推進協議会設立
平成24年11月26日 推進協議会第2回総会で認定申請を決定
平成24年11月30日 静岡県、国連大学から推薦を受ける
平成24年12月19日 農水省から協力の承認を受ける
同28日 国際連合食糧農業機関(FAO)へ申請
平成25年2月21、22日 FAOによる現地調査
平成25年5月30日 石川県で開催された世界農業遺産国際会議にて認定
3 協議会の概要
名称:世界農業遺産「静岡の茶草場」推進協議会
代表者:会長静岡県知事川勝平太
構成:正会員掛川市、菊川市、島田市、牧之原市、川根本町の各首長
賛助会員 対象地域に所在する生産者団体、商工会など25団体(R2.4.1時点)
設立日:平成24年10月11日