令和3年度施政方針

2021年2月19日更新

令和3年第1回市議会定例会の開会に当たり、施政方針を述べさせていただきます。

1 はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生命、生活、経済活動に甚大な影響を与え続けています。
歴史をひも解くと、人類はこれまで幾度となく感染症や自然災害に見舞われ、その度に団結力と忍耐をもって苦難を乗り越えてきました。今回のコロナ禍においても、人を思いやり、皆で協力し合うことが大切となります。
今、わが国では、緊急事態宣言の発出や不要不急の往来自粛などが行われ、その一方で、ワクチン接種の準備が急ピッチで進んでいます。
全ての人々の協力、そして、人類の英知を結集したワクチンが、感染対策の決め手となり、将来への希望を胸に、安心して暮らせる日々が必ずや戻ってくると信じております。
私は、市長就任以来、協働のまちづくりを掲げ、市民、事業者と力を合わせてまちづくりを進め、様々な施策や事業を成し遂げてきました。
コロナ禍という歴史の岐路に立っている今、このときこそ、市民、事業者と協力し合い、知恵を出し合う「協働のまちづくり」が力を発揮すると確信しております。
これまで培ってきた協働の力によって、この災禍を乗り越え、地方分散の受け皿づくり、デジタル化を進め、ポストコロナ時代の新しい掛川市を築いてまいります。

2 ポストコロナ時代に向けて

次に、ポストコロナ時代に向けた4つの取組について申し上げます。

1 新型コロナウイルス対策

はじめに、新型コロナウイルス対策についてであります。
新型コロナウイルスの感染拡大を防いでいくためには、市民の協力が必要不可欠となります。改めて、手洗いの励行やマスクの着用など基本的な感染予防対策の徹底、感染リスクの高い行動の回避を呼び掛け、新しい生活様式の定着を図ってまいります。
感染対策の切り札となるワクチンについては、接種の優先順位を踏まえ、希望する市民への接種を開始できるよう、接種会場や接種方式について医療機関との調整を進め、接種体制の構築を図ってまいります。
小笠掛川PCR検体採取センターについては、開設から1月末で329件の検査を実施しております。今後も引き続き、菊川市、御前崎市、小笠医師会等と協働し、検査体制を確保してまいります。また、抗原検査キットを備え、学校、高齢者施設などで感染者が出た際、早期に対応し、感染拡大の防止に努めてまいります。
これらの様々な対策によって、新型コロナウイルスの収束を目指し、市民が早く元の穏やかな生活に戻れるよう努めてまいります。

2 地方分散の受け皿づくり

次に、地方分散の受け皿づくりについてであります。
新型コロナウイルスによって、大都市の人口集中や過密によるリスクが顕在化し、地方分散の動きが高まってきています。この機に、真に豊かな生活ができる地方の良さを広め、新しい分散型の国づくりに舵を切っていく必要があります。
掛川市は、歴史と文化が薫る中心市街地を持ち、郊外には美しい茶畑、海、山々が広がります。全国に誇れるつま恋やねむの木村があり、新幹線掛川駅などの広域交通拠点も整い、豊かな暮らしを実現することができます。このような地域資源を最大限に活かし、地方分散の受け皿として、労働・産業・観光などの新たな投資を呼び込み、掛川への人やモノの流れを創出してまいります。さらに、都市部から地方へのニーズやそれに合わせたシーズを調査・整理し、見直しを進めている総合計画において、分散の受け皿となる具体な施策を打ち出してまいります。
掛川市の住みよさを体験するお試し移住の拠点整備なども行い、掛川の特長をシティプロモーションし、受け皿として選ばれるまちづくりを進めてまいります。

3 デジタル化の推進

次に、デジタル化の推進についてであります。
ポストコロナ時代においては、データやテクノロジーを活用し、地域課題の解決や新しい価値を創造するDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進が求められており、住民に身近な基礎自治体の役割は極めて重要となります。
市民の利便性を向上させるため、マイナンバーカードを利用した電子申請システム「マイナポータル」の活用を進めるとともに、その基盤となるマイナンバーカードの普及を加速させてまいります。
市役所業務においても、デジタル技術やAI等の活用により、業務効率化を図り、人的資源を行政サービスのさらなる向上に繋げてまいります。
さらには、データやテクノロジーを活用して、産業の活性化やまちの高度化に繋げるなど、デジタル化を成長の原動力としていくため、DX推進計画を策定してまいります。

4 地域循環共生圏の構築

次に、地域循環共生圏の構築についてであります。
地球温暖化による弊害が大きくなる中で、国は、2050年のカーボンニュートラルを宣言しました。基礎自治体においては、自然エネルギーなどの地域資源を最大限活用しながら、自立・分散型の社会を形成し、環境・経済・社会が統合的に循環し、地域の活力を最大限に発揮することが求められています。
昨年7月に設立した「かけがわ報徳パワー株式会社」が、4月より公共施設への電力供給を開始します。地域新電力会社と連携し、地域資源を活用した脱炭素社会と地域課題解決に取り組んでまいります。
また、海岸線地域ビジョンで掲げ、これからの社会で急速な拡大が見込まれる、洋上風力、小水力、バイオマス、水素等のエネルギー活用の研究を進め、地域循環共生圏の構築を目指してまいります。

3 自治体経営の基本事項

1 組織機構

令和3年度の組織機構については、ポストコロナ時代において推進すべき重要施策を着実に進め、効果的かつ効率的な事務執行に資する組織といたしました。
まず、デジタル・トランスフォーメーションを推進する「DX推進室」を設置し、豊かな市民生活の実現を目指します。また、前例のない規模となるワクチン接種に備え、「新型コロナワクチン接種対策室」として体制を整備するとともに、コロナ禍で不安を抱える子育て世代に寄り添い、安心して出産・子育てできる環境を整備するため、「こども家庭相談係」を設置します。
地方分散の受け皿づくりとして、市民生活・労働・産業・観光等、様々な分野における地域の魅力を活かし、移住促進を図るため、「観光・シティプロモーション係」を設置します。
地球温暖化防止と掛川地域循環共生圏の構築を目指し、「再生可能エネルギー政策室」を設置し、地域新電力と連携したエネルギー政策をより重点的に行ってまいります。

2 当初予算

令和3年度当初予算は、コロナショックをより良いまちづくりのチャンスと捉え、未来に羽ばたく力を蓄積するとの考え方に基づき、「未来への飛翔力を育むための予算」としました。
一般会計は484億8千万円で、前年度当初予算と比べ、23億円、4.5%の減、また、特別会計と企業会計を合わせた予算総額は、828億9,226万円となりました。
予算編成に当たっては、第2次総合計画ポストコロナ編の7つの戦略を着実に推進する事業、コロナ後の新たな社会像の実現に向けたウイズコロナ・ポストコロナに対応する事業に、予算を重点配分しました。
「教育・文化」では、学校教育ICT化推進事業や電子図書館システム構築事業、「健康・子育て・福祉」では、認定こども園建設や結婚新生活支援事業、「環境」では、新井埋立場改修事業や板沢埋立場最終覆土事業、「産業・経済」及び「シティプロモーション」では、移住促進拠点施設整備事業や新たなビジネススタイル応援事業、「安全・安心・都市基盤」では、庁舎天井改修事業やはしご付消防車整備事業、「協働・広域・行財政」では、第2次総合計画基本計画策定事業、DX推進計画・地方分散を受けた都市づくり計画策定事業などを予算化しています。
歳入の根幹をなす市税収入については、前年度当初予算と比べ、3.8%減の199億1,600万円を見込みました。減額の主な理由は、新型コロナウイルスの影響に伴う個人市民税や法人市民税の減、及び固定資産税における中小企業者等の事業用家屋や償却資産の軽減措置などによるものです。
一方で、新型コロナウイルス感染症対策地方税減収補填特別交付金として、新たに3億4,200万円を計上しました。
市債は、よこすかぬく森こども園の完了に伴う普通建設事業費の減などにより、前年度より7億2,600万円減の44億920万円となり、令和3年度末の市債残高は、前年度末から3億8,600万円減少する見込みであります。
また、財源不足に対処するため、財政調整基金を16億7,900万円取り崩し、これにより令和3年度末の財政調整基金残高は、10億4,100万円となる見込みであります。

4 重点施策

次に、令和3年度の重点施策について、第2次総合計画ポストコロナ編の7つの戦略に沿って申し上げます。

1 生涯にわたりこころざし高く学び心豊かに暮らすまち

1. 心豊かにたくましく生きる子どもの育成

はじめに、心豊かにたくましく生きる子どもの育成についてであります。
Society5.0時代を生き抜く子どもたちに必要な資質や能力を「かけがわ型スキル」と定義し、課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学びを充実してまいります。GIGAスクール構想で整備した一人一台端末は、カメラ・動画機能の活用やインターネットを利用した調べ学習のほか、AppleTVを通して画面を共有しながらお互いの学びを深めることができます。新たな学習手段を効果的に活用し、さらなる教育情報化を進めてまいります。
小中一貫教育につきましては、今年度に作成した「かけがわ型小中一貫カリキュラム」を活用し、義務教育9年間を見通した掛川ならではの小中一貫教育を全校で推進するとともに、子どもたちにとって、より効果的な教育を行うための小中学校再編や小学校の統合などの検討を進めてまいります。あわせて、保幼と小中学校の円滑な接続について研究委員会を立ち上げ、保幼小中15年間の学びについて、さらなる充実を目指してまいります。
大東及びみなみ学校給食センターの統合につきましては、大東学校給食センターのリニューアル工事に着手し、必要な施設整備を行うことで、安全・安心な学校給食の提供と運営の合理化・効率化を進めてまいります。

2. 文化芸術の振興

次に、文化芸術の振興についてであります。
かけがわ茶エンナーレにつきましては、コロナ禍の新たな日常生活の中で「茶」と「アート」の融合した「まちづくり芸術祭」として、今年の秋に開催いたします。文化芸術と市民と地域を結び、アートを通した豊かなひとづくり・まちづくりを目指し、同時期開催の全国報徳サミット掛川市大会とともに、掛川市の魅力を全国に発信してまいります。
松ヶ岡につきましては、解体修復工事が進捗しており、柱や土壁、瓦などの本格的な保存活用修復工事を進めてまいります。また、新たな発見や工事中の様子についても、広く市民に公開してまいります。
三熊野神社大祭の祢里行事につきましては、国の補助金を活用して民俗文化財調査事業を実施し、国の重要無形民俗文化財の指定に向けて、官民協働で取り組んでまいります。

3. 東京オリンピック・パラリンピック

次に、東京オリンピック・パラリンピックについてであります。
新型コロナウイルスの影響により1年延期となりましたが、コロナ禍からの復興と希望の力として、今年の夏に開催されることを願っております。オリンピック聖火リレー、パラリンピック聖火採火式につきましては、コロナ対策を含め、関係機関と連携を図りながら、準備を進めてまいります。
事前キャンプにつきましては、アーチェリーの台湾代表チームとビーチバレーボールのモーリシャス代表チームが、掛川市でキャンプを予定しております。オリンピックで最高のパフォーマンスを発揮できるよう、ホストタウンとして、最大限のおもてなしをしてまいります。
また、地元出身選手として「輝くかけがわ応援大使」のソフトボールの山崎早紀選手、パラ陸上競技の山本篤選手、パラサイクリングの杉浦佳子選手、サッカーの森下龍矢選手は、大会への出場が期待されています。掛川市民一丸となって応援してまいります。

2 誰もが健やかに、安心で幸せな暮らしをともにつくるまち

1. 協働による子育て力の向上

はじめに、協働による子育て力の向上についてであります。
新型コロナウイルスの流行は、子どもや子育て家庭に多大な影響を与えており、安心して、子どもを生み育てられる環境の重要性を改めて浮き彫りにしています。
こうした状況の中、子育てコンシェルジュの家庭訪問、スキンシップのすゝめ、子育て総合案内サイト「かけっこ」の普及により、家庭での子育て力向上に努めてまいります。
また、悩みを気軽に相談できる児童館やつどいの広場、地域子育て支援センターなどの情報発信を強化し、地域での子育て力の向上に繋げてまいります。
仕事と子育ての両立につきましては、「子育てに優しい事業所」の先進的な取組を発信し、普及を進めるとともに、社会保険労務士との連携によるワーク・ライフ・バランスの啓発、育児休業の取得促進、さらには、企業主導型保育事業所の支援など、仕事と子育ての両立に資する様々な取組を推進してまいります。
また、新たな取組として、結婚したい若者の希望を叶え支援するため、新婚世帯のスタートアップにかかる費用の一部を補助してまいります。

2. 安心して出産・子育てできる環境づくり

次に、安心して出産・子育てできる環境づくりについてであります。
女性の就業率の上昇や、幼児教育・保育の無償化などにより保育ニーズが増す中、乳幼児教育・保育施設の整備と、教育・保育の質の向上に努めてまいります。
待機児童ゼロに向けては、4月に大東大須賀区域認定こども園の3園目となる「よこすかぬく森こども園」、掛川区域の「智光こども園」、「モコ掛川保育園」、さらには、小規模保育事業所2園が開園し、266人の保育定員の増加を図ります。また、令和4年の開園に向けては、「おおぶちそよ風こども園」、「(仮称)千羽保育園」を、令和5年の開園に向けては、「きとうこども園」の建設等を支援してまいります。さらに、保育人材を確保するため、運営法人と協働して「お仕事応援相談会」を開催するとともに、保育士・保育現場の魅力発信や「保育士等就職応援資金貸付事業」の利用促進を図ってまいります。
また、保育園等の入所申し込みに電子申請を導入するとともに、AIによる入所選考システムを構築することで、感染リスクの軽減と市民サービスの向上を図ってまいります。
学童保育につきましては、4月から第一小学校で新たに1クラブを開設し、全38クラブでの運営とし、子どもたちへの安全・安心な居場所の提供と保護者が安心して働ける環境づくりに努めてまいります。
子どもに関する相談につきましては、コロナ禍で不安を抱える子育て世代に寄り添うことが重要であり、「こども家庭相談係」を設置し、増加・複雑化する相談に対して、専門性を持った対応と必要な支援を行ってまいります。

3. 健康づくりの推進

次に、健康づくりの推進についてであります。
人生100年時代構想に基づき、市民の健康でその人らしい生き方を叶えるため、「生涯お達者市民推進プロジェクト」を推進してまいります。
食事・運動・健康診断・社会参加を市民に呼びかけるとともに、家庭・職場・地域での健康づくりの環境を整え、みんなの健康はみんなで、自らの健康は自らで守ることができるよう、市民総ぐるみで進めてまいります。また、近年がん死亡率上位の大腸がんについて、検診の利便性を高めることにより、検診受診者を増やし、早期発見・早期治療に繋げてまいります。
地域包括ケアシステムにつきましては、市民が安心して暮らしていくために、積極的に地域へ出向き、市内5か所の「ふくしあ」を活用していただくよう、周知に努めてまいります。また、在宅における総合支援をさらに推進するなど、住み慣れた地域でいきいきとした生活が送れる支援を強化してまいります。

4. 高齢者や社会的弱者への支援

次に、高齢者や社会的弱者への支援についてであります。
高齢者への支援につきましては、令和3年度からの3カ年を計画期間とする、第8期介護保険事業計画・高齢者福祉計画に基づき、介護保険事業及び高齢者福祉の円滑な推進を図ってまいります。
高齢者の介護予防につきましては、地域リハビリテーションを推進し、「予防期」「急性期」「回復期」「生活期」の各段階を通じて、切れ目なくリハビリテーションを実現するため、医療や介護の多職種などと、リハビリ専門職との連携を推進してまいります。また、認知症は誰もがなりうるものです。認知症の方が尊厳を保ちながら、穏やかな生活を送ることができ、家族が認知症になっても安心して生活できる地域共生社会の実現を目指し、「共生」と「予防」を両輪として施策の充実を図ってまいります。
社会的弱者への支援につきましては、3月に策定する「第四次地域福祉計画・地域福祉活動計画」を踏まえ、包括的な支援体制を充実してまいります。また、昨年12月に掛川市ひきこもり対策協議会を設立しましたので、多職種・多機関の連携強化によるひきこもり支援を進めてまいります。
障がいのある方に対する支援につきましては、3月に策定する新たな「東遠地域広域障害福祉計画・障害児福祉計画」に沿った障がい福祉サービス等の提供を行うほか、引き続き、障がいに対する理解促進を図り、障がいのある方の働きたいという希望を実現できるよう支援してまいります。また、支援を必要とする子どもが増加傾向にある現状を踏まえ、早期に適切な療育が提供できる体制整備について、一部事務組合の東遠学園組合を中心に検討してまいります。

3 美しい自然環境と共生し、エネルギーの地産地消と資源循環を実現した持続可能な まち

1. 再生可能エネルギーの普及促進と自然環境の保全

はじめに、再生可能エネルギーの普及促進と自然環境の保全についてであります。
国の第5次エネルギー基本計画による再生可能エネルギーの主力電源化の動向や、地球温暖化対策実行計画に掲げた二酸化炭素削減目標の達成に向け、利用拡大が期待される太陽光発電・風力発電を中心に、再生可能エネルギーのさらなる普及促進を図ってまいります。
また、エネルギーの地産地消の観点から、地域内循環を進めて、地域経済の活性化に繋げてまいります。
一方で、それらの開発により自然環境への影響が懸念される場合には、各種法令やガイドラインに基づき、適正な事業が行われ、自然環境が保全されるよう努めてまいります。
廃棄物処理施設の検討につきましては、1月に掛川市・菊川市衛生施設組合が策定した「廃棄物処理施設整備等基本構想」をもとに、市民にとって安全・安心な施設はもとより、地域循環共生圏づくりの拠点となる施設整備に向け、地元調整を図ってまいります。
森林の保全と活用につきましては、掛川市に設置した協議会における意見も踏まえ、森林経営管理制度や森林環境譲与税を活用し、市民生活に関連する地域の森林整備を着実に実施してまいります。また、林道、作業道の整備を積極的に推進するとともに、炭素を固定し、地球温暖化対策へ貢献する木材利用の促進を図ってまいります。

2. 安全、安心、効率的な上下水道

次に、安全、安心、効率的な上下水道についてであります。
新たな生活様式で求められる手洗い・うがいの徹底により、水道水の重要性が増す中で、水道事業については、地震対策や有収率向上を図るため、基幹管路の耐震化を進めるとともに、市内全域の漏水調査を実施してまいります。また、持続可能な事業運営に必要な技術力の維持、継承の方策として、民間技術を活用した包括委託や近隣市との共同化を進めてまいります。
下水道事業につきましては、生活排水処理実施計画の見直しと合わせ、公共下水道の整備や合併浄化槽個人設置の促進を図り、市内全域での汚水処理施設整備を推進してまいります。また、公共下水道事業、農業集落排水事業については、効率的な経営のため、施設の適切な維持管理や施設統合を進めるストックマネジメントを実施してまいります。
リニア工事に伴う水問題につきましては、掛川市にとって大井川の水は、命の水でありますので、静岡県や流域市町と連携し、事業主体であるJR東海に対して、流域住民の不安を払拭するよう求めてまいります。

4 新しい技術と多様な働き方から活力ある産業を生み出す、世界に誇れるお茶のまち

1. 産業の振興

はじめに、産業の振興についてであります。
産業基盤の強化の取組として、大坂・土方工業用地については、興国インテック株式会社への令和3年7月の一部引き渡しと、西工区全体の令和5年度造成工事完成を目指し、事業を進めてまいります。上西郷地区整備推進事業については、これまでの工業用地造成の考え方に加え、民間事業者からポストコロナを見据えた幅広い提案を求め、年度内に公募を開始し、効果的な整備を行う事業協力者を決定し、事業を推進してまいります。
また、新エコポリス第3期工業用地については、東山口地区まちづくり委員会と連携し、民間活力の導入による工業用地の開発に向けて、協議を進めてまいります。新東名(仮称)掛川第2PAについては、民間事業者と協力し、令和5年度の開業に向け、事業の進捗を図ってまいります。
コロナ禍では、企業のサテライトオフィス化やテレワークなどが進む一方で、多くの企業が厳しい経営状況におかれています。「新たなビジネススタイル応援補助制度」を新設し、空き物件のサテライトオフィス化、事業所におけるネット環境整備等に支援を行い、新しい生活様式と働き方改革を推進してまいります。
また、中小企業の事業継続を支援するため、引き続き、融資等の資金繰り支援を行うとともに、企業の生産性の向上に繋がる人材確保や経営革新を支援してまいります。さらに、商工団体や金融機関などの支援機関と連携した創業支援、中東遠タスクフォースセンターによる経営改善や省エネ対策等の実務支援を行ってまいります。

2. 掛川茶の振興

次に、掛川茶の振興についてであります。
消費者の嗜好の変化や、生産者の高齢化、さらにはコロナ禍の影響により茶業を取り巻く環境は厳しさを増しておりますが、どのような状況であっても、掛川市の茶業を持続的に発展させていくため、掛川市茶振興計画を見直し、より実効性の高い施策を展開してまいります。
掛川茶の消費拡大につきましては、昨年実施した消費者調査の結果や、好評を得た国の事業を活用したソフトバンク株式会社の店舗にて試供品を配布した際に行ったアンケート調査結果を活用し、消費者意識の分析や、効果的な情報発信の研究を進め、生産者、茶商、農協及び掛川市が協力して、これまでにない新たなブランドイメージを確立し、積極的にPR活動を実施してまいります。また、「掛川茶ひろめ隊」の活動については、大消費地である首都圏を中心に、掛川市と協定を結んでいる大企業などと連携し、新たな販路拡大に努めてまいります。
掛川茶の輸出戦略につきましては、輸出戦略事業により構築した米国、英国等の茶業教育機関とのネットワークを活用し、世界への情報発信を行うとともに、海外で需要の高い有機茶・被覆茶栽培への支援を引き続き実施してまいります。
緑茶の健康効能につきましては、緑茶効能試験「掛川スタディ」の成果を活用したPR活動、オンラインによる健康効能講座を実施するとともに、静岡県立大学が進めている「テアニンの人に与える影響の研究」にも、積極的に協力してまいります。

3. 力強い農業の確立

次に、力強い農業の確立についてであります。
攻めの農業、儲かる農業への支援につきましては、佐束地区や寺島幡鎌地区の基盤整備事業を進めるとともに、市内全域で「人・農地プラン」推進に向けた地域の話し合いを進め、農地利用状況の把握、企業参入など新たな担い手の創出、地域農業者の組織化・法人化の支援、農地の集積・集約及び複合経営の導入支援を進めてまいります。
オリーブにつきましては、産地化計画に基づき栽培を拡大し、荒廃農地の解消や農家所得の増加、さらには、お茶とオリーブの食生活による健康寿命の延伸を目指し、多様な主体を巻き込みながら、産地化・消費地化を推進してまいります。
互産互消の推進につきましては、新型コロナウイルスによる国内マーケットへの回帰を追い風に、「合同会社互産互生機構」と連携し、小売事業者の掘り起こしや業務用の流通を開拓するとともに、新しい生活様式の中でローカルツーリズムの商品化を進め、活気あふれる地域づくりを進めてまいります。

5 魅力あるくらしとホスピタリティにより、選ばれるまち

1. シティプロモーションと移住定住の促進

はじめに、シティプロモーションと移住定住の促進についてであります。
コロナ禍で都市住民の地方への関心が高まり、働き方、暮らし方が変わりつつあります。豊かな自然環境と交通アクセスの良さなど、掛川市の魅力や暮らしやすさを再認識し、市民総ぐるみの魅力発信や、応援大使の発信力も活かした、協働力によるシティプロモーションを進めてまいります。
また、ツイッターやフェイスブック、ラインなど、情報拡散力の高いSNSを活用したタイムリーな情報発信を行う仕組みを構築し、さらなる情報発信の強化に努めてまいります。
移住・定住の促進につきましては、昨年12月に設置した移住促進会議を通じて官民による移住促進ネットワークの強化を図り、地方でのテレワークや新しい生活様式に合わせ、二地域居住や関係人口の創出拡大を図ります。具体的には、オンライン相談や移住体験の充実のほか、移住・就業支援金による、Uターンを含めた移住促進に努めてまいります。
また、新たな地域力強化の担い手として「地域おこし協力隊」を活用し、掛川流の暮らしの提案を行うなど、移住施策を強化してまいります。

2 観光戦略

次に、観光戦略についてであります。
コロナ禍における観光のあり方が、遠方から近場の観光客をターゲットに変化している中で、世界農業遺産「静岡の茶草場農法」を実践する粟ヶ岳周辺の農業体験プログラムといった観光資源を掘り起こし、それらを繋ぎ合わせたコンテンツを造成し、その魅力をPRしていくことで、観光客の滞在時間の長期化と観光地での消費拡大を図ってまいります。
また、県内や、山梨県、長野県から掛川市を修学旅行先に選択する学校が増加していることから、中部横断道を活かし、受け入れ促進を目的とした補助制度を創設することで、市内の宿泊・観光施設の利用を促し、地域経済の活性化を図ってまいります。併せて、スポーツ合宿利用者も補助制度の対象に含め、掛川市の認知度向上、ひいては関係人口の拡大に繋げてまいります。
これまで以上に、観光事業者や周辺市町との連携を強化し、様々な観光誘客事業に取り組むことで、観光産業の早期回復に取り組んでまいります。

6 災害に強く安全で安心な暮らしを支える基盤を整えたまち

1. 防災体制の強化

はじめに、防災体制の強化についてであります。
台風や大雨による風水害、土砂災害などに対しては、防災ラジオの設置、防災メールの登録、「家庭の避難計画」の作成などの啓発に努め、家庭の防災力が向上するよう取り組んでまいります。また、地震災害の備えについては、住宅の耐震化や家具の固定化などを促進してまいります。
地域防災力の底上げを図るため、地域に配布したタブレットを活用し、防災対策などの動画配信やSNSによる情報を提供していくとともに、地区防災計画の作成を積極的に支援してまいります。コロナ禍における避難所対策では、ワンタッチパーテーション、簡易ベッドなどの防災資機材の整備を、引き続き進めてまいります。
「防災ガイドブック」は配布から6年が経過していることから、国や県の資料を基に、新たな地震、津波、浸水、土砂災害のハザードマップを作成し、最近の知見も踏まえ、改訂作業に着手してまいります。
原子力災害への備えにつきましては、広域避難計画の避難先となる富山県及び愛知県27市町村の全てと広域避難に関する協定が締結できたことから、「避難経由所マニュアル」の作成など受け入れ体制を構築してまいります。
市役所本庁舎の改修につきましては、天井と建物を一体化する剛天井方式による天井脱落防止工事を実施し、来庁者の安全・安心と災害時の災害対策本部体制を確保してまいります。

2. 災害対策の強化

次に、災害対策の強化についてであります。
自然災害による死亡者ゼロを目指す「掛川市国土強靱化地域計画」に基づき、いかなる災害にも負けない強靱な地域づくりに取り組んでまいります。
海岸防災林強化事業「掛川潮騒の杜」の整備につきましては、国や県、さらには民間からの土砂も積極的に活用することにより盛土材の確保に努め、早期完成を目指して、全力で取り組んでまいります。あわせて、希望の森づくり事業による市民、企業等との協働による植樹・育樹活動を推進し、市民が集うグリーンベルトの形成を目指してまいります。
災害に強い社会基盤の整備につきましては、有事の際の輸送路及び避難路を確保するため、耐震補強や修繕が必要な橋梁について、耐震化、長寿命化を計画的に推進してまいります。
また、豪雨災害に備え、これまで国や県と連携して進めてきた河川改修、浚渫、水路整備等に加え、河川流域のあらゆる関係者が協働し、流域全体で水害を軽減させる「流域治水」により災害に強いまちづくりを進めてまいります。

3. 消防救急の迅速化・高度化

次に、消防救急の迅速化・高度化についてであります。
昨年の救急出動は、新型コロナウイルスの影響により救急要請が控えられ、前年より500件以上少ない3,629件となりました。
しかし、高齢者の搬送割合は増加傾向にあるため、専従救急隊の運用や感染症対策により、救急体制の充実を図ってまいります。
また、昨年の火災件数は24件で、新市発足以来最少となりましたが、さらなる災害対応力強化のため、市内に200棟以上ある中高層建築物の火災や救助への対応として、「はしご付消防車」の配備を新たに進めてまいります。
火災予防対策につきましては、防火対象物及び危険物施設の立入検査を強化するとともに、一般家庭への「住宅用火災警報器」の設置や適切な維持管理を推進し、安全・安心な暮らしを支える対策を進めてまいります。
消防の広域化につきましては、消防救急体制のあり方と、近隣消防本部との一部消防業務の応援など、柔軟な連携・協力体制の構築を進めてまいります。
また、地域防災力の中核を担う消防団は、地域や企業の御理解と御協力をいただき、今年度、定数803人を確保することができました。引き続き、地域から感謝され、魅力ある消防団を目指し、常備消防や自主防災会と連携した地域防災力の強化に資する教育訓練を実践し、地域防災のエキスパートとしての育成を行ってまいります。

4. 交通事故と犯罪の防止

次に、交通事故と犯罪の防止についてであります。
昨年の市内における交通事故発生状況は、件数や負傷者数は前年に比べて減りましたが、死者数は6人と倍増し、このうち4件が高齢運転者の死亡事故となりました。
高齢運転者が自主的に免許を返納する「運転免許自主返納支援事業」や、高齢運転者が身体機能の低下を自覚し、慎重な運転を心掛ける「高齢者安全運転自主宣言事業」を推進してまいります。
犯罪の防止につきましては、特に特殊詐欺の手口が巧妙化していることから、同報無線、防災メール及びSNSによる注意喚起と、警察や防犯協会、地域自主防犯活動団体との連携による啓発やパトロール活動により、身近な犯罪の防止に取り組んでまいります。
また、犯罪被害者等への支援に向けて、県や警察等と連携するとともに、「犯罪被害者支援条例」の制定に向け、取り組んでまいります。

5. 多極ネットワーク型コンパクトシティのまちづくり

次に、多極ネットワーク型コンパクトシティのまちづくりについてであります。
コロナ禍においても、都市の持つ人口や機能の集積のメリットは、重要であることに変わりはないため、都市計画マスタープランと立地適正化計画に基づき、住み慣れた地域で安全・安心に暮らし続けることができるよう、地域拠点への都市機能の集約や、拠点を繋ぐ交通ネットワークの充実を進めてまいります。
中心市街地の活性化につきましては、まちなかの賑わい創出、交流人口の増加、居住の促進を目標に掲げた、掛川市中心市街地活性化の方針に定められた事業を積極的に推進してまいります。また、これまでの車中心のまちづくりから、歩道などの公共空間の再生により、誰もが居心地が良く、歩きたくなるまちなかを創る、ウォーカブル推進都市のビジョンを策定してまいります。
公共交通の充実につきましては、地域公共交通網形成計画に基づき、各地域の実情にあわせた公共交通モデルの構築を図り、地域との協働により地域の公共交通を「守り・育てる」取組を推進してまいります。

6. 幹線道路の整備

次に、幹線道路の整備についてであります。
南北幹線道路大東ルートの市道掛川高瀬線改良事業につきましては、結縁寺インター以南について、令和4年度完成を目指し、事業を推進してまいります。大須賀ルート西大谷トンネル周辺区間の県道事業につきましては、令和3年度末までに供用が開始されるよう、県に強く働きかけてまいります。
公共道路事業である市道郡道坂線、市道桜木中横断線、市道掛川駅梅橋線、市道三井幹線の4路線につきましては、地域間を結ぶ重要路線であり、歩行者のより一層の安全を早急に確保するためにも、重点的に事業推進を図ってまいります。
国道1号バイパスにつきましては、朝夕の通勤時を中心とした渋滞解消のため、掛川・日坂バイパスの早期4車線化について「島田・磐田間バイパス建設促進期成同盟会」による要望活動に加え、市議会のご協力もいただきながら国に強く要望してまいります。
東名高速道路の(仮称)掛川西スマートインターチェンジの設置につきましては、早期事業着手に向けて、NEXCO中日本や国交省、県等関係機関と検討を重ねてまいります。

7 協働と連携により誰もが支えあい役立ちあうまち

1. 多文化共生のまちづくりの推進

はじめに、多文化共生のまちづくりの推進についてであります。
昨年末現在、掛川市に在住する外国人は4,450人と、人口の3.8%を占めており、今後、新型コロナウイルスが収束し、経済情勢が好転した際には、技能実習生などの増加が予想されます。
3月に策定する第3次多文化共生推進プランに基づき、日本語教室の充実を図るとともに、日本で生まれ育った「第2世代」が、地域のキーパーソンとして活躍できるよう、地域、企業、関係団体などと連携し、各種施策を推進してまいります。国籍や民族が異なる多様な市民が、ともに暮らし、それぞれが活躍し、ともに地域を支えていく多文化共生社会を実現してまいります。
また、男女共同参画の推進においては、LGBTなどの性的少数者に対する理解促進を図るとともに、多様性を認め合い、性別にかかわらず、誰もが幸せに暮らすことができるよう、第4次男女共同参画行動計画を策定してまいります。

2. 協働のまちづくりの推進

次に、協働のまちづくりの推進についてであります。
地区まちづくり協議会の発足から6年目を迎え、各地区でまちづくり計画の見直しが進んでいます。さらなる活動の充実や担い手不足を解消するため、市民活動団体や企業等との協働を促進し、各地区がそれぞれ抱える課題に対して、主体的かつ持続的に取り組むことができるよう、地域に寄り添った支援に努めてまいります。
「協働によるまちづくり地区集会」につきましては、これまでの区長会連合会、地区まちづくり協議会との協議を踏まえ、インターネット中継等さらなる工夫を加えるとともに、ウィズコロナに対応しながら、多種多様な方とも対話ができる形へとステップアップを図ってまいります。

3. 公共施設マネジメント

次に、公共施設マネジメントについてであります。
公共施設マネジメントは、これからの掛川市のあり方、地域のあり方にも繋がる取組であります。公共施設再配置方針や、市民の皆様のご意見、ポストコロナ時代に向けた総合計画の改定などを踏まえ、将来にわたる公共施設の配置・管理に係る全体計画として、公共施設再配置計画を策定してまいります。
計画策定とともに、具体的な個々の公共施設の再配置の実行が重要となります。特に、民間譲渡に向け公募を行っている大東温泉シートピアについては、譲渡先事業者を決定し、日帰り温泉事業の円滑な引継ぎを行うとともに、海岸線地域、さらには南部地域全体の振興拠点として、継続発展を図ってまいります。

4.働き方改革の推進

最後に、働き方改革の推進についてであります。
新型コロナウイルスによって社会情勢が一変し、限られた財源や職員で、市民の多様なニーズに応えるためには、行政手続の手法や職員の働き方を大きく見直す必要があります。
文書管理の電子化を進め、市役所に提出する申請書類等への押印の義務付けを見直してまいります。これにより、紙申請から電子申請への移行をスムースにし、自宅に居ながら各種行政手続ができる環境づくりを進めてまいります。
また、職員の働き方についても、クラウド化による業務環境の変化により、1月から文書管理や勤怠管理において電子決裁が導入され、テレワークのさらなる拡大や多様な任用形態の導入が可能となりました。柔軟な働き方を推進することで、専門知識を有する人材や優秀な人材の登用を図り、より利便性の高い市民サービスの提供に向けた業務改善に取り組んでまいります。

おわりに

今や世界での新型コロナウイルスの感染者は、1億人を超えるまでになっています。
中でも、前政権下で国民の分断が進んだ米国は、その4分の1を占め、新たに就任したバイデン大統領は、国民の結束や民主主義の重要性を強く呼びかけています。
新型コロナウイルス対策、地球温暖化防止などの環境対策、SDGsの達成など、多くの課題は、国際協調や市民の結束・協力なくして解決することは不可能であります。
基礎自治体の抱える様々な課題にあっても、市民が力を合わせることによって大きな力が発揮され、その解決に繋がっていきます。
まさに、私が身をもって進めてきた「協働のまちづくり」は、この協調であり、人々の結束であり、包摂でもあると考えています。
私は、この任期で退任させていただきますが、これからも掛川市は、皆が同等の立場で協力する「協働」の心を持ってまちづくりを進めていただきたいと願っています。それによって、いかなる困難も乗り越え、ポストコロナの新しい掛川市が築かれていくと信じています。

以上、新年度の予算等についてご審議いただくこの議会の冒頭に、改めて、令和3年度の市政運営に対する私の思いを述べさせていただきました。着実な事業実施に向け、議員各位のご理解とご協力を重ねてお願い申し上げます。

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